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ふわりか村英雄譚~黒き王と三つの鍵~もふもふたちの戦い  作者: 雨宮ぐみ


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第5話 地下遺跡の封印

第5話 地下遺跡の封印


 森の地下。


 エコーとノアが落ちた先には、巨大な石造りの空間が広がっていた。


 壁には古い文字が刻まれ、床には複雑な魔法陣がいくつも描かれている。


 そして中央には――。


 青白い光を放つ巨大な装置があった。


「これが……魔力を集めていた装置か」


 ノアが低い声で言った。


 エコーは装置の周囲を飛び回る。


「すごい……。こんなもの、村の近くにあったなんて」


「待て」


 ノアがエコーの腕をつかんだ。


「触るな」


「え?」


「魔力が動いている」


 装置の中心には、細い光の線が何本も伸びていた。


 その先は、地下から地上へと続いている。


「これ……」


 エコーが目を見開く。


「ふわりか村の結界につながってる」


「そして、もう一つ」


 ノアは反対側を指した。


 そこから伸びる魔力の線は、山の向こうへ続いている。


「野獣村にもつながっている」


「つまり……」


「二つの村から魔力を吸い上げている」


 そのとき。


 カチッ。


 小さな音がした。


「……?」


 二人が振り返る。


 装置の中央にあった魔法石が、ゆっくりと回転し始めた。


「まずい!」


 ノアがエコーを抱えて飛び退く。


 次の瞬間――。


 ドォォォン!


 凄まじい魔力の波が地下室を走った。


「うわあああっ!」


「エコー、伏せろ!」


 壁から石が落ちてくる。


 ノアは素早く風をまとい、エコーをかばった。


「ありがとう!」


「礼は後だ!」


 ノアが装置を睨む。


「このままだと地下遺跡そのものが崩れる!」


     ◆


 一方、地上。


 アリスたちにも異変が起きていた。


「地面が……!」


 ミアが叫ぶ。


 森全体が揺れている。


 グレゴリーが地面に手をついた。


「地下の魔力が急激に増えている!」


「エコーとノアは?」


 エラが叫ぶ。


「まだ地下だ!」


「助けに行く!」


 グレゴリーが穴へ向かう。


 しかしレオンが止めた。


「待って!」


「何だ!」


「今入ったら危険だ。地下の魔法陣が暴走している」


 レオンは目を閉じ、魔力の流れを探った。


「……この遺跡には、封印魔法がかけられている」


「封印?」


 アリスが尋ねる。


「何かを閉じ込めているんだ」


 レオンの顔が険しくなる。


「さっき聞こえた唸り声……」


「まさか」


 エラが地下を見る。


「何かが封印されているのか?」


「その可能性が高い」


 すると――。


 地下から声が響いた。


「みんなー!」


 エコーだった。


「この装置、止めないとダメ!」


 続いてノアの声。


「封印も弱くなっている!」


「封印を守りながら装置を止める必要があるってことね」


 アリスが杖を握る。


「だったら、私たちも行きましょう」


「危険だぞ」


 エラが言う。


 アリスは笑った。


「エコーとノアだけ危険な場所に置いていくなんて、できないでしょう?」


 グレゴリーが大きくうなずく。


「その通りだ!」


「……分かった」


 エラも覚悟を決めた。


「全員で行く」


     ◆


 地下遺跡。


 エコーとノアの前には、巨大な石の扉があった。


 扉には一頭の獣の姿が刻まれている。


 鋭い牙。


 巨大な角。


 そして、その胸には魔法石が描かれていた。


「これ……何の獣だ?」


 エコーが尋ねる。


 ノアは答えられなかった。


「俺も知らない」


 その瞬間。


 扉の向こうから――。


 ドン。


 巨大な音が響いた。


 ドン。


 もう一度。


 ドン……。


 扉がわずかに揺れる。


「……生きてる」


 ノアがつぶやいた。


「何が?」


「この扉の向こうに、何かいる」


 エコーがごくりと唾を飲み込む。


 そのとき、二人の背後から声がした。


「その封印は、絶対に破ってはいけない」


「!」


 二人が振り返る。


 そこには――。


 黒いローブをまとった謎の人物が立っていた。


 仮面の奥から、冷たい目が二人を見つめている。


「お前!」


 エコーが風魔法を構える。


 しかし謎の人物は攻撃してこなかった。


「私は魔法石を盗んだ犯人ではない」


「じゃあ誰なんだ!」


 ノアが問い詰める。


 謎の人物は装置を見つめた。


「私は、この封印を守っている」


「だったら、なぜ村の魔力を奪った!」


 ノアの声が響く。


 しばらく沈黙したあと――。


 仮面の人物が答えた。


「奪ったのではない」


「……?」


「封印を維持するために必要だった」


 その言葉と同時に、石の扉に大きな亀裂が走った。


 パキッ……。


 そして――。


 バキィィィン!


 扉の一部が崩れ落ちた。


 暗闇の中から、巨大な金色の瞳が二つ現れる。


 エコーが息をのむ。


「……あれは……」


 謎の人物が静かに言った。


「ふわりか村と野獣村が争えば、封印を維持する力は完全に失われる」


「だから、二つの村を戦わせたくなかった」


 ノアが目を見開く。


「では、魔法石を盗んだのは……?」


 仮面の人物は答えなかった。


 ただ、暗闇の奥を見つめている。


 金色の瞳が、ゆっくりと開いた。


「急げ」


「もう時間がない」


 地下遺跡全体に、巨大な咆哮が響き渡った。


 そして地上では――。


 ふわりか村の結界が、完全に消えようとしていた。

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