↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふわりか村英雄譚~黒き王と三つの鍵~もふもふたちの戦い  作者: 雨宮ぐみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/55

第15話 割れた山と黒き王

第15話 割れた山と黒き王


ふわりか村のすぐそばで、大地が大きく揺れた。


ゴゴゴゴゴゴ……!


「きゃあっ!」


村人たちが悲鳴を上げる。


山の斜面に、一本の亀裂が走った。


それはみるみるうちに広がり、岩を砕きながら山頂へ伸びていく。


「山が……割れてる!」


エコーが叫んだ。


レオンは険しい顔で山を見上げる。


「まずい……」


「何が分かった?」


エラが尋ねる。


「さっきの『王』という文字……。古代文字の記録に似たものがある」


レオンは記憶を探るように目を閉じた。


「昔、この山には大地を守る存在がいた。守護者とは別に――」


「別に?」


アリスが聞き返す。


レオンが答える。


「災厄を操る存在がいた可能性がある」


ヴァルターの目が鋭くなる。


「つまり、あの黒い奴の主人か?」


「分からない。ただ……」


レオンは山の亀裂を指差した。


「山の心臓が動いたとき、あの文字が現れた。そして今、山そのものが反応している」


「じゃあ、あの中に何かいるのか?」


グレゴリーが尋ねる。


「いる」


ミアが突然言った。


全員がミアを見る。


「どうして分かる?」


ノアが聞く。


ミアは自分の耳を押さえながら答えた。


「さっきから聞こえるの」


「何が?」


「声」


ミアは山を見つめる。


「すごく小さいけど……誰かが泣いてる」


「泣いている?」


アリスの表情が変わる。


「人の声なの?」


「分からない。でも……」


ミアは耳を澄ます。


「『助けて』って言ってる」


その言葉と同時に――。


山の亀裂から、青白い光が漏れ始めた。


黒い影とは正反対の、穏やかな光だった。


レオンが驚く。


「これは……」


「何?」


「古代の守護魔法だ」



---


一方、黒い影はゆっくりと村へ近づいていた。


「来るぞ!」


エラが叫ぶ。


村人たちが身構える。


しかし――。


黒い影は突然、足を止めた。


そして山の亀裂へ顔を向ける。


「……?」


ヴァルターが眉をひそめる。


「何をしている?」


黒い影の胸に埋め込まれた紫色の魔石が、激しく点滅した。


ドクン!


ドクン!


ドクン!


そして、黒い影が苦しそうに身体を震わせる。


「まさか……」


レオンが呟いた。


「こいつも、山の何かに操られている?」


その瞬間。


黒い影が両手で頭を抱えた。


「グ……グオオ……!」


先ほどまでとは違う、苦しそうな声。


アリスが一歩前へ出る。


「待って!」


エラが腕をつかむ。


「危険よ!」


「でも、あれは苦しんでる!」


アリスは黒い影を見つめた。


「敵だからって、苦しんでいるものを放っておけない」


ヴァルターが黙る。


そして鼻を鳴らした。


「……分かった」


「ヴァルター?」


「俺も行く」


アルベルトが驚いた。


「珍しいな」


「うるさい」


「いや、褒めている」


「余計うるさい」


エコーが笑う。


「二人とも仲良くなったね」


「どこがだ!」


「どこがだ!」


二人の声が見事に重なった。


「ほら」


「ほらじゃない!」


エラが頭を抱えた。



---


アリス、ヴァルター、アルベルト、レオン、ノア、エコー、グレゴリー。


七人は黒い影へ近づいた。


「動くな!」


ヴァルターが呼びかける。


黒い影がこちらを向く。


複数の目が赤く光った。


「攻撃してこない……?」


ノアが呟く。


アリスはゆっくり手を伸ばした。


「あなたを傷つけるつもりはない」


黒い影が腕を振り上げる。


ヴァルターが炎を構えた。


「アリス!」


「大丈夫!」


アリスは動かなかった。


黒い腕が――。


彼女の目の前で止まった。


「……!」


アリスは魔力を感じ取る。


「この魔力……」


レオンも気づいた。


「黒い魔力の中に、別の魔力が混ざっている」


「別の魔力?」


「守護魔法だ」


山から漏れている青白い光と同じだった。


「つまり、この黒い影は……」


ノアが言葉を失う。


「誰かに無理やり力を与えられている」


アリスは黒い影の胸へ手を伸ばした。


「だったら、その力を取り除けば――」


突然。


黒い影の胸から、黒い鎖のような魔力が伸びた。


「危ない!」


グレゴリーがアリスを抱えて後ろへ飛ぶ。


バシュッ!


地面が黒く染まる。


「グレゴリー、ありがとう!」


「間に合ってよかった!」


エコーが黒い魔力を風で吹き飛ばす。


「これ、かなり強いよ!」


レオンが叫ぶ。


「全員、山から離れろ!」


「どうして?」


「山の亀裂が広がっている!」


ゴゴゴゴゴ……!


山がさらに大きく割れた。


そして――。


亀裂の奥から巨大な青白い光が現れた。


光の中に浮かび上がったのは――。


巨大な石の腕。


「腕……?」


ミアが呟く。


ズズズズ……。


石の腕が山肌を押し広げる。


さらにもう一本。


そして、巨大な頭部が姿を現した。


「守護者……?」


アリスが息をのむ。


地下遺跡で見た古代の守護者とは違う。


その姿は巨大で、山そのものから生まれたようだった。


そして、その胸には――。


ふわりか村と野獣村。


二つの村の紋章が刻まれていた。


レオンが驚く。


「これが……本当の守護者……?」


巨大な守護者がゆっくりと目を開く。


青い光が村を照らした。


そして、低く響く声がした。


『二つの村よ――』


全員が息をのむ。


『力を合わせよ』


ヴァルターが前へ出る。


「なぜだ?」


守護者は答えた。


『黒き王が、目覚めようとしている』


「黒き王……?」


レオンが呟く。


守護者の視線が、黒い影へ向く。


『そして、あれは王ではない』


黒い影が苦しそうにうめく。


『王に力を与えられた、哀れな器だ』


アリスの表情が変わった。


「器……」


その瞬間。


山の奥から、別の声が響いた。


低く、冷たい声。


『……余計なことをするな』


ズン――!


山全体が震えた。


黒い影の後ろに、巨大な黒い魔法陣が浮かび上がる。


そして魔法陣の中央に――。


一つの巨大な目が開いた。


「……!」


誰も動けない。


巨大な目が、ふわりか村を見下ろす。


『二つの村の魔力は、すでに我が手の中だ』


ヴァルターが炎を握りしめる。


「ふざけるな!」


『ならば、奪い返してみよ』


黒い魔法陣が一気に広がった。


山の心臓が激しく脈打つ。


ドクン!


ドクン!


ドクン!


そして――。


ふわりか村と野獣村の間に、巨大な黒い壁が出現した。


「村同士を……分断した?」


エラが呟く。


レオンが頷く。


「違う」


「え?」


「これは戦場を作っているんだ」


黒い壁の向こうから、無数の黒い魔力がこちらへ向かってくる。


ノアが目を見開いた。


「敵が……来る」


ヴァルターが炎をまとわせる。


アルベルトも雷を構えた。


エラが剣を握る。


グレゴリーが大地に手をつく。


エコーが風を集める。


アリスは静かに仲間たちを見渡した。


そして――。


「今度は、村を守るだけじゃない」


「……ああ」


ノアが頷く。


「二つの村を守る」


その瞬間。


黒い壁の向こうから、無数の影が飛び出してきた。


「来るぞ!」


エラが叫ぶ。


二つの村が初めて手を取り合った直後――。


本当の戦いが、始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。