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閃光の瞬  作者: KK9996
17/22

第16話 難しい戦場とオーバークロック

企業都市で、借金を背負った剣士が日本刀と知略で成り上がっていくSFバトルものです。

テンポと引きを重視して書いています。

少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

「――時間がないのでかなり要約します!」


電子が声を震わせた。


「第5地区の配給センターが外敵に襲われています!このすぐ近くです!さっきのヤマカ堂の先です!」


それを聞くなり、瞬は端末を開いた。

報酬も見ずに受諾する。


瞬は山積みの栄養バーから一本ひっつかみ、袋を破ってそのまま齧った。

バリバリと噛み砕き、コーラで流し込む。


「よし、補給完了!みんなはいいか!?」


瞬がそう言うと、全員が頷く。

そして、全員が車に駆け込むように乗る。


「今回はかなり厄介です!食料配給中の配給センターが襲われてます!」

「…一般市民への被害が心配されます」


電子が震えるように言った。

それを受けて瞬が答える。


「ああ、いつも通りにはいかないな!」


車のエンジンをかける。

タイヤがガレージのコンクリを空転し、キュルキュルと焦げた匂いを残した。

歩行者がいないのを確認すると、瞬はそのまま少し滑らせるように車を外へ出した。


さっきも引っかかった検問がある。


「傭兵だ!急ぎの任務中だから通せ!」


そんな瞬の圧に押されて、検問の警備員もライフルを下げる。


今度はタイヤがアスファルトを蹴り、太いタイヤ痕と焦げの匂いをそこに残す。


「やっぱり、Sランクになったら“瞬・ザ・スピード”がいいよ」


座愛がシートに押し付けられながら言った。

しかし、瞬はどこか不満気だ。


「…なんか違くね!?」


配給センターが近い。

走っても近いから、車で来ると本当にあっという間だ。

到着した。


ピュン!ガリガリ…


車の前方から音。

弾丸の音だ。

撃たれている。

弾丸が風を切り裂く音、車体に当たり身を散らす音。


しかし、この車は前の持ち主…防御力を信念にしていた旗中はたなかが特殊カスタムした防弾仕様。

普通の弾では、“当たった音が聞こえるだけ”で、傷すらつかない。


「でも、まずいな…」


瞬がため息を漏らした。

座愛も同じだった。


「ああ、ここまでとは…」


いちばん面倒な形になっていた。


敵は3人。

いつものように、パトロールを装っていた。

たった3人。

だからこそ市民は、まだ“すぐに誰かがなんとかしてくれる”と思っていた。


なので、市民は逃げず、遮蔽物に隠れて身を守り、傭兵の到着を待っている。

傭兵が来たら、鎮圧してくれて、配給は受け取れる。

そんな考えを誰もが持ってしまっていた。


だから、瞬たちには逆に戦いにくい。

守る対象が多すぎる。

瞬と座愛が車から飛び出す。


「座愛!この状況はヤバい!スプラッターキャノンですぐに落とせ!」


「だから、簡単に言ってくれる…」


座愛が背中から蜘蛛脚を展開し、地面に爪を立て、スプラッターキャノンから重い連射を繰り出す。


ダン、ダン、ダン、ダン、ダン!


狙いは前より明らかに鋭い。

腹のど真ん中、同じ一点を撃ち抜いている。

…だが。


「まさか…また特殊アーマーかよ!どうなってんだ!そんな簡単に入れられるもんじゃないだろ!」


敵はまだ立っている。

防弾チョッキは抜いている。

だが、その下の特殊アーマーまでは抜けない。

旗中と同じ、特殊繊維強化皮膚アーマーだ。


瞬が推測する。


「もしかして、例の人造人間ってやつか?」


「くそっ、なら仕方ない!本来なら狙いにくいが…ヘッドショットを狙う!」


座愛が狙いを胴体から頭に切り替える。

しかし、それでも強化されたヘルメットや骨格コートは貫通しない。

ただ、敵は衝撃で一時的によろめくだけ。


“…量産の.50じゃ、そのうち通らなくなる”


「はっ…!」


座愛に、あの時の江田の言葉がよぎった。

これを見ていた瞬が前に出る。


「くそっ、座愛でもダメか!俺がいく!援護してくれ!」


瞬が、童子切安綱を抜き、その美しい輝きで一瞬、場が焼かれる。


「こいつなら通る!」


足に力を溜める。

そして、その力を爆発させ、地面を蹴る。

地面に散らばっていた配給パックが宙を舞う。

飛ぶように、真っ直ぐに敵兵に向かう。


――刺突。


特殊繊維入り皮膚アーマーも、何もないかのように、刃が入っていく。


童子切安綱は、何もないように裂いた。

刀の向こうで、敵が力尽きるのが分かる。


その時。


パァン!


背後から乾いた銃声。


「なっ…!」


瞬はフラッシュで反応し、間一髪避ける。


敵襲の混乱に乗じて、物資を奪いに来たギャングだ。


「配給センターが荒らし放題だ!今なら奪いまくれる!」


ギャング達は震えながら、瞬や敵に向かい、銃を乱射し始めた。

これを見た瞬が、身を隠す。


「まずい!」


後ろにも市民がうずくまっていた。

いつものように弾を切れば、その先へいる市民へ流れるかもしれない。


「座愛!後ろにもいる!」


「ああ、分かってる!武器だけ落とす!」


そう言うと、座愛はギャングの銃だけを正確に撃ち落とした。

銃から破片が飛び、手は反動で痛む。


反射的に手を押さえ、すぐに状況を理解し、逃げるように撤退する。


これを見ていた瞬が唸る。


「さすがだ、座愛!」

「…電子!あい!手を貸してくれ!市民に避難誘導を!」


避難ルートを示すインディケーターは、敵にほとんど壊されていた。

もう、人が声で導くしかない。


座愛が1人をスプラッターキャノンの反動で、はりつけている。

そして、瞬がもう1人に刀を向け、動けない状態を作る。

その間に電子とあいが出てきて、市民の手を取る。


「ほら、こっちです!」


スプラッターキャノンの轟音の中、頭を低くして市民を誘導していると、市民の1人が言い出した。


「…ピリオドは!?ピリオドがくればなんとかなる!」


「そうだ!ピリオドが来れば!」


その声は、たちまち周囲へ広がった。

それに、瞬は言葉を詰まらせる。


「なっ…ピリオドは……」


そんな時、1人、手製のピリオドの旗をもった青年が飛び出してきた。


「そうだ、ピリオドなら!ピリオドが来れば!」


そんな青年に、1発の弾丸が放たれた。


「え…」


その弾丸は、まだ他にもいた別勢力のギャングが放った。


「…物資は俺たちのものだ!」


ギャングはもう混乱しきっていた。

動くものを見たら、とにかく撃つ。


「なっ…」


瞬が敵を背にして青年の元へ駆け寄る。

駆け寄る途中で、そのギャングの銃を銃身ごと斬り落とす。


ギャングは腰を抜かして遮蔽物へ逃げる。

その間、座愛はスプラッターキャノンの連射で2人をその場に縫い止めていた。


瞬が叫ぶ。


「電子!あい!この人を!」


電子とあいが青年の肩を持ち、引きずるように退避させる。


「気絶しているだけだ!安全な場所へ!」


その時、スプラッターキャノンがオーバーヒートする。

バレルを太くしたとはいえ、こう連射が続くとさすがに耐えられない。


「瞬!そろそろヤバい!バレル交換して連射を続けるか!?」


「いや、いい!状況は作れた!」


動けなくなっている敵。

安全な場所へ避難した市民。

今なら踏み込み一閃でカタがつく。


遠い…遠いが、踏み込み、もう一度踏み込む。

敵が近づく。

距離が詰まる。

もう懐。


腕を伸ばし、刺突。

それを素早く引き抜き、最後の敵へ向かい腕と刀を伸ばす。


届いた。


童子切安綱の刃は特殊アーマーも貫通する。

刀の先で、敵の体が力を失うのを確認する。


「通った!」


敵がその場に崩れ落ちた。


すると、パトロールがやってきた。

銃こそ持っているが、市民に手を貸している。

……本物だ。


「……遅いっての」


座愛がボソリと呟いた。


「まぁ、いいじゃないか。済んだことだ」


瞬がそう言って、刀を鞘に戻すと軽い拍手が起こった。

そして、元はあったであろう列が形を戻しつつある。


女がひとり、列から離れて近づいてきた。

そして瞬に尋ねる。


「ねぇ、傭兵さん…だよね?名前は?」


「…Aランク2位、閃野瞬」


「ありがとう、Aランクの瞬さん」


女はそう言うと、配給センターの方に向かう。

…もう、何事もなかったかのように、配給センターへ並ぶ列が直っていた。


「…さすがヒートシンクの住人…これくらいじゃへこたれないってか」


瞬がそう言うと、電子が近寄ってきた。


「瞬、それより…」


端末の方に目をやる。

達成報告だ。

だが。


「ああ、多分…」


「また持っていかれますよね」


――しばらくして、返答があった。


『任務 : 完了』

『報酬 : 支払い済み』

『功績 : 未確定』

『主担当 : 未確定』


「…だよな」


瞬が呟く中、電子がまた右手の端末からケーブルを伸ばす。


「瞬!そのログも、電子がもらいます!」

「これだけ功績を奪われて、もう黙ってられません!なんのつもりなのか…またフォースマンを使います!」


――4人はそのままアパートへ引き返した。

分析は急ぐ。

真っ直ぐ電子の部屋へ向かう。


電子の部屋の巨大端末、フォースマンの画面の明かりが4人を照らす。


「…それで、電子、今回は何をするんだ?」


「フォースマンをオーバークロックさせます!…もう壊れる前提です。でも、ほんの一瞬なら“忍城おしじょうビル”の端末に食い込めます」

「ピリオドが実権を握って、どこかから私たちの功績を奪ってるなら、何か決定的なヒントはあの不気味なビルにしかありません!」


電子がキーボードを叩きながら続ける。


「さすがにピリオドの個人端末までは特定できません…!」

「個人端末を見つけたとしても、証拠は消しているかもしれません」

「でも、忍城ビルの端末なら違います。大切なログが、あそこには山ほどあるはずです!」


そう言うと、電子は端末根本にある「押すな!」の文字が貼られたボタンを強く押す。


それを見たあいが言った。


「あ、そのボタン、押してみたいと思ってた…」


途端、フォースマンの画面に表示される無数のポップアップ。

一際大きいそれが目に入る。


『(!)オーバークロック(!)』

『(!)冷却してください(!)』


ファンが唸り、冷却水が沸騰しはじめた。

それを無視して、電子がキーボードで文字を入力する。

…狂ったように。


焦げたような匂いが立ち始める。


「フォースマン!頼みます!私に、一瞬でもいいから中央アクセス権を!!」


『(!)CPU 耐熱限界接近(!)』

『(!)オーバークロックを停止してください(!)』


「ファイアウォール突破!忍城ビルの端末にアクセスできました!あとは証拠になるようなログがあれば!」


フォースマンが震え出す。


「表層ログはほとんど削除されています」

「でも、承認系の最終ログだけは残るはずです!そこまで消したら、システム自体が破綻します!」

「絞るなら深層…承認ログ…ありました!」


冷却はもう追いついていない。


「あった!見つけた!“Sランク1位 最終ログ”!!」


電子がそれを見つけるなり、左手で叩くように開いた。

だが、向こうも簡単には渡さない。


「バレた!?…ログが消されていく!いや、見えないようにされている!?とにかく急いでバックアップを取ります!」


電子が個人端末からケーブルを伸ばし、フォースマンに刺す。


『データ移行…5%』


焦っていた。

ダウンロードさえ済めば閲覧はできる。

電子の焦りと連動するように、進捗ゲージは一気に進む。


『データ移行…79%』


「間に合え!間に合え!」


やがて、進捗ゲージは全て埋まった。

しかし、同時にフォースマンの熱も限界点を超えていた。


『データ移行…100%』


その時、フォースマンの画面に表示が出る。


『CPU 耐熱限界 突破』

『Good Bye , Denko』


音を立てて、フォースマンの電源が落ちた。

途端、部屋が真っ暗になる。

基盤の焦げた匂いだけが残った。

…電子の個人端末の画面だけが4人をなんとか照らす。


「…フォースマン…無駄にはしません…」


「電子…」


「…フォースマン、美しい最期だったな」


全員で電子を見た。

電子は泣いてはいない。


「…見つけました。忍城ビル端末から盗んだ最終ログです」

「見てください。『都市制圧手順』『黒乃虚空』…最終命令待機『忍城ビル』」


『再署名 : 待機』

『緊急時放送 : 待機』

『鎮圧ユニット : 待機』

『都市制圧手順 : 準備完了』

『最終承認 : Sランク1位 黒乃 虚空』

『最終命令待機場 : 忍城ビル』


電子がバックアップを取り、閲覧可能になったログを表示した個人端末を3人へ突き出した。


「やはり…そうか…!」


「ええ、確定です」


「“都市制圧手順”と“Sランク1位”、そして、忍城ビル…」


電子が続けた。


「――つまり、Sランク1位、ピリオドは、都市を乗っ取る。そして、その最終命令は、忍城ビルで行われる…!」


読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、次話も読んでいただけると嬉しいです。

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