第6話 目覚めかけた守護獣
第6話 目覚めかけた守護獣
地下遺跡を揺るがす巨大な咆哮。
その音は地上にまで響き、森の鳥たちが一斉に飛び立った。
「今の声……何!?」
ミアが耳を押さえる。
「地下の封印が、かなり弱くなっている!」
レオンが魔法陣を見つめる。
「このままでは本当に何かが出てくるぞ!」
「だったら、急いでエコーたちを助けないと!」
グレゴリーが穴へ飛び込もうとした。
そのとき――。
ドォン!
地下から衝撃波が走り、地面が大きく揺れた。
「うわっ!」
ミアが尻もちをつく。
「大丈夫か!」
エラが駆け寄る。
「う、うん……。でも、今のは地震じゃないよ」
ミアが震える声で言った。
「何かが……中から押してる」
全員が地下への穴を見つめた。
すると、穴の奥から光が上がってきた。
青い光。
ふわりか村の魔法石が放っていたものと同じ光だった。
「魔法石が反応している……」
アリスがつぶやく。
「じゃあ、まだ魔法石を取り戻せるかもしれない!」
エラが立ち上がった。
「行こう!」
◆
地下遺跡。
エコーとノアは、仮面の人物とともに巨大な扉の前に立っていた。
扉の亀裂から、金色の光が漏れている。
「お前、本当にこの封印を守っているのか?」
ノアが尋ねた。
「ああ」
「なら、なぜ正体を隠す?」
「正体を知られれば、二つの村が私を敵だと思う」
「今でも十分怪しいけどな」
エコーがぼそっと言った。
「エコー!」
ノアが慌てて止める。
「いや、事実だろ?」
「……」
仮面の人物は何も言わない。
だが、わずかに肩を震わせていた。
「……笑った?」
エコーが目を丸くする。
「いや」
「今、絶対笑った!」
「気のせいだ」
緊迫した状況なのに、ほんの一瞬だけ空気が緩んだ。
しかし――。
バキッ!
扉の亀裂がさらに広がった。
「話は後だ!」
ノアが叫ぶ。
「封印を維持するには、魔法石を元の位置に戻す必要がある!」
「魔法石はどこ?」
「そこだ」
仮面の人物が指を差した。
部屋の中央。
宙に浮いた魔法石が、激しく回転していた。
「でも、あれに近づけない!」
エコーが言う。
魔法石の周囲には強烈な魔力の渦が発生している。
近づけば吹き飛ばされる。
「私が行く」
仮面の人物が前へ出た。
「待て!」
ノアが腕をつかむ。
「一人では無理だ」
「……」
「俺も行く」
ノアが隣に立つ。
「俺は風魔法で魔力の流れをずらす。お前は魔法石を戻せ」
「なら、俺も!」
エコーが手を上げる。
「お前は――」
「風魔法なら俺だって使える!」
ノアが少し考える。
「……確かに」
「任せろ!」
三人は魔法石へ向かって走り出した。
◆
「風よ!」
ノアが魔法を放つ。
巨大な魔力の渦がわずかに横へずれた。
「今だ!」
「分かった!」
エコーが飛び込む。
「もっと右!」
「右ってどっち!?」
「エコー!」
「冗談だ!」
「今それ言う!?」
ノアが叫ぶ。
しかしエコーは笑いながらも正確に魔法石へ近づいていく。
「捕まえた!」
両手で魔法石を抱えた。
瞬間――。
ズンッ!
魔力が一気にエコーへ流れ込んだ。
「うわあああっ!」
「エコー!」
ノアが手を伸ばす。
そのとき、アリスたちの声が響いた。
「エコー!」
「みんな!」
地上から降りてきたアリス、エラ、レオン、グレゴリー、ミアが遺跡へ到着した。
「その魔法石を台座へ!」
レオンが叫ぶ。
「分かった!」
エコーが必死に飛ぶ。
しかし魔力の圧力で体が押し戻される。
「う……!」
そのとき。
「俺が支える!」
グレゴリーが両手を伸ばした。
地面から巨大な岩の腕が現れ、エコーの足場を作る。
「行け!」
「ありがとう、グレゴリー!」
エコーが最後の力を振り絞る。
そして――。
カチッ。
魔法石が台座に収まった。
青い光が遺跡全体へ広がった。
魔法陣が次々と輝き始める。
「封印が……!」
アリスが息をのむ。
巨大な扉の亀裂が、ゆっくりと閉じていく。
金色の瞳も、少しずつ暗闇の奥へ戻っていった。
「間に合った……」
ノアが息を吐く。
だが、レオンだけは険しい顔をしていた。
「いや……完全には戻っていない」
「え?」
全員が振り返る。
魔法石は台座に戻った。
しかし、その表面には――。
一本の黒い亀裂が入っていた。
「この魔法石……誰かに傷つけられている」
レオンが静かに言った。
「犯人は、ただ盗んだだけじゃない」
エラが魔法石を見る。
「封印そのものを壊そうとしていたんだ」
そのとき、仮面の人物が口を開いた。
「違う」
「え?」
「この傷は、魔法石を盗んだときについたものではない」
仮面の人物は、黒い亀裂を指差した。
「これは――」
一瞬、沈黙する。
「内側から生じた傷だ」
全員の表情が凍りついた。
そして地下の奥から、再び小さな音がした。
ドン……。
今度は、扉を叩く音ではない。
まるで――。
誰かが、こちらへ近づいてくる足音だった。




