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閃光の瞬  作者: KK9996
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第3話 相棒との邂逅と足元の罠

企業都市で、借金を背負った剣士が日本刀と知略で成り上がっていくSFバトルものです。

テンポと引きを重視して書いています。

少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

『――緊急要請、外敵侵攻の可能性!第4地区。初動制圧。早い者勝ちです!』


ロビーで電子が端末を見ながら少し慌てた声を上げた。

おかっぱには寝癖が少し残っている。


電子もこのアパートに部屋を買った。


最初の戦いの翌朝だった。

ぐっすり眠っていたせいで、もう10時だった。


『外敵相手の初動対応なので、成功すれば結構デカいですよ!…あ、少し言葉が荒いですね…』


「第4地区の…夜桜市場。あのデカい市場か。路地を突っ切って行けば遠くはないな」


瞬は自分の端末を確認して、即座に『はい』を選んだ。


洗面台に駆け寄り、蛇口を一気にひねった。

冷水で顔を軽く洗い、前の晩に買ったコーラを冷蔵庫から取り出した。

冷えていた。

頭が一気に起きる。


愛用の日本刀を手に取った。

頭はボサボサだが、軽く押さえるだけで髪はすぐに整った。


エレベーターを降りた。


「親分。お仕事ですか」


ギャングたちがロビーを清掃していた。

更生したのかもしれないが、動きが妙に揃っていて少し怖い。


「ああ、急ぎの仕事だ!お前たち、頼むから大人しくして、特に一般市民には手を出すなよ」


そして、瞬と電子は走り出した。

ただ、電子はそんなに体力がある方ではない。

遅れた。


「電子は無茶するな!現場で落ち合えればそれでいい!」


「はぁ…はぁ…!わかりました!」


瞬は走った。

電子はその場で足を止め、息を整えた。


「瞬もあまり無理をしないで!」


――ここは企業都市・ヒートシンク。

規則正しく並んだビル群は、まるで巨大な機械の放熱板みたいだった。

だから、この街はそう呼ばれている。


上には幾重もの高架橋。

下には渋滞と排気ガス。

その中央、高層ビル群の頂には、都市防衛の象徴――巨大レールキャノン“ヤマト”が構えていた。


…市場とは逆へ逃げる人波が見えた。

肩がぶつかりそうになった。

左脇の刀を少し引っ込めた。

その脇を“治安調整部隊”――パトロールの車両が渋滞を縫うように走っていった。


――悲鳴。

――硝煙の匂い。


近い。


現場に着くと、普段の混沌がまだ平和に思えるほどの異常が広がっていた。

倒れた市民。

空の薬莢。

破壊されたドローン。

ぐちゃぐちゃになった市場。

泣いている子供。

血が滲む腹を押さえているパトロール隊員。


その中心に、いた。

治安調整部隊と同じ装備。

だが違う。


ヘルメットのバイザーが赤く光っている。

本物のパトロールのヘルメットに、そんな赤い光はついてない。


そんな赤バイザーの外敵が、12人ほど。

歩調も、一挙手一投足も、妙に揃っている。

銃を乱射し、民間人と部隊員を撃っていた。


「…治安調整部隊の格好をして侵入したのか!」


瞬が刀を抜き、構えた。

それを見たパトロール隊員が叫ぶ。


「刀…?登録傭兵の援護が来たぞ!負傷した隊員は下がれ!」


それを合図に、瞬が一気に踏み込んだ。

足に力を溜め、爆発させるように前へ出た。

刺突。


1人。


倒れた。


だが、それで終わらない。

すぐに銃口が一斉に瞬へ向く。


アサルトライフルの連射の雨。


フラッシュは最大出力で発動していた。


――弾が見える。

――いや、見えるというより、来る場所が分かる。


刀を斜めに構え、空中に置くように。

次は真っ直ぐ。

次は横に。

そうやって、信じられない速さで銃弾を捌く。

割れた弾は後ろへ流れ、壁を削り、ついには崩した。


リロードに入る瞬間を逃さず、また踏み込む。

刺突。


2人目。

3人目。


ここでようやく、パトロールの隊員が呟いた。


「すごい…これが、企業の傭兵…」


だが、瞬は忘れていた。


頭の奥が焼けるように熱くなる。


視界の中に、赤い文字が走る。


その時だった。

さっきまで分かっていた弾道が、一瞬だけ霞んだ。


『(!)基幹システム フラッシュ オーバーヒート(!)』

『(!)強制排熱開始(!)』


「しまった!」


その瞬間、首の後ろの排熱孔が開き、熱を帯びた蒸気が吹き出した。


排熱が終わるまで、あの超反応は戻らない。


パトロール隊員が、物陰から必死に拳銃を撃った。

だが、敵の防弾チョッキと皮膚アーマーは硬く、ほぼ通らない。


敵の銃口が一気に瞬を捉える。


――避けきれない。


その時だった。


ダン、ダン、ダン、ダン、ダン!


重く、鈍い銃声。

向かいの壁に、内側から穴が穿たれていく。

ひびが走る。

砕ける。

倒れる。


その中から、昨日のバーで会った“黒髪ストレートのスワローテイル姿の女”が現れる。

背中から巨大な4本の鉄の脚。


空中でいびつな曲線を描くそれは、最終的に地面を噛む。

それを背中から生やし、女は瓦礫の中に立っていた。


「最短ルートとして、壁を壊し続けて来たけど、正解だったかな」

「…あ、サムライじゃん!ピンチみたいだね!協力するよ!」


女が銃を構える。

ベルト給弾なのに小柄な銃だ。

だが、吐き出す火は鈍く重い。


ダン、ダン、ダン、ダン、ダン!


通常のアサルトライフルや自動小銃とも違う。

重い連射。

連射というより、連続爆発だった。


普通の弾なら何十発も耐える防弾チョッキと皮膚アーマーが、3発も持たなかった。


1発目で装甲が砕け、破片が飛ぶ。

2発目で体勢が崩れる。

3発目で、もう立っていられなかった。


しかし、敵の反撃で女も銃弾を受けた。

だが、ビクともしない。

それどころか、自分のアーマーに刺さった弾を摘まみ、敵に見せた。


「7.62なんかこのアーマーには通らないよ!こっちは50口径だ!」


そうしてる間に、瞬の排熱が終わった。


「助かったよ、女!」


女はニヤリと笑った。


「それじゃ、共闘と行こう」


瞬が頷くと、女は再びその銃を掃射し始めた。


50口径弾を喰らえば、1発では即死とはいかなくても、反動だけで十分に体勢が崩れる。


そのうちの1発が敵の頭に当たった。


キン!


…敵は倒れずに頭を押さえよろめく。


「ちっ、骨格コート入りか」


だが、よろけた相手など、瞬にとっては人形も同然だった。


踏み込み、刺突。

一撃で終わった。


だが、その時。


「…ショットガン!?あれはまずい!この都市じゃ廃れたが、俺には効く!」


敵の1人がショットガンを持っていた。

湿った音と共に撃ち、コッキングしながらじりじりと距離を詰めてきた。


瞬はパトロールの車のドアを刀で斬り、その内装部分を持って即席の盾にする。


そのまま押し込む。

ドアごと敵を地面に押しつける。


最後はその上から刀を刺した。


ドアの向こうに血が広がり、敵は動かなくなった。


…こうして、残る敵は1人。


「敵が強い。応援を要請する。場所はGPSで確認せよ」


最後の1人が機械的な声で無線に呼びかける。


「まだ来るのか?」


瞬がそう言うより早く、女が無線ごとその銃で吹き飛ばした。


ダン、ダン、ダン、ダン!


4発。


「くそっ、少し遅かった!」


「増援が来るな。備えろ」


だが、その時だった。


瞬の目が、路肩に停まったパトロールの車2台へ向く。


瞬の中で、ひとつに繋がった。


――はっ。


「治安調整部隊のパトロールカーが2台…そうだ、これを使えば…」

「何人来ようが一瞬で制圧できるかもしれない」

「急いで言う通り準備してくれ!」


瞬が現場の隊員に短く指示を飛ばす。

隊員たちはすぐに動き出した。


「電子!もう着いてるよな!?」


「はい!」


野次馬と治安調整部隊員の隙間から、寝癖付きのゴスロリのおかっぱ頭がニュルっと現れた。


「外敵とは言っても、この型の車はハックして遠隔操作できるよな?」


「もちろんです!でも、時間はかかるし、現物がないと不可能です!」

「増援が降りる前にやれって話なら、さすがに無理です!」


瞬は首を振る。


「降りた後でいい。ただ、退かせればそれでいい」


そう言ってる間に増援が来た。

同型の車両3台。


そこから敵が降りる。

6人ずつの計18人。


「これを一瞬で制圧できると?」


女は少し眉を上げる。


「できるさ」


瞬には自信があった。


敵の赤いバイザーが一斉に光る。


「戦闘モード起動。任務開始」


そして銃口が上がる。

動きは妙に揃っている。


「電子!その車両3台をどかせ!」


「わかりました!」


電子が自分の端末に高速で入力する。

画面に『完了』の文字が出た。

その端末を、敵が乗ってきた3台へ向けた。


「送信…完了!車体をどかします!」


敵の車は無人のまま急発進し、壁へ突っ込んでいった。


「…車をどけたところでなんだというのだ」


敵は、古いアンドロイドみたいに平然としている。


それに対して、瞬はニヤリと笑った。


「今だパトロール!車を発進させろ!」


そこへ、別位置に待機していたパトロールカー2台が並んで急発進した。


車と車の間には、ワイヤーが張られている。


「バカな」


気づいた時には遅かった。


張り詰めたワイヤーが、敵の足元をまとめて掬う。

絶妙な高さ。

飛び越えるにも、潜るにも、もう遅い。

それに、飛び越えるのは不可能。

潜れば体勢を崩す。

どっちにしても、無理だった。


次々と敵が転倒した。


「チャンスだ!全員かかれ!」


「へぇ…ただの脳筋サムライってわけじゃないのか」


倒れた敵兵に、女は容赦なく銃弾の雨を降らせた。

連なった弾丸が揺れる。

積み上がる薬莢。


地元のパトロール隊員も、ありったけの銃弾を叩き込む。

壁が裂け、地面が抉れ、火花と破片と埃が舞った。


やがて銃声が止む。


一瞬、騒めきが煙の中を揺らした。


その時だった。


「…まだ、活動できる」


敵の1人が煙の中から立ち上がった。

無線に手を伸ばしている。


「まずい!“スプラッターキャノン”、オーバーヒートだ!撃てない!」


女の銃は、銃身が真っ赤になり、蒸気を上げていた。


だが、瞬の刀は生きている。


最後の敵が、無線から手を戻し、瞬へ銃口を向ける。

連射。


しかし、フラッシュは起動していた。


飛んでくる弾が見える。

いや、わかる。

刀を斜めに置く。

火花。

金属音。

これらが連続して地面に落ちる。


裂けた銃弾は全部、後ろの壁に穴を開けていく。

そして、敵のマガジンが空になった。


その隙を、瞬は逃さない。


溜めていた脚の力を一気に爆発させる。

土埃が舞う。


一瞬で距離が詰まる。


刺突。


短く、深い。

皮膚アーマーの隙間を刀が通る。


敵の体が一瞬だけ痺れ、すぐに力が抜けた。

まずは銃が落ち、体は膝から崩れた。


瞬は刀を抜き、鞘に収める。

カチン、と金具の音。


「やりましたよ!瞬!大手柄です!」


寝癖付きのおかっぱ頭が、ゴスロリのフリルごと跳ねた。


それを見ていたパトロール隊員が呟く。


「これが、企業傭兵の戦いか…」


参加していたパトロールの部隊員も驚きながら喜んでいた。

それでも、瞬を見る目には少しだけ怯えが混じっていた。


「…さて、今回も無事に終わったから、クリア報告しないとな」


瞬が自分の端末を開き、『任務完了』を送信した。


ほぼ、その直後だった。

即座に “回収班”がやってきた。

待機していたかのように速い。


そして彼らは、敵兵をスキャンすらせず、荷物みたいに運び出し始めた。


「…おいおい。企業都市とはいえ、ひどいもんだな」


「…回収というより、処分ですね」


――しばらくして、瞬の端末に返信が来た。


『任務 : 完了』

『報酬 : 支払い済み』

『功績 : 審査中』

『主担当 : 審査中』


それを見て、瞬は眉をひそめる。


「…功績や担当が審査中って…俺とあの女じゃないのか?」


「今回は地元のパトロールも出ましたし、報酬が出たのならあまり気にしてもしょうがないですよ」


電子がそうなだめた。


「まぁ、そうだな」


――瞬の刀がカチャリと音を立てた。


「なぁ」


銃の女が声をかけてくる。


「私とあんた、いい感じだと思うんだ。組まないか?」


背中の4本の蜘蛛脚は折り畳まれ、格納されていた。

今は、礼服姿の美少女にしか見えない。


「わかった」


瞬は即答した。

電子も嬉しそうだ。


「座愛。善名座愛ぜんなざあだ。よろしく」


女が手を差し出す。

銃を扱うとは思えないほど柔らかい手だった。


そこに瞬は、傷だらけで所々変色した手を握り返す。


「瞬。閃野 瞬」

「特技は刀。好きなものは甘いコーヒーとコーラ」

「ちなみに、苦手なものは蜘蛛と銃だ」


「あちゃー…そりゃ残念だね。どっちも私そのものだよ」


こうして、瞬の隣には新しい相棒が立つことになった。


――その頃。


回収班の輸送車は、すでに第4地区を離れていた。


だが、その行き先は、端末にも、どのネットワークにも、一切記録されていなかった。

読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、次話も読んでいただけると嬉しいです。

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