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ふわりか村英雄譚~黒き王と三つの鍵~もふもふたちの戦い  作者: 雨宮ぐみ


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第16話 黒い壁の向こう側

第16話 黒い壁の向こう側


ふわりか村と野獣村を分断するように現れた、巨大な黒い壁。


その向こう側から、無数の黒い影が押し寄せていた。


「来るぞ!」


エラの声が響く。


黒い影たちは獣のような姿をしていたが、身体は黒い霧でできている。


目だけが赤く光っている。


「普通の生き物じゃない!」


ノアが風を放つ。


ビュオオオオッ!


数体が吹き飛ばされた。


しかし――。


地面に落ちた黒い霧が、再び集まり始める。


「倒しても戻ってくる!」


エコーが叫ぶ。


「厄介すぎる!」


レオンが周囲を見回した。


「待って……」


「どうした?」


グレゴリーが聞く。


「こいつらは村を直接狙っていない」


レオンの視線の先。


黒い影たちは、村人ではなく、地面にある魔法石へ向かっていた。


「魔法石を狙ってる!」


エラが気づく。


「村の結界を維持している魔力を奪うつもりなんだ!」


「なら、魔法石を守ればいい!」


グレゴリーが地面から巨大な岩の壁を作る。


ドドドドドッ!


魔法石の周囲を岩壁が覆った。


「これで――」


ドンッ!


黒い影が岩壁へ突進する。


「うそだろ!」


グレゴリーが目を丸くする。


「俺の壁、三秒もたなかったぞ!」


エコーが叫ぶ。


「グレゴリー! もっと頑丈に!」


「やってる!」


「もっと!」


「これ以上やったら村の地面まで持ち上がる!」


「それは困る!」


エラが即座に突っ込んだ。


「村まで持ち上げるな!」


「分かってる!」


その間にも黒い影は増えていく。


アリスが魔法石の前に立った。


「私が治癒魔法で守る!」


「治癒魔法で?」


ミアが首をかしげる。


「魔法石も生き物と同じように、魔力の流れがあるの」


アリスは魔法石に手を当てる。


淡い光が広がった。


すると――。


黒い影が魔法石へ触れた瞬間、身体が弾き飛ばされた。


「効いてる!」


ノアが叫ぶ。


「この魔法石には、もう黒い魔力が入り込んでる!」


アリスは集中する。


「なら、全部取り除く!」



---


その頃。


黒い壁の反対側。


野獣村でも同じ戦いが始まっていた。


「多すぎる!」


アルベルトが雷を放つ。


バリバリバリッ!


黒い影が消える。


しかし、すぐに霧が集まり再生する。


ヴァルターが叫ぶ。


「アルベルト! 俺と同時に攻撃するぞ!」


「待て!」


「何だ!」


「攻撃ではなく、動きを止める!」


アルベルトは黒い影の足元へ雷を走らせた。


地面に雷の網が広がる。


黒い影たちの動きが止まった。


「今だ!」


ヴァルターが炎を放つ。


ゴオオオオッ!


黒い影たちは炎に包まれる。


だが、消滅はしない。


「まだだ!」


アルベルトが叫ぶ。


「ノアが言っていた。こいつらは魔力を吸収している!」


「つまり?」


「強い魔法で倒すほど、こいつらに魔力を与える!」


ヴァルターが舌打ちする。


「……面倒な敵だ」


「だから言っただろう」


「お前の説明は長い!」


「今は聞け!」


二人が言い合っている間にも、黒い影が迫る。


ヴァルターは炎を小さくした。


「なら――力を使わずに止める」


アルベルトが頷く。


「そういうことだ」


二人は目を合わせた。


そして同時に走り出した。



---


ふわりか村。


アリスが魔法石の黒い部分を浄化している間、エラたちは黒い影を押し返していた。


「あと少し!」


エコーが風を操る。


「右から来る!」


ミアが叫ぶ。


エラがすぐに右へ走る。


「分かった!」


「今度は左!」


「ミア!」


「何?」


「一度に言って!」


「じゃあ右!」


「今、左って言っただろ!」


「ごめん、間違えた!」


「そこは間違えるな!」


しかしミアは真剣だった。


「でも、変なの」


「何が?」


「黒い影が、みんな同じ場所を避けてる」


レオンが振り返る。


「……どこ?」


ミアが指差した。


「村の中央」


そこには古い時計塔が立っていた。


「時計塔?」


レオンが目を細める。


「まさか……」


彼は走り出した。


「レオン!」


「時計塔を調べる!」



---


時計塔の下。


レオンは地面に手を当てた。


「やっぱりだ」


「何が?」


ミアが聞く。


「地下から魔力が流れている」


「山の心臓?」


「いや……違う」


レオンは驚いた顔をした。


「逆だ」


「逆?」


「この時計塔から、山へ魔力が送られている」


ミアが目を丸くする。


「じゃあ……」


「誰かが、ここから山の心臓を動かしている」


その瞬間。


時計塔の壁に、黒い文字が浮かび上がった。


――第一の鍵、解放。


レオンの表情が凍る。


「第一の鍵……?」


「どういうこと?」


「分からない」


レオンは壁を調べる。


そのとき――。


カチッ。


時計塔の内部から、小さな音がした。


「……何?」


ミアが後ずさる。


カチ……カチ……。


時計の針が勝手に動き始める。


そして、時計の文字盤に――。


ふわりか村と野獣村の紋章が浮かんだ。


「二つの村の紋章……」


レオンが呟く。


「この時計塔自体が、山の心臓とつながっていたんだ」


ミアが青ざめる。


「じゃあ、魔法石を守るだけじゃダメなんじゃ……」


「そうだ」


レオンが立ち上がる。


「黒い影を止めても、山の心臓は動き続ける」


そのとき。


ドクン――。


時計塔が大きく揺れた。


「きゃっ!」


ミアがレオンにしがみつく。


「ミア!」


「ご、ごめん!」


「いや……」


レオンが苦笑する。


「今は離れなくていい」


「え?」


「まだ揺れてるから」


「……それなら仕方ないね」


ミアはそのままレオンの腕につかまった。


「でも……」


「何?」


「ナッツも落ちそう」


「やっぱりそれか!」



---


その頃。


ふわりか村の魔法石から、黒い亀裂が消えた。


アリスがゆっくり手を離す。


「……浄化できた」


「本当か!」


グレゴリーが喜ぶ。


しかし――。


魔法石は青く輝いたものの、結界は回復しなかった。


「どうして?」


アリスが驚く。


エラが時計塔を見る。


「……魔力が別の場所へ流れている」


レオンが戻ってきた。


「その通り」


全員が振り返る。


「時計塔が山の心臓へ魔力を送っている」


ノアが険しい顔をする。


「つまり、黒い装置だけじゃなかった」


「そうだ」


レオンは頷いた。


「この村の地下には、古代から続く魔力の通路がある」


ヴァルターとアルベルトも黒い壁を越えて戻ってきた。


「野獣村にも同じものがある」


アルベルトが言う。


「そして、向こうの時計塔にも同じ仕掛けがあった」


レオンは二つの村を見渡した。


「二つの村の魔力を山へ送る仕組み……」


その瞬間。


山の心臓が、今までで一番大きく脈打った。


ドクン――――ッ!


空が黒く染まる。


そして山頂から、巨大な黒い光が天へ伸びた。


その光の中に、文字が浮かび上がる。


『第二の鍵、解放』


全員が息をのむ。


「第一の鍵……第二の鍵……」


エラが呟く。


レオンは山を見つめた。


「まだ、何かがある」


すると、黒い壁の向こうから――。


あの黒衣の人物の声が響いた。


『急げ』


「!」


『第三の鍵が開けば――もう止められない』


声が消える。


ヴァルターが拳を握った。


「第三の鍵?」


ノアが山を見る。


「なら、第二の鍵がどこなのかを探さないと」


レオンが頷く。


「そして、第三の鍵が開く前に――」


そのとき。


山の奥から、巨大な咆哮が響いた。


『グオオオオオオオオッ!!』


大地が揺れる。


黒い光が、さらに大きくなる。


レオンが静かに言った。


「……急ごう」


二つの村を救うため。


そして――。


山の心臓に仕掛けられた「三つの鍵」の謎を解くために。


一行は、再び山へ向かうことになった。

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