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閃光の瞬  作者: KK9996
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第6話 守る戦場と介入する最強

企業都市で、借金を背負った剣士が日本刀と知略で成り上がっていくSFバトルものです。

テンポと引きを重視して書いています。

少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

「――瞬ってさ、前髪で隠れてるけど、額に切れ目みたいなのあるよな」


「ああ。これは父方から受け継ぐ“謎の第3の目”だ」

「話だと、何かを克服する時に、その時だけ開くらしい」


瞬が額を押さえて続ける。


「…今はまだ感覚も無いし、自分じゃ開けられない」


「目だったのか…なんか、いいな。それ」

「開いたところ、ちょっと見てみたい」


「いや、気味悪いだろ」


瞬と座愛がカフェの外のテーブルで人工コーヒーを飲んでいた。


ここは第一地区の中心に近い、府上ふがみ

ヒートシンクでもっとも人が集まる府上駅の真横だった。


ひっきりなしに電車が出入りし、人の流れは途切れない。


周囲のビル壁面では巨大モニターが同じ広告を流し、色と光で都市を騒がしく染めていた。


プワーン!


また電車が来た。

コーヒーの表面が揺れる。

瞬の前には白いコーヒー。

座愛の前には黒いコーヒー。


電車が停まるたび、人の波が押し寄せて来る。

電車、人、車、広告、捨てられたゴミ。


――喧騒。雑踏。


そんな人波から1人だけ外れて、女が近づいてきた。


「閃野 瞬と善名 座愛ですね。依頼課から来た浦賀うらがです」


女はスーツ姿だった。

腕の端末は二重折り畳み式で、他の住人の物より大きい。


その端末を操作しながら、女は言う。


「有事の場合、私がログを取ります」


――遡ること、約1時間。


『瞬!依頼が来ています!打ち合わせたいのでロビーまでお願いします』


端末に、おかっぱ頭がアップで映る。

後ろにはおさげもいる。


瞬は刀を持ってロビーへと降りた。


ロビーに降りると、座愛、電子、あいがすでに待っていた。


「今回の依頼ですが、要約すると、府上駅での待機、有事の際の初動対応です」

「外敵からの攻撃が増えたことで、上はこの駅への攻撃を警戒しています」


電子が端末に地図を表示して見せる。


「…ですが、パニックを避けるために封鎖はせず、傭兵に待機させ、何かあった場合に対応させたい、とのことです」


瞬が反応する。


「つまり、何もなければ待機してるだけで金がもらえるな」


「ええ。何もないに越したことはありません。ただ、今回は“付帯”が付くようで…」


電子が続ける。


「依頼課の“浦賀”という若い女性が、ログを取るために付帯するそうです」


「それじゃ、そんなにサボれないな。まあいい、電車で府上駅まで行こう」


――そして現在。


「…有事の場合、私がログを取ります」


そう繰り返す浦賀とは裏腹に、駅には日常が流れていった。


浦賀がいるだけで、妙な沈黙が続いた。


「…ねぇ、瞬。電子とあいのこと、どう思ってる?」


座愛が珍しくうつむき加減で小声を落とした。


「えっ?」


駅の騒音で、瞬にはよく届かない。


座愛は自分の頬を両手でパンッと叩き、答えた。


「なんでもない」


その時だった。


治安調整部隊、パトロールの車が5台も、サイレンを鳴らしながらやって来た。

車から部隊員が降りて来た。


銃は持ってはいるが、この街を守るパトロールだ。


きっと駅を警戒してくれる。

誰もがそう思った。


だが。


部隊員のヘルメットのバイザーが赤くなり、“活動開始”の文字が浮かんだ。


「瞬、あれって!」


「ああ、まずい!この前の…!」


瞬たちが飛び出すより早く、部隊員たちは市民に向けて発砲を開始した。


――外敵だ。


ビルに垂れ下がったモニターの広告が一斉に消える。

そして、非常事態時の“インディケーター”が避難路を矢印で記す。


人々はその表示に従って走った。

ある者の皮膚アーマーからは破片や煙が散る。

ある者は矢印に従わず、集中砲火を浴びた。


「瞬!この状況は危険だ!私は敵の武器を落とす!」


座愛はそう言うと、背中から蜘蛛脚を展開し、それで地面を噛ませた。


ダン、…ダン、ダン。……ダン!


連射ではない。

照門を覗き、正確に狙って撃っている。


敵の銃が宙を舞う。

優先的に敵の武器だけを潰していく。


反射的に手を押さえた敵の懐へ、瞬が踏み込んだ。

刺突。

いつものように、アーマーの隙間を縫って貫通。

武器を失った敵は、そのまま崩れた。


だが、今回の敵は数が多い。

しかも、あくまで市民を狙う。


そんな中、小さな女の子が転んでしまい、避難に遅れた。


敵は容赦なく銃を向ける。


――撃つ。


しかし、連発する金属が裂ける音。

瞬が間に合った。


刀を置くように構えて、弾丸を斬っていた。

裂けた弾や逸れた弾は、そのまま後ろの壁に吸い込まれる。


「逃げろ!」


だが少女は恐怖で立てない。

そこへ、浦賀が手を伸ばし、強引にでも誘導した。


「…これが…噂に聞くフラッシュ…」


間近で一部始終を見ていた浦賀が呟いた。

黒縁の細い眼鏡が、僅かに光った。


「瞬!ダメだ!数が多すぎる!」


座愛のスプラッターキャノンはオーバーヒート寸前。

銃身が赤く染まり始めた。


「ああ、俺もヤバい!」


瞬のフラッシュも限界が近かった。

視界の中に赤い文字が走る。


『(!)基幹システム フラッシュ 強制排熱 準備段階(!)』


『瞬!聞こえますか!?』


その時、電子が通信で割って入ってきた。


「電子!今はヤバい!あとで――」


『下がってください!“緊急運用”の通知です!』


電子の声は明らかに焦っている。


『こちらに増援が来ますが…!反応は、Sランク1位!黒乃虚空くろのこくう、通称“ピリオド”です!!』


「なっ…!」


その瞬間、避難経路を示していた掲示が、文字表示へ切り替わる。

サイレンが追い打ちみたいに鳴った。


『Sランク1位 ピリオド 活動』

『Sランク1位 ピリオド 活動』


それを見た市民の1人が叫んだ。


「企業のSランク1位が来るぞ!助かった!!」


閉鎖されてるはずの航空路を使い、ヘリコプターが飛来した。


機体の横には

『(!)緊急運用 Sランク1位(!)』

のホログラムが浮いている。


横扉が開く。


――サイレンが鳴って地面へ影が落ちる。


そして中から“強化外骨格アーマー”を纏った男が現れた。

頭部まで覆うヘルメット。

目まで隠れている。


飛び降りた。


だが、着地の衝撃は無い。

それどころか、男は地面すれすれで止まり、そのまま宙に浮いた。


「あれが…Sランク1位…」


「はい。この街の頂点の1人とも言われる、Sランク1位、黒乃虚空。通称“ピリオド”です」


浦賀が少し遠い目をしながら言った。


敵の銃口が一斉にピリオドへ向く。


一斉掃射。


だが、効かない。

火花が散るだけで、1発もアーマーを貫通しない。


「…その程度か」


ピリオドが吐き捨てる。


そして彼は、さらに高く浮き上がった。

2m…3m……そして、5mはある。


そこから、手を動かす。


何もないはずの両脇で、マズルフラッシュだけが走った。


次の瞬間。

乾いた銃声。


だが、銃は見えない。


見えない位置から撃たれた銃弾が、敵を次々と撃ち抜いていく。


それも、容易くアーマーを貫通している。

まるで紙みたいに敵は崩れ落ちた。


「こんな、バカなことが…」


遮蔽物に残った外敵が銃を構えた。

そして、ピリオド向け――連射。


だが、ただひたすらに表面に火花が走るだけ。

アーマーに当たった弾は弾ける。

キラキラと、光の線を無数に描きながら散っていく。


そして、ピリオドがまた浮きながら位置を変える。

遮蔽物を無視して回り込んだ。


すると、両手を広げ、脇の何もない空間から弾の雨が降る。


最後に残った敵も紙くずのように舞い、崩れ落ちた。


「おいおい、ガチの超能力者かよ…」


戦闘でボロボロになった瞬が、呆然と見上げた。


対照的に、群衆はヒーローを見るような目で空を見上げる。


「ピリオド様!外敵に永遠の死を!!」


「ピリオド!」


「ピリオド!ピリオド!」


制圧は一瞬だった。


瞬と座愛が死に物狂いで抑えていた戦場を、ピリオドはほぼ無傷のまま塗り替えていった。


「おい、サムライ」


ピリオドが瞬へ視線を向けて呼びかけた。


「お前が件のフラッシュとスピードー持ちか。完全には使いこなせていないな」


それだけ言うと、ピリオドはふわりと浮き、空中で待機してるヘリに戻っていった。

そのヘリも撤収した。

サイレンが遠ざかる。


これで任務は終わった。


――しばらくして、瞬の端末にも任務完了を認める表示が来た。

回収班も来た。


『任務 : 完了』

『報酬 : 支払い済み』

『功績 : 黒乃 虚空 (協力)』

『主担当 : 黒乃 虚空』


「ちっ…」


瞬は表示を見て、小さく舌打ちした。


悔しかったのは功績だけじゃない。

自分たちが死ぬ気で食い止めた戦場を、頂点は一瞬で塗り替えていった。


そこに、浦賀の後ろ姿の脚が僅かに震えているのが見えた。


通常とは違う大きい端末。

その画面が、後ろからでも少し読めた。


『非常時措置 : 権限変更検討』


浦賀の指先が止まる。


「…まさか」


だが、次の瞬間には事務的な顔へ戻っていた。


「閃野瞬」


浦賀が向き直って瞬に話しかける。


「駅周辺は引き続き警戒状態です。解散はできません。…それと」


「それと?」


瞬が尋ねた。


「――貴方には明日、バーチャル戦闘空間で特別適正審査を受けてもらいます」


読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、次話も読んでいただけると嬉しいです。

感想・ブックマーク・評価、とても励みになります。


次回更新は平日19:20を予定しております。

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