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閃光の瞬  作者: KK9996
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第15話 揺らぐ日常と暴かれた全地区制御計画

企業都市で、借金を背負った剣士が日本刀と知略で成り上がっていくSFバトルものです。

テンポと引きを重視して書いています。

少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

『――本日未明、都市警備局は外部勢力による武装干渉の可能性が高いとして、警戒レベルの段階的引き上げを発表しました』


ロビーのテレビが喋っている。


『これに伴い、主要道路での検問強化、一本橋の封鎖強化、屋上レールキャノン・ヤマトの発射体制の万全化、ならびに、重要インフラ施設周辺の立ち入り制限が順次実施されます』


『市民の皆様は、個人識別IDを準備のうえ、パトロール、および誘導表示にしたがってください』


テレビを見ていた瞬が、ふと呟いた。


「これだけ封鎖が増えると、配給が滞るな…」


「ああ、水や食い物、今のうちに買い足しておいたほうがいい」


座愛が提案した。


「買い物?なら私も行く!」


それに、あいが楽しそうに乗ってきた。


3人で車に乗る。

電子はまだ部屋でログを調べている。


アパートのガレージからS3500を出す。

イグニッションオンでV10ハイブリッドが泣くように吠えた。

アクセルを踏めば、車体はすぐに地面を蹴った。


少し進んだら…検問があった。


「マジかよ」


「ここまで検問が増えるもんか」


検問が瞬たちの車を止める。


「IDを見せてもらう」


それに、瞬と座愛は腕の端末を起動し、IDをスキャンさせる。


「登録傭兵。確認」


あいは端末を入れていない。


昔ながらのカード型IDを差し出す。

電子が“一般市民”として偽装して作ったものだった。


「一般市民。確認」


あいの偽装カード型IDも通る。

検問を抜けた。

検問の係員が、顎で「行っていいぞ」と合図する。

両手はライフルで塞がっていた。


その先に、行列があった。


「これって、配給の列?」


「ああ、そうらしい。いつもはスムーズなんだが、こうも検問が増えると、配給も滞るよな」


「…やはり、水と長持ちする食料を買おう」


量販店に着く。

食料品や生活に必要な日用雑貨を取り揃えている、“ヤマカ堂”だ。


ここも人の列だった。

店の前まで、人がぎっしり詰まっている。

その列に瞬たちも並ぶ。


「水とコーラ、1人1日3本まで、らしいよ」


メガネ越しに、あいが列の先頭の手書き看板を読んだ。


そんなあいに、座愛が尋ねる。


「あい、“あれ”も何個までか確認してね」


「あれって何だ?弾丸か?グレネードか?ヤマカ堂には元々売ってないぞ」

「あるのは、護身用のプラスチックの使い捨てピストルだ」


「…違うって。女子の話だよ。…もう、瞬ったら。デリカシーがない。だから、モテないんだぞ」


「…」


瞬が申し訳なさそうに顔を下げた。

沈黙が走り、頭上の企業広告の音が大きくなる。


『ブドウ糖タブレットで、賢くなろう!ブドウ糖は脳の栄養!!甘く、ホロホロ』

『口溶けもよし!ケミスタのブドウ糖タブレット、今すぐ手に入れ、周りの人を置いて行こう!』


『…個人端末なら、タイラ。最新モデル、タイラmk13。ハイスペック。超低負荷。互換性有り。クリニックにてインストール受け付け中』


その時だった。

無音になった。


ザザッ…。


ノイズが走る。

白い画面に揺れる文字だけが映る。

解像度が妙に低い。


『防衛速報』


『各地区 平常』


『防衛速報 終』


ザザッ。


「何今の…こわっ」


あいが少し驚いた。


「さっき列から聞こえてきたな。“不気味な速報が頻繁に流れる”って。これのことか」


そして、すぐにやかましい企業広告へと戻った。


…いつもの日常に、もうひびは入っていたのかもしれない。


店内に入る。

瞬たちの番だった。


「水とコーラ、1人1日3本までです!」


店員が拡声器で叫んでいた。

そこで、座愛が何かを見つけた。


「見て見て、瞬!栄養バーなら制限なく買えるよ。まだ山ほどある!」

「これなら、買い込んでも怒られなさそう!」


「本当だ」


瞬は、自分の身長より遥かに高く積まれた栄養バーの山に手を突っ込み、まとめて抱え出す。


こうして、瞬が水9本とコーラ9本、大量の栄養バーを手にして、車に乗り込む。

重いものは全部瞬が持ったが、余裕そうだった。


エンジンをかけると、車のテレビ付きナビゲーションシステムが起動する。


『バッテリーなら音速科研。7つのサステナブルな環境特性と、バッテリー性能の両立。さぁ、共に未来へ行こう。音速科研』


ザザッ…。


画面にノイズが走り、また無音になる。


『防衛速報』


『第3地区 外敵 活動』


『状況 制圧済み』


『防衛速報 終』


ザザッ。


「これ、何回見ても不気味だな」


「何回見ても、というか、何回も流れるから不気味…」


そんな座愛とあいに対して、瞬が言う。


「本当に都市に何か起こりかけてるのか?…帰ったら電子に聞いてみよう」

「何か掴んだかもしれない」


その時だった。


「いい車だな。マヌケ」

「その車と物資と…特に、女を寄越せ」


物資目当てのギャングが絡んできた。


駐車券を精算機に入れようと窓を開けた瞬間だった。


瞬には銃が向けられる。


「はぁ…」


瞬がため息を漏らした。

サイドブレーキを引き直し、その流れで助手席の座愛から左手で刀を受け取る。

そして、銃を向けられたまま車を降りる。


「もし、お前らが勝ったら、車と物資はやるよ。女は置いていけ。…置いていけるもんなら、だが」


「ヒュー!カッコイイー」


ギャングがそう言うと、3人で囲み銃を構える。


「その刀でこの状況、どうするってんだ?見せてくれよ、サムライちゃん」


そう言われて、瞬が刀を逆手で構える。

切先が下向きだ。

まだ鞘からは抜いていない。


「カッコつけたわりに、びびって刀も抜けねぇってか」


正面でショットガンを構えるギャングはそう言ってるが、後ろでハンドガンを構えてる2人は焦り始めていた。


「おい、ショットガン向けてもこの余裕って、おかしくないか…?」


「ああ、脚も全く震えてねぇ…」


3人目がなにか叫ぼうとした。

が、間に合わない。

正面の1人が、ショットガンの引き金に指をかける。


すると、瞬は動いた。

右手はほとんど使わず、左手で鞘を落とすように下げ、刃を滑らせる。


そのまま逆手で、ギャングのショットガンを銃身の根本から斬り落とした。


銃身がバラバラと音を立てて地面に崩れ落ちる。


「…うそだろ……銃身を斬った…?」


「や、やばいよこいつ!強いって!」


3人目が叫び直した。


すると、蜘蛛の子を散らすようにそれぞれが走り出す。


「ひっ…ごめんなさい!人違いでした!!」


「ふーん…」


これを見て、瞬はまた軽いため息。

刀を鞘に戻す。

カチン、と金具が鳴く。

何事もなかったかのように運転席に戻る。


「…済んだみたいだな。瞬!この栄養バー、意外と美味いぞ!」


「うぇ…もう終わったの?…すごい」


…その頃、車内では座愛とあいによる大試食会が始まっていた。


「それ、1本でも高カロリーだから食いすぎるなよ」


――こうして、数日分の予備の補給物資を手にして、瞬たちがアパートに帰り、瞬が荷物を解きながら言う。


「早速だが、電子の部屋に行ってみよう。何か掴んだかもしれない」


3人でエレベーターに乗り、電子の部屋の階で降りる。

電子の部屋をノックする。


「ロック解除しました。どうぞ」


電子が扉を開けた。

そこには、少しベタついてボサボサになったおかっぱ頭で、巨大端末のモニターに向かう電子がいた。


「…電子、あまり無理するなよ」


瞬が後ろから声をかけた。

電子が答える。


「半分は好きでやってますから、大丈夫です。それより…」


「それより?」


「私なりの“ある推測”が立ちました。聞きますか?」


3人は、即座に頷く。


「んんっ…では」


電子が椅子をクルリと回してこちらに向いた。

フォースマンの光が逆光になり、ゴスロリ姿に影ができて、少し怖い。


「少し、仮定も入ります。ですが、今ある断片を並べると、ひとつの“形”が浮かび上がってきます」

「これは、ピリオドが実権を握った、という前提で聞いてください」


電子がファイルを1つ、画面に提示して見せた。


「まず、ピリオドは私たちの功績ログに手を入れています」

「そして、府上駅と特別適正審査のさなかに中枢アクセス権を得ていました。…得ていたとします」

「その上で、この前拾ったログを覚えてますか?――鎮圧ユニット、再署名、緊急時放送」


この前集めたログ断片を表示して続ける。


「これは誰か1人を狙った準備じゃありません。都市全体にかけるためのものです」

「…鎮圧ユニットは、従わないものを物理的に押さえるもの、緊急時放送は、都市への一斉通達手段。そして、再署名は…契約を置き換えるもの――」


その時だった。

フォースマンの画面が音もなく切り替わる。

背後の光の気配に気付いて電子も振り返る。


『再署名プロトコル』

『対象 : 全地区』

『対象人口 : 2,543,466人』

『状態 : 待機』


「っ…!」


電子が証拠を確保すべくキーボードを叩く。

すると、画面はログ解析画面に戻ってしまった。


『閲覧権限外』


「電子、今のは!?」


座愛が電子に質問を投げかけた。


「フォースマンの自動相関解析が勝手に“答え”に触れました」

「今のは…中枢で契約を置き換える準備をしていることを示しています」

「そして、それを見ていただろう“中枢”から、ウインドウごと証拠が消されました」


電子が答えた。


「ならここの場所もバレたのか?」


座愛が疑問を投げかけた。


「そうではありません。あくまで、フォースマンの解析を潰されただけです」


電子はすぐに否定した。

そして、瞬も見た物を確認する。


「で、その“再署名プロトコル”の対象が、このヒートシンクの住人全員か…」


「はい。それも、消されるということは、どうやら計画はもう始まっていると思われます」


3人が顔を寄せる。


「つまり、ピリオドは、放送と契約で都市の住人を縛る。従わない者には、外部で用意してる鎮圧ユニットを投入して押さえる…」

「そういう形で、都市を制御するつもりなのかもしれません」


電子が話し終えた。

その言葉で、瞬の脳裏に蘇った。


――血に汚れた口で語る黒乃核の言葉。


「…以前に討伐した黒乃核」

「あいつがピリオドの弟だとしたら、あの時あいつが伝えたかったことって…」


それを受けて、座愛が話し出す。


「…確かに、何か言ってたな。でも、本当にピリオドがそこまでやるって?何のために?どうやって?」


「それはまだ分かりません。…だから、今は可能性の話です。断片を集めて当てはめる、それが一番自然ではあります」

「でも…ピリオドは、都市ごと自分のものにする…」


電子が巨大端末に向き直った。

そして、瞬が唸る。


「都市ごと…だと?ピリオドのやつ、神様にでもなるつもりか!?」


「まだ、推測の話です。フォースマンいわく、ほぼ答えで間違いありませんが」


「あの…」


瞬の唸りと電子の返事を裂いたのは、意外にもあいだった。


「鎮圧ユニットって、来る場合は外郭から来るんだよね?」


「はい。都市内部には隠しきれないんでしょう」


――はっ。


その時、あいの表情が変わった。


「外郭から来る…つまり、必ず一本橋を通る……」

「そして、あの辺りは所有権の問題で、開発途中のまま放置されてる無人ビルが多いって噂…」


あいが頭を軽く抑えながら自分の中のアイデアを整理する。


「っ!電子!…ちょっと調べてほしいことがあるの!」


電子が聞き返す。


「どうしたんですか?」


「…私に考えがあるの。そのために、確認したいことと、手伝ってほしいことがある」


立ち上がったあいに対して、瞬が言う。


「…何か分からないが、条件が合えば対処できるのか?」


「…かもしれません。ただ、このまま一方的に押さえつけられて終わり、なんてことにはしたくなくて」


あいが、恐怖を殺して名乗りを上げた。


その時、電子の巨大端末が鋭く鳴った。


「瞬、緊急の依頼です!」


「そうらしいな」


瞬は、電子の巨大端末の脇に映っているテレビ放送へ目をやった。


「ほら」


そう言って指をさす。

解像度の低い不気味な画面が映っている。


ザザッ…。


『防衛速報』


『第5地区 外敵活動中』


『状況 継続中』


『防衛速報 終』


――ザザッ。


読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、次話も読んでいただけると嬉しいです。

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