第45話 黒き王の咆哮
第45話 黒き王の咆哮
黒い霧が、森を覆っていた。
「……来るよ」
ミルが小さく呟いた。
その瞬間――。
ズズズズズ……!
地面が大きく揺れ、木々の間から巨大な影が姿を現した。
黒き王。
これまで何度も村を脅かしてきた存在が、ついに自らの姿を現したのだ。
「グルルル……」
低い唸り声だけで、空気が震える。
ふわりか村の仲間たちは、一斉に身構えた。
「みんな、絶対に離れるな!」
リーダーが叫ぶ。
しかし、黒き王はすぐには襲ってこなかった。
その視線は、三つの鍵へ向けられている。
「……鍵を渡せ」
地の底から響くような声だった。
「渡すわけないだろ!」
仲間の一人が叫ぶ。
すると黒き王の目が赤く光った。
「ならば――力ずくで奪う」
ドォォォン!!
黒き王が地面を踏み鳴らした。
衝撃波が森を駆け抜け、仲間たちは次々と吹き飛ばされる。
「うわぁぁっ!」
「みんな!」
リーダーは必死に踏ん張った。
だが、その目の前に巨大な爪が迫る。
――間に合わない。
そう思った瞬間。
キィィィン!
三つの鍵が突然、強烈な光を放った。
「な、なんだ!?」
黒き王が初めて動きを止める。
三つの鍵は空中へ浮かび、互いに共鳴するように輝き始めた。
そして――。
森の奥から、聞いたことのない声が響いた。
『選ばれし者よ……』
「誰!?」
リーダーが叫ぶ。
『三つの鍵は、扉を開くためだけのものではない』
光がさらに強くなる。
『黒き王を倒すための力を……その手に宿せ』
「俺たちの……手に?」
『恐れるな』
その声が消えた瞬間、三つの鍵から放たれた光が、仲間たちへ一気に流れ込んだ。
ドクン――。
全員の胸が大きく鳴る。
身体の奥から、不思議な力が湧き上がってくる。
黒き王が吠えた。
「その力……まさか……!」
初めて、その声に動揺が混じった。
リーダーは拳を握りしめる。
「……みんな」
仲間たちが顔を見合わせる。
誰も逃げなかった。
「今度は――俺たちの番だ!」
「おう!」
「村を守るぞ!」
「絶対に負けない!」
黒き王が大きく口を開く。
「愚かな者どもめぇぇぇ!」
森全体を震わせる咆哮。
それに対して、ふわりか村の仲間たちは一歩も退かなかった。
そして――。
黒き王との、本当の戦いが始まった。




