姉 伏見ゆめのこと その3
「こんな時間に呼び出して、わたくしに何しようと考えているんですか?」
深夜。午前三時にぼくは青毛掘川の河川敷に漆原さんを呼び出した。
月曜日に初めて会ったときと同じ、軍人チックな服装だった。
深夜になってしまったのは、ゆめ姉に気づかれないようにするためだった。
それに通り魔のこともある。運が良ければ遭遇するかもしれなかったし、そうしたら漆原さんに手を貸してもらわなくても済むからだ。
「…………」
「黙ってないで反応してくださいよ。つれないですねー。エッチなお姉さんはお嫌いですか?」
「……ぼくの友達が殺されました。犯人は通り魔です」
「知っています。とても痛ましく思います」
「……通り魔の正体は分かっていますか?」
「知ってたら殺してますよ」
冷静に速答する漆原さん。
そうか……まだ分かっていないのか。
「どうも隠密系の『シック』のようですね。さてさて、どんなことを願ったら、そのような『症状』になるのか。想像できませんね」
そしてくふふと笑った。何が愉快で笑ってるのか理解できない。
「漆原さん、殺されたぼくの友達――親友は七色さんってあだ名でそれはもう良い子でしたよ」
「ふむ、それで?」
「今、敬語で話してますけど、普段の口調は七色さんと近いんですよ。まあぼくが一方的に似せたんですが」
「それはどうしてですか?」
「なんていうか、ぼくは中学に上がるまで弱弱しい口調だったんですよ。今じゃあ面影もありません。でも中学生になって、七色さんに出会って。友達になる前から七色さんのかっこよさに惹かれて、友達になってから七色さんの優しさに触れて、それで口調を真似することにしたんです。ぼくも七色さんみたいになりたかったから」
傍から見たらくだらない、中学生特有のはしかみたいなものだけど、高校まで続けるのはどうかと思うけど、憧れを抱いたなら、しょうがないだろう。
「ぼくはその喋り方をずっと続けます。七色さんと比べたら乱暴なところもあるけど、ぼくがその喋り方をすることで、ほんの少しでも七色さんがこの世界に居たことを、形じゃないけど、残せたらいいと思って」
「良い話ですね」
漆原さんは妙に響く拍手で賞賛した。そしてくふふと笑いながら質問する。
「ということは敵討ちがしたいというわけですか? もっと言えば、通り魔を捕まえるお手伝いをしてくれると、そう解釈しても構いませんか?」
「そうです。そのつもりです」
ぼくは捕まえる気なんてさらさらないけどそんなことをおくびに出さなかった。
「分かりました。是非協力してください。わたくしも今は無き親友のために戦うことを決意した若者のお手伝いをさせていただくことは大変喜ばしいことですから」
でもいいんですね? と漆原さんは問いかける。
「もしかしたら死んでしまうかもしれませんよ? 本当によろしいんですね?」
「死んでしまう? はは、面白いですね」
ぼくは胸を張って言う。
「死にたくなるのは――毎日のことですから」
「素晴らしい! それでは作戦を伝えます」
漆原さんは本当に嬉しそうに言った。
「作戦は――」




