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閃光の瞬  作者: KK9996
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第7話 試される力と選ばれる存在

企業都市で、借金を背負った剣士が日本刀と知略で成り上がっていくSFバトルものです。

テンポと引きを重視して書いています。

少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

「――で、その特別なんとかって、誰が相手なんだ?」


瞬が浦賀に聞く。


「…アイコニックモッドモジュールを調整後の企業ランカー、とだけ」


浦賀は核心をぼやかした。


この日、瞬たちは解散できず、駅近くのカプセルホテルに押し込まれていた。


「ふぁー…隣のおばさんのイビキがうるさくて眠れなかったよ」


座愛はあくびをしながら目の下にクマを作っていた。


瞬も、あいが淹れる予定だった人工コーヒーが飲めず、不機嫌だった。


『レヴ・コーラ!翼が生える!』


隅に置かれた広告モニターから流れてきた。


「…そうか。コーラならいくらでも出る。とにかく、砂糖とカフェインだ」


瞬がジュースサーバーからコーラを出して、飲んだ。


「…うまっ。コーラってこんなに美味かったっけ?」


止まらない。

2杯、3杯とおかわりをする。


「瞬、何やってるんですか。今日は特別適正審査ですよ」


電子も現れた。

電子は意外と細かいことを気にしない。

カプセルホテルでも普通に眠れたらしい。


「今の順位なら、AランクトップからSランク下位あたりをぶつけられるはずです」

「変なところで調子を崩して負けた、なんてやってたら順位下がりますよ」


電子は少し苛立つが、瞬の手は止まらない。


「コーラうめぇ…」


それを見ていた電子は、瞬が連続で押しているジュースサーバーを横取りし、人工イチゴミルクのボタンを押した。


「そんな甘いものばかり摂ってると、病気になってクリニック送りですよ」


「お前が1番甘ったるい…」


瞬が顔をしかめながら突っ込む。


「…君たち、本当にSランクを討伐したんですか?」


浦賀は呆れたように眉を寄せた。

答えたのは座愛だった。


「ああ、ほとんど奇跡みたいなもんだったけど」


「はぁ…。会場に移動しましょう」


カプセルホテルを出るため、全員でエレベーターに乗る。

寝床だけじゃない。

エレベーターまで狭かった。

瞬の刀が邪魔になっている。


「…瞬、“それ”少し引っ込めて」


後ろに立つ瞬の刀の柄が、座愛の柔らかい所に当たっていた。

座愛は耳まで赤くして、振り向かずに言った。


「“それ”って…一応これにも名前はあるんだぞ」


「じゃ、“名前のあるそれ”をもう少し引っ込めてくれ」


瞬は黙って刀を引っ込めた。


カプセルホテルを出る。


昨日の外敵騒ぎのせいか、人はいつもより少ない。


襲撃現場には「立ち入り禁止」のテープ型ホログラムが浮かんでいる。

その中で、調査班は綿棒などで現場を調べている。


「…ピリオドは本当に超能力者か何かなのか?」


瞬が浦賀に尋ねた。


「詳しくは知りません。ああいうアイコニックモッドモジュールなのか、本当に超能力なのか」

「ただ、事実として、超能力のような力は行使できるでしょう…その目で見たはず」


「確かに。で、会場は遠いのか?」


「いえ、同じ第1地区の企業ビルです。徒歩で10分程度です」


それ以上、誰も口を開かなかった。

10分ほど、足音だけが続いた。


「こちらです」


そこには、大量の企業広告バナーが貼られた、カラフルで背の低いビルがあった。


だが、中へ入ると拍子抜けするほど整っていた。


「いらっしゃいませ」


受け付けのロボットも小綺麗にしていた。


「特別適正審査だ。バーチャル戦闘空間で模擬戦を予定していたんだが」


浦賀がそう言うと、受け付けロボットは足のタイヤを回して動き出した。


「お待ちしておりました。ようこそ、閃野瞬様。ご案内します」


暗く、オシャレな廊下を、4人と1体で歩く。


すると、「戦闘空間 A」という大部屋にたどり着いた。


「お連れ様はここまでです。あちらの椅子でおくつろぎください」

「浦賀様にはログ取りのため、ご一緒に入っていただきます」


ロボットがそう言うと、反対の声が大きく返ってきた。


「仲間なんだ!戦闘には参加しないと約束するから、私たちも中に入れてくれ!」


座愛が受け付けロボットに懇願する。


「ビジターは例外を望んでいます…ベストな応対を検索中……戦闘に参加しないのであれば、中に入ることは許可します」


「話せばわかるな!」


「ええ、ハッキングしないで済みました」


座愛と電子は喜んだ。


中に入ると、真っ白だった部屋が一瞬で崩れたビル群の様相に変わった。


「遮蔽物とかは…触れるな。コンクリそのものの硬さだ。これが本当にバーチャルなのか?」


「はい。ホスト側はかなりの予算を使ってますから」


遮蔽物を確認する瞬に、浦賀が答えた。


「では、始めます……」


ビー。


サイレンが鳴り、照明が1段階暗くなった。


「特別適正審査開始。ゲストは、Aランク15位、閃野瞬」


「そして、特別適正審査、ホストは…」


向こう側の床下から、せり上がる床。

相手が見える。


サイレンのライトに照らされ、浮かび上がる筋肉のような外骨格アーマー。

首から下げてるドッグタグ。

そして片手には、本物の酒が入った酒瓶。


「ホスト側は、Sランク1位、黒乃虚空 “ピリオド”です」


「な!?」


「マジかよ!?」


瞬も座愛も電子も、流石に声を失った。


「これより特別適正審査・模擬戦開始。無力化、または降参。あるいは、明らかな勝敗状況の構築によって終了とします」


「…サムライ。その力を見せてみろ」


ピリオドが深く、唸るように話しかけた。

そして、酒を飲む。

空になった酒瓶を捨てる。

地面で割れた。


瞬が刀を抜く。

…少し震えているように見える。


「両者、構え……状況開始」


またブザーが鳴った。

特別適正審査開始の合図だ。


瞬はまず、目の前の遮蔽物に身を隠す。

この状況では定石だった。


遮蔽物に入る。

いつもの相手なら、それで十分だった。


だが、相手はSランク1位だった。


ピリオドは当然のように宙に浮き、上から瞬の位置を捉えた。


「マジかよ…」


そして、昨日の府上駅鎮圧の時のように、何もないところから弾丸が出た。


アサルトライフル級の連射。

それも同時に4本。


遮蔽物の外、横、上。

死角の全部から撃たれているような弾幕だった。


瞬はフラッシュを最大出力にし、その弾丸の雨を避ける。

そして、斬れるものは斬り落とした。


「はぁ…はぁ…弾そのものは見える。しかも訓練弾か。喰らっても即死はしないってわけだな」


「やはり“フラッシュ持ちの刀使い”は素晴らしいな。今の攻撃を受け流せる者はそうはいない」


ピリオドの声には感心はあっても熱はない。

試しているだけの響きだった。

どこから出したのか、また酒を飲んでいた。


瞬が急いで新しい遮蔽物を探す。


「いや、違う。遮蔽物に頼っていたらジリ貧だ!――そうだ。逆だ」


少し高い瓦礫を見つける。


「この上からなら…刺突が届く。ピリオドは昨日の実戦から見るに、5m程度しか浮けないはず!」


瞬は瓦礫の上に立った。


そしてピリオド目掛けて、脚の力を最大まで高め、渾身の踏み込みを見せる。


一気に距離が詰まる。


…だが。


「俺が浮けるのは5m程度だと踏んだか。大外れだ」


ピリオドが更に上空へ浮く。

首から下げたドッグタグが、強化外骨格アーマーへカチャリと当たった。


高さの差が、そのまま格の差みたいだった。


――瞬の攻撃は届かない。


高く飛びすぎた瞬は、そのまま落下し、地面に叩きつけられた。


そしてピリオドが、見えない銃を瞬の前に展開する。


地面に叩きつけられた状態から、瞬は急いで立て直す。

刀を構える。


斜めに置かれた刃が、全弾を斬り落とす。

火花が連続して舞い、落ちていった。


だがその時――フラッシュがオーバーヒートした。

真上にはまだピリオド。


そして、瞬の周囲を、見えない銃が撃ち抜いた。


「…チェックメイト」


――万事休す。


ビー。


ブザーが鳴った。


「特別適正審査 “模擬戦”終了。状況判断から、勝者 : ピリオド。適正を審査中」


瞬も、座愛も、電子も、その場で固まった。

それほどまでに、差は圧倒的だった。


「瞬が…手も足も出なかった…」


浦賀は視線を逸らしたまま言った。


アナウンスが続ける。


「勝者 : 黒乃虚空。適正 : Sランク1位」

「敗者 : 閃野瞬。適正 : Aランク3位」


「…負けたのに、Aランク3位…?」


電子が目を見開く。


「ああ、ピリオドの弾を凌いだのがデカいんだろう」


だが、瞬だけは結果を見ても顔を上げなかった。


その時、浦賀の端末がけたたましく鳴った。


浦賀は急いで背を向けるが、全員がその浦賀に注目する。


背中越しに、大きな個人端末の画面は見えていた。


『権限変更通知』

『非常時措置 : 中枢アクセス権付与』

『対象 : Sランク1位』


ちらりと見えたこの表示の意味は、負けたばかりの今、深くは考えなかった。


「…こんなにも差があるものなのか」


再び瞬は肩を落とした。

それに浦賀が震えながら振り向き、呟いた。


「…もう、権限を持ったSランクですから…」


…そんな瞬に、ピリオドは背中だけを見せる。

ピリオドは個人端末を開き、何かを確認した。


そして、今度は腰の辺りからスキットルを出して、それをあおった。


そして、そのまま撤収した。


「――お疲れ様でした。またの来訪、お待ちしております」


受け付けロボットが冷たく見送った。


3人でビルを出た。

浦賀は、非常事態継続が終わったため、現地で解散となり、ここにはいない。


浦賀と別れても、誰も口を開かなかった。


「…でも、ほら、模擬戦だし。相手はマジで企業のエースだよ」


座愛がなだめる。

電子がそれに乗せる。


「そうですよ。敵として対峙することはまずありません」


「…わかってるさ。でも、自分が最強でありたいのが男の“さが”ってやつなんだよ」


その時、雨が降ってきた。


「雨なんて、珍しい」


誰もすぐには傘を出さない。


――雨音だけが、3人の間を埋めていた。

読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、次話も読んでいただけると嬉しいです。

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