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ふわりか村英雄譚~黒き王と三つの鍵~もふもふたちの戦い  作者: 雨宮ぐみ


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第31話 野獣村を襲う黒き影

第31話 野獣村を襲う黒き影


ふわりか村の空に浮かんでいた黒い光が、ゆっくりと消えていく。


しかし、安心する暇はなかった。


山の向こう――。


野獣村の方角に、巨大な黒い柱が立ち上がっている。


「……野獣村が狙われている」


ノアが険しい顔で呟いた。


ヴァルターは拳を握りしめる。


「俺たちの村に手を出すとは……」


炎が、彼の手のひらから小さく噴き出した。


「黒き王……絶対に許さねえ!」


「待って、ヴァルター」


アルベルトが止める。


「急いで戻る必要はある。しかし、考えなしに突っ込むのは危険だ」


「分かってる!」


「本当に?」


「……分かってる!」


エコーが小さく笑った。


「二回言ったね」


「うるせえ!」


「落ち着いて!」


エラが二人の間に入る。


「今は一刻を争う!」


そのとき、セドリックが時計塔を見上げた。


「……妙だ」


「何が?」


レオンが尋ねる。


「黒き王は、ふわりか村で器を選べなかった。それなのに、すぐ野獣村へ移った」


「それがどうかしたの?」


ミアが首をかしげる。


「普通なら、次の候補を探すはずだ」


セドリックの顔が険しくなる。


「だが、黒き王は最初から野獣村を狙っていたように見える」


ノアがハッとした。


「まさか……」


「何か心当たりが?」


アリスが聞く。


ノアは少し黙ってから答えた。


「野獣村には、ふわりか村にはない古い魔法装置がある」


「魔法装置?」


レオンが聞き返す。


「村の中央にある、大きな石柱だ」


アルベルトが説明する。


「昔から存在しているが、誰が何のために作ったのかは分かっていない」


セドリックが目を見開く。


「石柱……」


「知っているのか?」


ヴァルターが尋ねる。


「ああ」


セドリックは苦しそうに答えた。


「それは――三つの鍵を作った古代文明の装置と同じ構造だ」


「何だって!?」


一同が驚く。


「つまり、野獣村の石柱も……」


レオンが続ける。


「三つの鍵と関係している可能性がある」


「だったら、急いだほうがいい!」


ミアが叫ぶ。


「野獣村へ行こう!」


アクアが前へ出る。


「私なら、山道を越えて先に行けます」


ヴァルターが頷いた。


「頼む!」


「全員乗せるのは無理だよ」


アクアが困った顔をする。


「……」


グレゴリーが手を挙げた。


「俺は走る」


エラが呆れる。


「あなたは走るより歩いたほうが速いんじゃない?」


「そうか?」


「自覚して」


エコーが笑う。


「じゃあ私は飛んでいく!」


「エコーは先行して状況を確認して」


ノアが言う。


「了解!」


エコーは風をまとい、山道へ飛び出していった。



---


◆野獣村


その頃――。


野獣村では、住民たちが異変に気づいていた。


「空が黒いぞ!」


「山の向こうから何か来る!」


「村長を呼べ!」


村の中央にある巨大な石柱。


その表面に、黒い亀裂が走っていた。


ピシッ……。


「おい……」


一人の村人が後ずさる。


「石柱が……動いてる」


ゴゴゴゴゴ……。


地面が揺れる。


石柱の頂上から黒い光が噴き出した。


その光は空へ伸び――。


巨大な黒い目へと変わった。


『器を探す』


低い声が村に響き渡る。


『強き身体』


『強き魔力』


『そして――』


黒い目が村人たちを見渡す。


『強き心』


「ふざけるな!」


ヴァルターの側近の一人が炎を放った。


「うわあああっ!」


黒い光が炎を包み込む。


そして――。


炎が黒く変わった。


「なっ……!」


「魔法を使うな!」


アルベルトが叫ぶ。


「黒き王は魔力を利用する!」


だが遅かった。


黒い炎が地面を走り、村の建物へ向かっていく。


「消火しろ!」


「水を持ってこい!」


村人たちが動き始める。


アルベルトは雷を使おうとした。


しかし、手を止めた。


「……魔法は使えない」


そのとき。


「だったら、魔法を使わなければいい!」


ヴァルターが叫んだ。


「全員、物を使え!」


「物?」


「水桶でも土でも何でもいい!」


ヴァルター自身が大きな桶を抱え、黒い炎へ水をかける。


ジュウウウッ!


炎が少し弱まった。


「効いてる!」


「俺たちもやるぞ!」


村人たちが一斉に動き出す。


土をかぶせる。


水を運ぶ。


燃えそうな物を移動させる。


誰も魔法を使わない。


それでも、少しずつ黒い炎は小さくなっていった。


アルベルトが呟く。


「……ふわりか村と同じだ」


「何が?」


「黒き王は、魔力を奪うことでこちらを支配しようとしている」


「なら、魔力を使わなければいい」


「そういうことだ」


しかし、その瞬間――。


石柱の黒い目がアルベルトを見つめた。


『お前は違う』


「……?」


『強大な光の力』


黒い目が細くなる。


『お前こそ、器に相応しい』


アルベルトの足元に――。


黒い紋章が浮かび上がった。


「アルベルト!」


ヴァルターが駆け寄る。


「触るな!」


アルベルトが叫ぶ。


黒い紋章が足から身体へ伸びていく。


「ぐっ……!」


「アルベルト!」


「来るな!」


ヴァルターが立ち止まる。


アルベルトは必死に耐えていた。


「俺を……攻撃するな」


「分かってる!」


「黒き王は……俺の雷と光を利用するつもりだ」


「だったら、俺が――」


「違う」


アルベルトが首を振る。


「俺自身が拒む」


黒い紋章が胸元まで達する。


その瞬間――。


アルベルトの身体から強烈な光が放たれた。


「うおおおおっ!」


バァァァン!


黒い紋章が弾き飛ばされた。


「はぁ……はぁ……」


アルベルトが膝をつく。


ヴァルターが駆け寄る。


「大丈夫か?」


「ああ……」


アルベルトは苦笑した。


「私を器にするのは、少し見る目が悪いな」


「……お前、今の状況でそれ言うか?」


「緊張をほぐしただけだ」


「全然ほぐれねえよ!」


ノアが二人を見る。


「でも、アルベルトは抵抗できた」


「そうだな」


ヴァルターが頷く。


「俺たちも負けてられねえ」


そのとき――。


空から風が吹き込んできた。


「みんなー!」


エコーが飛び込んでくる。


「ふわりか村から応援が来るよ!」


「ふわりか村が?」


ノアが振り返る。


「うん!」


エコーが笑う。


「みんなで来てる!」


山道の向こうを見る。


すると――。


グレゴリー。


アリス。


エラ。


レオン。


ミア。


ソフィア。


そしてふわりか村の仲間たちが、次々と姿を現した。


「遅くなった!」


グレゴリーが叫ぶ。


「走ったぞ!」


エラが息を切らしている。


「……グレゴリー、途中で三回休憩したけどね」


ミアが言う。


「休憩は大事だ」


「私より休んでたよ?」


「……」


グレゴリーは黙った。


ヴァルターが笑う。


「来たか!」


ソフィアが野獣村の様子を見る。


「アルベルト……」


「大丈夫だ」


アルベルトが立ち上がる。


「まだ戦える」


レオンは石柱を見つめていた。


「……これだ」


「何が?」


ノアが尋ねる。


レオンが石柱の根元を指差す。


そこには、古代文字が刻まれていた。


『器を求める者、二つの村の境を越えよ』


「……境を越えよ?」


アリスが読む。


セドリックが後から歩いてきた。


文字を見た瞬間、顔色が変わる。


「まずい……」


「何が?」


レオンが聞く。


セドリックは石柱を見上げた。


「黒き王が狙っているのは、野獣村の誰かじゃない」


「じゃあ……?」


「ふわりか村と野獣村――」


セドリックが震える声で言った。


「二つの村の境界そのものだ。」


その瞬間。


二つの村の間にある山が――。


ゴゴゴゴゴ……!


大きく揺れ始めた。


地面が割れる。


そして山の中から、巨大な黒い扉が姿を現した。


扉には――。


三つの鍵穴。


そして中央に、一つの文字が刻まれている。


「最後の器は、二つの村の間に眠る」


「……村の間?」


ソフィアが呟く。


黒き王の声が響き渡った。


『ようやく見つけた』


『私が求めていた器は――』


黒い扉の奥から、巨大な鼓動が聞こえる。


ドクン……。


ドクン……。


『二つの村が忘れた――』


そして扉が、ゆっくりと開き始めた。


『最後の存在だ。』

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