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ふわりか村英雄譚~黒き王と三つの鍵~もふもふたちの戦い  作者: 雨宮ぐみ


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第14話 ふわりか村に迫る災厄

第14話 ふわりか村に迫る災厄


山の門を飛び出した一行は、急いでふわりか村へ向かっていた。


先頭を走るのはアクア。


その後ろをエコー、ノア、エラたちが続き、ヴァルターとアルベルトも並んで走っている。


「もっと速く!」


ヴァルターが叫ぶ。


「これ以上は無理だ!」


アクアが振り返った。


「ならお前が走れ!」


「俺なら走れる!」


「じゃあ走ってみろ!」


「……いや、俺は魔法を温存する」


「結局走らないのかよ!」


エコーが笑う。


しかし、笑っている場合ではなかった。


山の向こうから、黒い煙が立ち上っている。


そして――。


ゴォォォォ……。


大地が低く震えた。


アクアの足が止まる。


「……今の、地震?」


レオンが首を横に振った。


「違う」


「じゃあ何?」


「歩いているんだ」


「誰が?」


レオンは山の向こうを見つめた。


「災厄が」


その言葉に、全員の表情が変わった。



---


ふわりか村。


その頃、村ではクララとセシルが畑の様子を見ていた。


「今日は妙に鳥が少ないわね」


クララが空を見上げる。


セシルも頷いた。


「森の動物たちも、朝から騒いでいるみたい」


すると――。


遠くから、低い音が響いた。


ゴォォン……。


畑の土が小刻みに揺れる。


「……何?」


クララが立ち上がる。


その瞬間、村の時計塔の魔法石が赤く光った。


警報だった。


「魔力反応!」


セシルが叫ぶ。


村の中央にある鐘が鳴り始めた。


カン! カン! カン!


村人たちが一斉に家から飛び出してくる。


「何が起きたんだ!?」


「山の方からだ!」


「また野獣村が――」


その言葉を聞いたエラがいないことに気づき、クララが叫ぶ。


「違うわ!」


村人たちが振り返る。


「エラたちは野獣村の人たちと一緒に、原因を調べに行っている!」


その直後。


山の向こうから――。


巨大な黒い影が現れた。


木々をなぎ倒しながら、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。


「……あれは……」


村人たちは言葉を失った。


それは獣のようにも見えた。


しかし、普通の生き物ではない。


全身を黒い霧が覆い、身体の一部から紫色の光が漏れている。


目は――。


二つではない。


いくつもの光が暗闇の中で浮かんでいた。


「守護獣……なの?」


誰かが呟く。


しかし、セシルが首を横に振った。


「違う」


植物魔法を通じて、森の様子を感じ取っていた。


「森の木々が……あれを怖がっている」


その言葉が落ちた瞬間。


巨大な影が咆哮した。


「グオオオオオオオオッ!!」


ビリビリビリッ!


村の魔法結界が大きく揺れる。


「結界を強化して!」


クララが叫ぶ。


村人たちが一斉に魔力を送り込む。


しかし――。


結界の外側から、黒い霧がゆっくりと広がっていく。


「まずい……」


クララの額に汗が浮かぶ。


「普通の結界じゃ止められない」



---


その頃。


山道を走っていた一行にも、咆哮が聞こえた。


「村だ!」


ノアが叫ぶ。


「急ぐぞ!」


ヴァルターが炎の魔力を足元へ集める。


しかし、アルベルトが腕をつかんだ。


「待て!」


「何だ!」


「その魔力を全部使うつもりか?」


「村を守るんだ!」


「だからこそだ!」


アルベルトは珍しく厳しい顔をしていた。


「相手の正体も分からない。ここで魔力を使い果たしたら、村に着いたとき何もできなくなる」


ヴァルターは黙った。


そして――。


「……分かった」


エコーが目を丸くする。


「珍しい。ヴァルターが人の話を聞いた」


「俺だって聞く!」


「三回に一回くらい?」


「エコー!」


「冗談だよ!」


ノアが苦笑する。


「この状況でもいつも通りだね」


「いつも通りだからこそ、落ち着いていられるんだよ」


エコーは前を向いた。


「ほら。村が見えてきた!」



---


村の入口。


巨大な黒い影が、結界へ近づいていた。


その前に立っていたのは――。


クララ、セシル、そして村の守備隊だった。


「来させないで!」


クララが叫ぶ。


全員が魔力を集中する。


大地が盛り上がり、巨大な土壁が何重にも形成された。


ズズズズズ……!


黒い影が一歩進む。


ドン!


土壁が揺れた。


もう一歩。


ドン!


亀裂が入る。


「もっと魔力を!」


クララが叫ぶ。


そのとき――。


「待って!」


ミアの声がした。


全員が振り返る。


山道から、一行が戻ってきたのだ。


「エラ!」


クララが駆け寄る。


「無事だったのね!」


「話はあと!」


エラが息を切らしながら叫ぶ。


「今までの敵とは違う!」


レオンも続ける。


「あれは、山の心臓から生まれた存在ではない」


「じゃあ何なの?」


クララが聞く。


レオンは答えた。


「正確には……まだ分からない」


ヴァルターが黒い影を睨む。


「だが、止めるしかない」


その瞬間。


黒い影の頭部がこちらを向いた。


複数の目が、一斉に赤く光る。


「……!」


アリスが息をのむ。


黒い影から、一本の腕が伸びた。


そして結界へ向かって振り下ろされる。


「全員、構えて!」


エラが叫んだ。


ズドォォォォン!!


凄まじい衝撃。


結界全体が揺れ、村の地面に亀裂が走る。


「くっ……!」


グレゴリーが両手を地面につける。


「ここは俺が支える!」


土の柱が次々と地面から生える。


しかし黒い影は止まらない。


「グレゴリー、一人じゃ無理!」


アリスが叫ぶ。


「分かってる!」


ノアが風を送り込む。


エコーも風を重ねる。


リリアは水の壁を作り、アルベルトは雷の盾を展開。


ヴァルターは炎を抑えながら、結界の弱い場所へ魔力を流した。


「これでどうだ!」


ドォン!


黒い影の腕が弾かれる。


「効いた!」


ミアが叫ぶ。


だが――。


黒い霧が再び集まり始めた。


「嘘……」


ミアの顔が青ざめる。


レオンが目を細める。


「違う」


「え?」


「今の攻撃で傷ついたんじゃない」


「じゃあ……?」


「こいつは――」


レオンが黒い影の胸元を見る。


そこには、紫色に輝く巨大な魔石が埋め込まれていた。


「魔力を吸収している」


全員が凍りついた。


「つまり、攻撃すればするほど……」


ノアが呟く。


「強くなる」


ヴァルターが拳を下ろした。


「……厄介な奴だな」


エコーが苦笑する。


「じゃあ、殴っちゃダメってこと?」


「そういうことだ」


レオンが答える。


「なら、どうする?」


エラが尋ねる。


レオンは山の方向を振り返った。


そして気づいた。


「……山の心臓だ」


「何?」


「こいつは山の心臓から魔力を受け取っている」


レオンは黒い影を指差す。


「なら、心臓とのつながりを切ればいい」


そのとき――。


村の地下から、ドクン……という音が響いた。


山の心臓と同じ音だった。


レオンの顔が険しくなる。


「違う……」


「何が?」


「こいつが魔力を受け取っているんじゃない」


レオンはゆっくりと言った。


「こいつ自身が――山の心臓を動かしているんだ」


全員が息をのむ。


そして黒い影の胸の魔石が、さらに強く輝いた。


ドクン。


ドクン。


ドクン。


山の心臓が、再び動き始める。


次の瞬間――。


黒い影の背後に、巨大な黒い魔法陣が浮かび上がった。


その中心には、古代文字が一文字だけ刻まれていた。


「……『王』?」


レオンが呟く。


その文字を見た瞬間。


山の奥から、もう一つの声が響いた。


『――目覚めよ』


黒い影がゆっくりと顔を上げる。


そして――。


その背後の山が、大きく割れ始めた。

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