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ふわりか村英雄譚~黒き王と三つの鍵~もふもふたちの戦い  作者: 雨宮ぐみ


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第18話 第二の鍵と水底の守護者

第18話 第二の鍵と水底の守護者


地下湖の底。


静まり返っていた水の中に、赤い光が二つ浮かんでいた。


ゆっくりと――巨大な何かが動き出す。


「……あれ、何?」


ミアが震える声で言った。


リリアが水の流れを読み取る。


「大きい……。かなり大きいよ」


ゴゴゴゴゴ……。


地下湖そのものが揺れ始める。


ヴァルターは炎を構えた。


「また守護者か?」


レオンが首を横に振る。


「分からない。だが、あの赤い魔力は今まで見たものとは違う」


黒衣の人物が静かに言った。


「だから言った」


「何を?」


「第二の鍵を取れば、眠っているものが目を覚ます」


ヴァルターが睨みつける。


「なら、鍵を取らなければいい」


「そうすれば、ふわりか村はどうなる?」


「……何?」


黒衣の人物は地下湖の天井を指差した。


「第二の鍵は、この地下湖だけを封じているものではない」


レオンが目を見開く。


「まさか……」


「そう」


黒衣の人物は続けた。


「第二の鍵は、ふわりか村へ流れる地下水脈の封印でもある」


リリアが驚く。


「じゃあ、この鍵を守っている封印がなくなったら――」


「水脈を通じて、黒い魔力が村へ流れ込む」


一同に緊張が走った。


「だったら、鍵を取るしかない!」


エコーが叫ぶ。


「でも、取ったらあれが目覚めるんでしょ?」


ミアが赤い光を見る。


「どうするの?」


レオンはしばらく考えた。


そして――。


「鍵を取る」


「レオン!」


「ただし、封印を壊すんじゃない」


レオンは石の扉を見る。


「第二の鍵を使って、逆に封印を強化するんだ」


黒衣の人物が初めて反応した。


「……そこまで気づいたか」


「やっぱりそうなんだな」


レオンは黒衣の人物を見つめる。


「お前は、最初からそれを知っていた」


黒衣の人物は答えなかった。


その沈黙が、何よりの答えだった。



---


「リリア!」


「分かってる!」


リリアが両手を広げる。


地下湖の水が一気に動き始めた。


ゴォォォォッ!


水の道が二つに分かれ、巨大な水柱が赤い光の周囲を取り囲む。


「今なら鍵へ行ける!」


エコーが走り出す。


「私が取る!」


「待って!」


レオンが叫ぶ。


「一人では無理だ!」


「じゃあ――」


エコーが振り返る。


「みんなで行こう!」


ノアが頷いた。


「それが一番だ」


ヴァルター、アリス、ミア、リリア、レオン、ノア、エコー。


全員が鍵へ向かって走る。


しかし――。


ズバァン!


地下湖から巨大な水の腕が飛び出した。


「危ない!」


ヴァルターがエコーを引っ張る。


水の腕が目の前を通過した。


「ありがとう!」


「前を見て走れ!」


「見てたよ!」


「見てなかっただろ!」


「見てたって!」


こんな状況でも言い合う二人を見て、ミアが思わず笑った。


「……なんか、いつも通りだね」


「それがいいんだと思う」


ノアが微笑む。


その直後――。


水の底から巨大な頭部が現れた。


全員が息をのむ。


それは巨大な水竜だった。


身体は半透明の水でできている。


額には古代文字が刻まれていた。


『侵入者よ』


低い声が地下湖に響く。


『何のために鍵を求める』


レオンが一歩前へ出る。


「二つの村を守るためだ」


『二つの村?』


「ふわりか村と野獣村」


水竜の赤い目が細くなる。


『かつて、二つの村は一つだった』


「え?」


アリスが驚く。


『この山を守るため、二つの一族が暮らしていた』


レオンが石板を思い出す。


「だから二つの村の紋章が、あちこちに……」


『だが、人々は力を奪い合った』


水竜の声が響く。


『そして山の心臓を利用しようとした』


ヴァルターが黙る。


『その結果、黒き王が生まれた』


「黒き王……」


レオンが呟く。


『王とは一つの生命ではない』


水竜は続けた。


『人々の欲望と争いが生み出した、巨大な災厄』


全員が言葉を失う。


「じゃあ、今の黒い影は?」


アリスが尋ねる。


『器だ』


地下湖の奥にいる黒い影を、水竜が見つめる。


『黒き王の力を受け止めるために作られた器』


「誰が作ったの?」


エコーが聞く。


水竜は答えなかった。


代わりに――。


『第二の鍵を手にする者よ』


青い鍵が強く輝いた。


『お前たちが争うなら、王は完全に目覚める』


『だが、互いを信じるなら――』


水竜の身体が光に包まれる。


『鍵は、力を与える』


レオンが頷いた。


「僕たちは争わない」


ヴァルターも前へ出る。


「俺たちはもう、二つの村で戦うと決めた」


ノアが続ける。


「一緒に守る」


その言葉に水竜は静かに目を閉じた。


『ならば、試す』



---


水竜の身体が巨大な渦へ変わった。


ゴォォォォッ!


地下湖全体が回転する。


「うわあああ!」


エコーが風で身体を支える。


「飛ばされる!」


グルグルグル……。


ミアが叫ぶ。


「私のナッツが!」


「そこ心配するの!?」


アリスが叫ぶ。


「大事なの!」


「後で拾うから!」


「本当に!?」


「今は鍵!」


「分かった!」


ミアはナッツを諦めた。


レオンが叫ぶ。


「全員、魔力を一つに!」


ヴァルターが炎を出す。


アルベルトはここにはいない。


代わりにノアが風を重ねる。


リリアが水を操る。


アリスが光を加える。


エコーが風を細くまとめる。


ミアも自分の魔力を送り込む。


そして――。


ヴァルターが最後に力を加えた。


「これでどうだ!」


バァァァン!


二つの村の魔力が一つの光になった。


青い光が地下湖を満たす。


水竜が目を開く。


『よい』


青い鍵がゆっくりと浮かび上がった。


レオンが手を伸ばす。


しかし――。


その瞬間。


黒い影が飛び出した。


「レオン!」


エコーが叫ぶ。


黒い影が鍵へ手を伸ばす。


だが、レオンは避けなかった。


「お前も来い!」


黒い影が止まる。


「……?」


レオンは手を差し出した。


「お前も、この力を利用されているんだろう?」


黒い影の赤い目が揺れる。


「敵じゃないなら――一緒に止めよう」


長い沈黙。


やがて黒い影がゆっくりと手を伸ばした。


レオンの手と重なる。


その瞬間――。


黒い影の胸に埋め込まれていた紫色の魔石から、一本の黒い鎖が飛び出した。


「うわっ!」


レオンが後ろへ飛ぶ。


鎖は黒衣の人物へ向かって伸びていく。


「!」


黒衣の人物が避ける。


鎖は壁へ突き刺さった。


バキィッ!


「やっぱり……!」


レオンが叫ぶ。


「お前と黒い影は、つながっている!」


黒衣の人物は黙っていた。


そして――。


仮面の奥から、初めて動揺した声が漏れた。


「……それ以上、近づくな」


「なぜ?」


「私は――」


その瞬間。


黒衣の人物の仮面に亀裂が入った。


パキッ。


全員が息をのむ。


仮面の下から見えたのは――。


ふわりか村の住人たちが、見覚えのある色の毛並みだった。


「……まさか」


エラがいれば、そう叫んでいただろう。


レオンは目を見開く。


「あなたは……」


しかし、その言葉を最後まで言う前に――。


地下湖全体が真っ赤に染まった。


水竜が叫ぶ。


『第三の鍵が――動き始めた!』


遠く離れたふわりか村で。


時計塔の鐘が、誰も触れていないのに鳴り始めた。


カン――。


カン――。


そして時計塔の地下から、黒い文字が浮かび上がる。


『第三の鍵、解放開始』


まだ第二の鍵を手にしたばかりなのに――。


最後の鍵が、すでに動き始めていた。

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