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ふわりか村英雄譚~黒き王と三つの鍵~もふもふたちの戦い  作者: 雨宮ぐみ


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第21話 ふわりか村に現れた黒い扉

第21話 ふわりか村に現れた黒い扉


ゴゴゴゴゴゴゴ……!


山全体が、大きく揺れていた。


ふわりか村の中央。


時計塔の前に、今まで存在しなかった巨大な黒い扉が立っている。


高さは建物の三倍ほど。


扉の表面には、三つの鍵穴。


そのうち二つは青白く光り、最後の一つだけが真っ黒に染まっていた。


「……あれは何?」


クララが震える声で言った。


「分からない……」


セシルも植物魔法を止め、扉を見つめる。


そのとき――。


扉の向こうから、


ドン……。


という音が響いた。


村人たちが一斉に後ずさる。


ドン……。


もう一度。


「中に……何かいる」


ソフィアが小さく呟いた。


「全員、村の中央から離れて!」


エラが叫んだ。


村の守りを担当していた仲間たちが、すぐに住民を安全な場所へ誘導する。


しかし――。


黒い扉に、ひびが入った。


ピシッ……。


「まずい!」


エラが剣を構える。


その瞬間だった。


「待って!」


聞き慣れた声がした。


空からエコーが飛び込んでくる。


「エコー!」


「みんな、まだ攻撃しちゃダメ!」


エコーは息を切らしながら言った。


「地下で分かったの。あの扉は、ただの入口じゃない!」


「何だって?」


グレゴリーが尋ねる。


「黒き王が、ふわりか村そのものを器にしようとしてる!」


村人たちがざわめいた。


「村そのものを……?」


アリスが青ざめる。


「そんなことができるの?」


「できるんじゃない」


レオンが地下から戻ってきた。


「もう始まっている」


その言葉と同時に――。


時計塔が黒く染まり始めた。


「時計塔が!」


ミアが叫ぶ。


時計塔の文字盤に、見たことのない黒い紋章が浮かび上がる。


そして村の地面を走る魔力の線が、すべて黒い扉へ集まり始めた。


「魔力が吸われてる!」


クララが叫ぶ。


「農地の魔力まで……!」


セシルが地面に手をつく。


「植物が弱ってる!」


アリスがすぐに動いた。


「全員、魔力を無理に使わないで!」


「でも、このままじゃ村が……」


「だからこそ、闇雲に攻撃したら駄目!」


レオンが扉を見る。


「この扉は、村の魔力を吸収しているんじゃない」


「じゃあ何を?」


エラが聞く。


「村人の魔力を、一つの大きな魔力に変換している」


「つまり……」


ノアが理解する。


「村全体を一つの生き物にしようとしている?」


レオンは頷いた。


「その通りだ」



---


その頃。


地下の部屋では、セドリックたちが黒い鍵を前にしていた。


黒い影が突然、苦しみ始める。


「……!」


身体から黒い鎖が伸び、天井へ向かっていく。


アリスが駆け寄る。


「大丈夫!?」


黒い影は答えない。


ただ胸の紫色の魔石が、激しく点滅している。


「これは……」


セドリックが目を細める。


「黒き王が、村へ力を送っている」


「止められないの?」


グレゴリーが聞く。


「今のままでは無理だ」


セドリックは第二の鍵を見た。


「だが、まだ方法はある」


レオンが振り返る。


「三つの鍵を一つに戻す方法ですね」


「ああ」


セドリックは頷いた。


「二つの村が昔、一つだった頃に使われていた魔法陣が、この地下のさらに下にある」


「さらに下!?」


エコーが目を丸くする。


「地下の地下?」


「そうだ」


「……それ、誰か迷子にならない?」


ミアが手を挙げる。


「私、迷子になりそう」


「自分で言うな!」


エラが即座に突っ込んだ。


「でも大丈夫!」


ミアは胸を張った。


「木の実があれば帰れる!」


「帰るための目印が木の実なの?」


エコーが笑う。


「ミアらしいけど、今は笑ってる場合じゃないよ!」


緊張した空気の中で、ほんの一瞬だけ笑いが起きた。


だが――。


ドォォォン!


地下全体が揺れる。


黒い鍵が浮かび上がった。


『見つけたぞ』


黒き王の声が響いた。


『古き封印を戻すつもりか』


セドリックが立ち上がる。


「……そうだ」


『ならば、先に器を完成させる』


黒い鍵から黒い光が放たれた。


「危ない!」


黒い影が突然、全員の前に立った。


ズドンッ!


黒い光が黒い影に直撃する。


「ぐっ……!」


黒い影の身体が大きく揺らぐ。


「お前……」


ヴァルターが目を見開く。


黒い影はゆっくり振り返った。


そして、初めてはっきりと言葉を発した。


「……逃げて」


全員が凍りつく。


「今……喋った?」


エコーが呟く。


黒い影は胸の魔石を押さえながら続けた。


「僕が……止める」


アリスが目を見開く。


「あなたは……黒き王の器じゃないの?」


黒い影は首を横に振った。


「違う……」


「じゃあ、あなたは何なの?」


「僕は……」


黒い影の声が震える。


「昔、この山を守っていた……」


その瞬間。


黒い鍵が激しく輝いた。


黒い影の身体から、無数の記憶のような光が溢れ出す。


そこには――。


まだ一つだった、昔のふわりか村と野獣村。


笑い合う人々。


一緒に畑を耕す姿。


そして――。


山の中心で、黒い何かに手を伸ばす人々の姿が映った。


セドリックが息をのむ。


「……まさか」


レオンも映像を見つめる。


「黒き王が生まれる前の記憶……」


黒い影は呟いた。


「僕は……あのとき、最後まで……山を守れなかった」


「だから、器にされたの?」


アリスが聞く。


「……分からない」


黒い影は悲しそうに答えた。


「でも、あいつは……僕の中から生まれた」


『余計なことを話すな』


黒き王の声が響く。


黒い鎖が黒い影を締め上げる。


「やめろ!」


ヴァルターが炎を放とうとする。


「待って!」


レオンが止めた。


「攻撃したら、黒い影ごと強化される!」


「じゃあどうする!」


そのとき。


セドリックが黒い鍵へ手を伸ばした。


「私が行く」


アリスが驚く。


「セドリック!」


「私なら、この鎖を一時的に引き受けられる」


「そんなことしたら……!」


「分かっている」


セドリックは静かに笑った。


「だが、今はそれしかない」


彼が黒い鍵に触れた瞬間――。


黒い鎖が一斉にセドリックへ移った。


「ぐっ……!」


「セドリック!」


「早く行け!」


セドリックが叫ぶ。


「古い魔法陣を探せ!」


レオンが頷く。


「行こう!」


一行は地下のさらに奥へ走り出した。



---


その頃、ふわりか村では――。


黒い扉のひびが、さらに大きくなっていた。


ピシッ……。


バキッ……!


扉の向こうから巨大な手が現れる。


村人たちが悲鳴を上げる。


エラが前に出る。


「全員、下がって!」


しかし――。


巨大な手が、ゆっくりと扉を押し開けた。


その隙間から見えたのは、巨大な黒い目。


そして、低い声。


『この村を、私の王国にする』


黒い扉が、ついに開き始めた。


――ふわりか村、最大の危機が始まろうとしていた。

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