↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふわりか村英雄譚~黒き王と三つの鍵~もふもふたちの戦い  作者: 雨宮ぐみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/55

第11話 守護者の試練

第11話 守護者の試練


 山の門の奥。


 石造りの広間に、巨大な魔法陣が浮かんでいた。


 その中央に立つのは、古代の守護者。


 全身を岩のような外殻で覆い、巨大な角を持つ獣だった。


「最も力の強い者ではなく、最も仲間を信じられる者が、この扉を開く」


 守護者の言葉が広間に響く。


 ヴァルターは腕を組んだ。


「簡単な試練じゃないか」


 エラが横を見る。


「本当に?」


「俺たちは仲間だ。互いに信じればいい」


「じゃあ、ヴァルター」


「何だ?」


「まず、私を信じて目を閉じて」


「……?」


「いいから」


 ヴァルターが渋々目を閉じる。


「何をするつもりだ」


「何もしないわ」


「本当だな?」


「本当よ」


 エラがヴァルターの後ろに回る。


 そして――。


「今よ、ミア」


「えっ?」


 ミアがヴァルターの肩に小さな木の実を乗せた。


「……」


 ヴァルターは目を開ける。


「……何だ、これは」


「仲間を信じる試練」


 エコーが真顔で言った。


「違うだろ!」


 広間に笑い声が響いた。


 守護者まで、わずかに目を細めている。


「……ずいぶんと賑やかな者たちだ」


「すみません」


 アリスが頭を下げる。


「でも、仲がいいのは本当ですよ」


「ならば試練を始める」


 守護者が前足を床につけた。


 ズズズズズ……。


 床が三つに分かれる。


 それぞれの道の先に、光る扉が現れた。


「三つの道のうち、正しい道を選べ」


 レオンが周囲を見回す。


「手がかりは?」


「仲間を信じよ」


 それだけだった。


「ずいぶん説明が少ないな」


 グレゴリーが困った顔をする。


「古代文明って、こういうの好きなのか?」


「たぶんね」


 レオンが苦笑した。


 三つの扉は、どれも同じ形。


 左の扉には炎。


 中央の扉には風。


 右の扉には水。


「俺は炎だと思う」


 ヴァルターが即答した。


「なぜ?」


「俺が炎の魔法を使うからだ」


「それは理由になってないぞ」


 ノアが呆れる。


「いや、分かりやすいだろ」


「分かりやすすぎるんだよ」


 アルベルトが扉を調べる。


「炎の扉には強い魔力が流れている」


「やっぱり俺の扉だ!」


「ただし、強すぎる」


「……」


 ヴァルターが黙った。


 レオンが中央の風の扉を見る。


「風の魔力は弱い」


「じゃあ外れ?」


 エコーが聞く。


「いや」


 レオンは首を横に振った。


「弱いからこそ、自然な状態に近い」


 アリスが水の扉を見る。


「こっちは?」


「水の魔力は一定している。でも、ほんの少しだけ不自然だ」


「つまり三つとも怪しいのね」


 エラがため息をついた。


「そうなる」


 そのとき、ミアが扉の前を行ったり来たりしていた。


「どうしたの?」


 アリスが聞く。


「うーん……」


 ミアは首を傾げる。


「私、右の扉が嫌な感じする」


「嫌な感じ?」


「うん。なんとなくだけど」


 レオンがミアを見る。


「何か見えた?」


「見えない。でも……」


 ミアは鼻をひくひくさせた。


「この扉だけ、木の匂いがしない」


 全員が黙った。


「木の匂い?」


 グレゴリーが扉に近づく。


 そして、手を当てた。


「……確かに」


 グレゴリーの土魔法が反応する。


「この扉の向こう、石じゃない」


「じゃあ何?」


「根っこだ」


 レオンが目を見開いた。


「なるほど!」


 レオンが扉の古代文字を確認する。


「三つの扉は魔法の属性を示しているんじゃない」


「え?」


「守護者が求めているのは、魔法の強さじゃない」


 レオンはミアを見る。


「観察した仲間の言葉を信じられるかどうか。それが試練なんだ」


 ヴァルターがミアを見る。


「つまり……」


「ミアの感覚を信じる」


「でも、外れたら?」


 エコーが聞く。


 ヴァルターが笑った。


「そのときは、そのときだ」


 ミアが目を丸くする。


「ヴァルター……」


「お前が仲間なら、信じる」


 ミアは嬉しそうに笑った。


「じゃあ、右!」


「よし!」


 全員が右の扉へ向かう。


 ヴァルターが扉を押す。


 ギギギ……。


 扉はゆっくり開いた。


 しかし――。


「うわあああっ!」


 突然、床が消えた。


「え!?」


 一行全員が落下する。


「グレゴリー!」


「俺に任せろ!」


 グレゴリーが地面に手をつく。


「大地よ!」


 ドォン!


 巨大な岩の足場が現れ、一行はその上に着地した。


「助かった……」


 アリスが胸をなで下ろす。


 エコーがグレゴリーを見る。


「さすがグレゴリー!」


「まあな!」


 するとミアが小さく手を挙げた。


「……でも、私たちが落ちたところ、罠だったよね?」


「……」


 全員が沈黙する。


 レオンが頭を抱えた。


「どうやら、正解の道でも罠はあるらしい」


「それ先に言ってよ!」


 エコーが叫ぶ。


 守護者の声が遠くから響いた。


「道を選ぶことが試練ではない」


「選んだ後も、仲間を信じ続けられるか。それが試練だ」


 広間の奥に、新たな扉が現れた。


 その扉には、二つの紋章が刻まれていた。


 一つは――ふわりか村。


 もう一つは――野獣村。


 ノアが息をのむ。


「これは……」


 ヴァルターも表情を変えた。


 扉の中央には、古代文字が浮かび上がる。


『二つの村の力を合わせよ』


 しかし、その直後。


 山の奥から――。


 ドクンッ!


 強烈な魔力が噴き出した。


 山の心臓が、再び動き始めたのだ。


 そして黒い魔力の中に、一瞬だけ人影が浮かんだ。


「……犯人だ!」


 エコーが叫ぶ。


 影は二つの村の紋章を見つめると、低く笑った。


「その扉を開けられるなら、開けてみろ」


 次の瞬間、影は消えた。


 レオンが扉を見つめる。


「……どうやら、次の試練は俺たちだけじゃない」


「どういうこと?」


 アリスが尋ねる。


「ふわりか村と野獣村――」


 レオンが静かに言った。


「二つの村そのものが、一つになれるかどうかを試されるんだ」


 そのとき、扉の奥から巨大な魔力が流れ出した。


 次の試練が、始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。