第47話 封印の門の向こう側
第47話 封印の門の向こう側
ゴゴゴゴゴ……。
巨大な石の門が、ゆっくりと開いていく。
その隙間から流れ出してきたのは、冷たい風だった。
「……寒い」
ミルが身体を震わせる。
森の中はまだ夏の夜のはずなのに、門の向こうから吹いてくる風だけは、まるで真冬のように冷たかった。
リーダーは三つの鍵を見つめる。
「この先に……何があるんだ?」
誰も答えられない。
黒き王さえ、黙って門を見つめていた。
「おい、黒き王」
リーダーが振り返る。
「どうしてお前は、この門のことを知っている?」
黒き王の赤い瞳が細くなる。
「……知りたいか?」
「ああ」
「ならば、自分の目で確かめるがいい」
そう言った瞬間――。
黒き王の身体が黒い霧へと変わった。
「待て!」
リーダーが叫ぶ。
しかし、黒い霧は森の奥へと消えていった。
「逃げた……?」
「いや」
ミルが首を横に振る。
「きっと、私たちを先に行かせたいんだと思う」
「……罠ってことか」
全員の表情が険しくなる。
それでも、誰も引き返そうとはしなかった。
「行こう」
リーダーが門へ向かって歩き出す。
仲間たちも続く。
一歩。
また一歩。
そして最後の一人が門をくぐった瞬間――。
ズガァン!!
背後で石の門が閉じた。
「しまった!」
仲間が慌てて門を押す。
だが、びくともしない。
「閉じ込められた……」
「落ち着いて」
ミルが周囲を見回す。
そこは巨大な地下神殿だった。
壁には古い文字が刻まれ、床には三つの紋章が描かれている。
中央には、巨大な石像。
その石像は――。
黒き王によく似ていた。
「これ……黒き王?」
リーダーが近づく。
すると、石像の目が突然赤く光った。
『三つの鍵を持つ者よ』
「!」
神殿全体に声が響く。
『ここへ来たということは、封印の時が近づいたということ』
「封印……?」
『かつて、この世界には光と闇の王が存在した』
仲間たちは息を呑む。
『二つの王は争い、世界を滅ぼしかけた』
『そこで三人の勇者が、二人の王を封印した』
リーダーが尋ねる。
「じゃあ、黒き王は……その時に封印されたのか?」
しばらく沈黙が流れた。
そして石像が答える。
『……違う』
「え?」
『封印されたのは――』
神殿の床が大きく揺れた。
ドン……。
ドン……。
ドン……。
何か巨大なものが、地下からこちらへ近づいてくる。
ミルが青ざめる。
「……何かいる」
次の瞬間。
床が爆発するように崩れた。
「うわぁぁぁっ!」
全員が倒れ込む。
そして、巨大な黒い腕が地面から突き出した。
「グオオオオオオ……!」
神殿を揺らす咆哮。
リーダーが立ち上がる。
「黒き王じゃない……」
目の前に現れたのは――。
黒き王よりもさらに巨大な、漆黒の怪物だった。
その胸には、三つの鍵と同じ紋章が刻まれている。
石像の声が、静かに響いた。
『封印されていたのは――』
『黒き王ではない』
『真の災厄――《虚無の王》だ』
「……虚無の王?」
怪物がゆっくりと顔を上げる。
そして、その巨大な目が開いた。
――赤い光が、神殿いっぱいに広がった。




