【番外編】ソロキャンプは乙女の憩い 大阪淀屋橋・東伯カイリ探偵事務所
今回は探偵事務所の助手である『中戸 園子』と大阪府警察本部の『南条れみ』警部補のお話になります。どうぞ、お楽しみください。初めての方は、本編・大阪淀屋橋・東伯カイリ探偵事務所 パジャマ探偵の事件ファイル ~謎解きは夢の中で~のプロローグとプロローグおまけをお読みいただくと、より楽しめるかと思います。
ここは大阪淀屋橋にある、東伯カイリ探偵事務所。
この界隈ではあまり珍しくもないレトロビルの四階に、事務所はあった。
フロアには、この探偵事務所しかなく、平日賑わうビジネス街にあってもとても静かだ。
モダンなドアを開けて、事務所の中へと入ると初夏の日差しが差し込み、都会の風が優しく室内へと流れ込んでくる。
モダンな調度品に、モダンなソファー、そして、なぜか存在しているクイーンサイズの天蓋付きベッド。
事務所の主は、今まさに白いシーツに包まれて夢の中だった。
ちょうどそこへ、帰ってきたのは助手の中戸園子だ。
小柄な身体に対して、たくさんの荷物を抱えている。
「カイリさーん。高級パジャマのクリーニング、取ってきましたよ……あ、また寝てる」
抱えていたクリーニングしたてのビニールに入ったパジャマを、一旦ソファーに置いて、中戸はキッチンへと向かう。
「あれ? いつきさんがいない……買い物かな? ま、いっか。朝作って置いた水出し紅茶はどうなっていますかね……」
と中戸は冷蔵庫の扉を開ける。
昼前のこの時間、ほぼキッチンにいる主の親友でお世話係の警察官の北堂いつきは、不在――と思っていた矢先に、入り口のドアが開いた。
「帰ったでぇ~」
「あ! いつきさん!」
「いや~参ったわ。新しいスーパー出来とってな、楽しい楽しい。はい、これは中戸さんに」
北堂が中戸に手渡したのは、この時期スーパーにも並ぶイチゴだった。
「わぁ! ありがとうございます」
「冷蔵庫に冷やしてる紅茶にも、合うと思うで」
「私もそう思います」
そんな和やかな二人のやりとりに、寝たふりをキメている主・東伯カイリも口元をほころばせていた、その時。
入り口のドアが、バンッと開いた。
「中戸園子はいるか!」
勢いよく入ってきたのは、大阪府警察本部の南条れみ警部補だった。
「なんやなんや、れみさん。ここは建付けが古いんやから、ドアの開け閉めは丁寧にしてもらえんですかね?」
「あ、ああ。すまない……ところで、中戸園子を出してもらおうか」
モデル並みに美しいが、無表情で威圧感のある話し方の南条れみから庇うように、長身の北堂は中戸をすっぽりとその背後へと隠してしまう。
「彼女が何をしたんかは知らんけど、理由を聞かせてもらわな、はいそうですかっちゅー訳にはいかへんで」
南条は巻いた長い髪をかき上げて、北堂のその言葉に何度か軽く頷いた。
「わかった。そうだよな……中戸園子はまだ何もしていない。これからしてもらうんだ」
「はぁ?」
「今日は中戸園子に依頼がある」
ただならぬ南条の様子に、北堂の背後から中戸は顔を出した。
「私に……依頼、ですか?」
続く ※近日更新します!




