↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふわりか村英雄譚~黒き王と三つの鍵~もふもふたちの戦い  作者: 雨宮ぐみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/55

第7話 封印の中から現れたもの

第7話 封印の中から現れたもの


 地下遺跡に響く、ゆっくりとした足音。


 ドン……。


 ドン……。


 その音がするたびに、石造りの床がわずかに震えた。


「……誰かが、こっちへ来ている」


 エラが剣を構える。


 グレゴリーも拳を握った。


「もし敵なら、俺が止める」


「待って」


 レオンが手を上げた。


「攻撃するのはまだ早い」


「でも、あの扉の向こうには――」


「だからこそだ」


 レオンは巨大な封印扉を見つめた。


「この遺跡は、何百年も前から何かを封じている可能性がある。正体も分からないまま攻撃したら、封印そのものを壊しかねない」


 アリスも頷いた。


「レオンの言う通りよ。まず何が起きているのか確かめましょう」


「……分かった」


 エラは剣を下ろした。


 その隣で、ミアが小さな声を出す。


「でも……足音、大きくなってない?」


 全員が黙る。


 確かに。


 先ほどより近い。


 ドン……。


 ドン……。


 そして――。


 ピタッ。


 足音が止まった。


「……」


 静寂。


 誰も動かない。


 すると封印扉の中央に、淡い光が浮かび上がった。


 そこには古代文字が現れていた。


「文字だ!」


 エコーが近づく。


「読める?」


 アリスがレオンを見る。


「少し待ってくれ」


 レオンは文字を一つずつ読み取っていく。


「……『眠れる守護者』」


「守護者?」


 ノアが眉をひそめる。


「つまり、封印されているのは敵じゃないのか?」


「分からない」


 レオンは首を横に振った。


「続きがある」


 さらに文字を読む。


「『この地を守るため、二つの村の魔力を受けて眠る者』……」


「二つの村の魔力?」


 エラが驚く。


「ふわりか村と野獣村の魔力を使って、何かを眠らせていたってこと?」


 アリスが尋ねる。


 仮面の人物が静かに答えた。


「その通りだ」


 全員が一斉に振り返る。


「だったら、どうして今まで教えなかった!」


 エラが詰め寄った。


「話す前に、二つの村が争い始めてしまった」


「……」


「そして魔法石が盗まれ、封印が弱くなった」


 仮面の人物は続けた。


「私は、二つの村を戦わせている場合ではないと知っていた」


 ノアが腕を組む。


「なら、最初から事情を説明すればよかっただろ」


「信じてもらえたと思うか?」


「……」


 ノアは言葉に詰まった。


 そこへミアが手を挙げる。


「私は信じたかもしれない」


「ミアは人を信じるのが早すぎる!」


 エラが突っ込む。


「だって、ノアも最初は怪しかったけど、今は仲間だよ?」


「それは……そうだな」


 ノアが苦笑した。


 だが、その直後――。


 封印扉が大きく揺れた。


 ゴゴゴゴゴ……!


「話してる場合じゃない!」


 グレゴリーが叫ぶ。


「封印がまた弱くなってる!」


 魔法石の黒い亀裂が、先ほどより広がっていた。


「どうすればいい!?」


 エコーが叫ぶ。


 仮面の人物が魔法石を見る。


「二つの村の魔力が必要だ」


「でも、今はふわりか村の結界も弱っている!」


 アリスが言う。


「野獣村も同じだ」


 ノアが続ける。


「ヴァルターたちは、まだ俺たちを敵だと思っている」


 そのとき。


 遺跡の入口から、大きな声が響いた。


「ノア!」


 全員が振り返る。


「その声……!」


 ノアの顔が強張った。


 入口に立っていたのは――。


 野獣村のリーダー、ヴァルター。


 その後ろにはアルベルトたち、野獣村の仲間たちがいた。


「ヴァルター……」


 ノアが前へ出る。


「なぜここに?」


 ヴァルターは険しい顔で周囲を見回した。


「お前たちを追ってきた」


「俺たちは――」


「説明は後だ」


 ヴァルターが遮る。


 その目が、中央の魔法石へ向けられた。


「それを返せ」


 エラが身構える。


「これはふわりか村の魔法石よ」


「違う」


 ヴァルターが低く言った。


「それだけじゃない」


 彼は魔法石を見つめた。


「俺たちの村から盗まれた魔法道具も、ここにつながっている」


 レオンが目を見開く。


「やっぱり……」


 魔法石から伸びる魔力の線。


 その一本はふわりか村へ。


 もう一本は野獣村へ。


 そしてさらにもう一本――。


「……山の向こうへ続いている」


 アルベルトが指差した。


 レオンが息をのむ。


「違う」


「何が?」


「野獣村でも、ふわりか村でもない」


 レオンは魔力の流れを追った。


「この魔力は――」


 その先にあるのは、二つの村のさらに奥。


 誰も近づいたことのない、険しい山だった。


「山の地下から来ている」


 その瞬間。


 封印扉が――。


 バキッ!


 大きく割れた。


「全員、下がれ!」


 エラが叫ぶ。


 巨大な亀裂の向こうから、金色の光があふれ出す。


 そして――。


 扉の隙間から、一つの大きな手が伸びてきた。


「……!」


 誰も動けない。


 だが、その手は攻撃してこなかった。


 地面にゆっくりと置かれた。


 巨大な獣の手。


 その爪の間には、古い石板が握られていた。


 石板には、こう刻まれていた。


『災厄は、すでに目覚めている』


 ヴァルターが目を見開く。


「……守護者じゃないのか?」


 仮面の人物が、初めて動揺した。


「そんなはずはない……」


 レオンが石板を見つめる。


「つまり、封印されているものとは別に――」


 その言葉を遮るように、森の遥か彼方で巨大な爆発が起こった。


 ドォォォン!!


 地下遺跡の全員が振り返る。


 爆発の場所から、黒い煙が空へ立ち上っていた。


 ノアが呟く。


「……あれは、野獣村の方向だ」


 アリスの顔が青ざめる。


「じゃあ……誰かが野獣村を襲った?」


 ヴァルターが拳を握りしめる。


「違う」


 彼の声が低く響く。


「俺の村を襲ったのは――」


 遠くの山を睨みつける。


「野獣村の魔法を使った、何者かだ」


 ふわりか村と野獣村。


 二つの村を争わせていた本当の敵が、ついに動き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。