表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
閃光の瞬  作者: KK9996
15/18

第14話 改竄ログに潜む影とSランク1位の正体

企業都市で、借金を背負った剣士が日本刀と知略で成り上がっていくSFバトルものです。

テンポと引きを重視して書いています。

少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

――電子の部屋に4人が集まっていた。


そんな中で、あいが瞬から借りた“童子切安綱どうじぎりやすつな”をそっと少しだけ抜く。


「うわぁ…本当に綺麗…」


電子の部屋に明かりはなかった。

巨大端末“フォースマン”の画面の明かりだけが辺りを照らしている。

電力はほとんど、こいつに吸われているのだろう。


そんな巨大端末の光が、童子切安綱の刃を輝かせる。


「…絶対に振り回すなよ。それは本当にヤバい。ここで振り回したら、確実に死人が出る」


座愛があいに念を押した。


あいは、少し震えて、うんうんと何度も頷き、少し抜いた刀を鞘に戻す。

怖くて全部出すことはできなかった。


カチンと金具が鳴る。


「…それで、電子、何か分かったか?」


瞬が電子の後ろから尋ねた。


「…監査フラグも、再集計も、全部同じ処理ルートを通っています」


「…要するに?」


「これ、分かりますか?」


電子が椅子をずらし、フォースマンの画面を3人に見せる。


「毎回同じ署名形式、同じ統合処理タグ、そして、主担当だけが不自然に置き換わってる…」


3人とも腑に落ちていなかった。

自然と、また電子の方へ視線が集まる。


「――簡単に言いますね」


声のトーンを落とす。


「記録そのものが書き換えられてます。結果だけじゃなくて、誰の功績か、まで」


「つまり…?」


座愛が聞き返した。


「誰かが意図的に功績を奪っている、ということです」

「その“誰か”を、今からログ断片を集めて特定しようとしていたところです」


それを聞いた座愛が腕を組んで考え込む。


「誰かが、私たちの功績を奪っていた…?何のために?」


その瞬間、電子がハッと顔を上げた。


「はっ!電子は脳がオーバーヒートしそうです!人工イチゴミルクで糖分を補給します!」


そう言うと、電子は一旦立ち去った。


「分かるぞ。頭使うと、糖分が欲しくなるよな」


瞬がそう言うと、座愛がツッコミを入れる。


「なら何か、積極的に糖分を摂らない私は脳筋だとでも」


言葉でツッコミを入れながら、手の方では得意の“優しいグリグリ”が始まっていた。


「あう…。固定砲台キャラなんてそんなもんだろ!」


「私は、アニメのキャラじゃない」


それを見ていたあいは、また思う。


(出た!瞬と座愛の夫婦漫才…)


瞬と座愛が夫婦漫才をしていると、あいがあるものに気付く。


「これ、なんだろ?」


あいが指をさす先には、巨大端末の本体。

正確には、本体脇に付いた赤いボタンだった。


…「押すな!」と手書きのテープが貼られている。

あいがそれを覗き込む。


「押すなって言われると、押したくなる…」


「やめておけ。自爆スイッチかなにかかもしれない」

「それに、このボタンで何かしらがこのフォースマンに起きたら、電子がキレる」


瞬が止めに入る。

あいも、さすがに本気で押すつもりまではなかった。


「えっ、あの電子もキレることってあるの?」


あいと座愛が驚いた。

そこに瞬が説明する。


「ああ、過去に一度だけ見たことがあるが、怖い」

「“普段怒らないやつほど怒ると怖い”の典型だ」


瞬が続ける。


「それはもう、地獄の業火を背にした鬼の如く…」


座愛とあいが興味津々で顔を寄せてくる。


そこに、電子が大量のコップを持って戻ってきた。

全部人工イチゴミルクだ。


「何話してたんですか?」


「…いや、電子ってコンピュータ弄るの得意だよなって。凄いよ」


「はい。努力しましたから」


電子が人工イチゴミルクの1つをグビグビと飲み干す。


「…ああ、スッキリした。さて、続きをやります。あ、みなさんの分もあります」


「うえっ、あのドロドロに甘いやつ?」


座愛が少し嫌そうにした。


電子はコップを乗せたトレーをあいに渡し、3人をどかして椅子に座った。

そして、そのままキーボードで何か入力し始めた。


「じゃ、少し待ってください」


3人はいったん電子の部屋を出た。

廊下で、渡された人工イチゴミルクを一気に飲む。

…異様に甘かった。


「…私の部屋、隣だよ。ここで少し待つ?」


あいが部屋を指差しながら言った。


瞬と座愛が初めてあいの部屋に入る。


そこは、電子の部屋の混沌とは別世界で、女の子らしく清潔に整えられていた。

照明も、優しい色の照明で適度に明るい。

あいが、瞬と座愛に椅子を差し出す。


そして、あいがベッドに座った。

そのベッドには、うさぎさんのぬいぐるみがある。


「…やっぱり、故郷が懐かしいって思うことがあるの?」


座愛が、そのうさぎさんを見て言った。


「…故郷でも、私は凡人だった。ヒートシンクの人に話しても、“面白い”って言われるような思い出なんて、何もないよ」

「ただ、毎日が普通の日常のまま、流れて消えていった感じ」


「でも…」


「でも?」


座愛が立ち上がり、あいに近づき、顔を向けて、優しく首を傾げた。


「でも、ヒートシンクに連れて来られて、瞬たちに助けられてから、止まってた人生が急に動き出したみたい」

「毎回、“生”を実感するような体験ばかり。でも、それでもいつも受け身で、何もできないのが…」


あいの手が震え出した。

そんなあいの手を座愛が取り、抱きしめて言う。


「…“何もできない”なんて言わないで。あいは“私たちの仲間”をやってるよ。他の人じゃ、代われないんだから」


あいは、また涙を見せた。


「ああ、刀の代わりは探せばいくらでもある。だが、仲間1人の代わりは…探しても見つからない」


瞬もあいに語りかけた。

それでも、あいは泣きじゃくりながら叫んだ。


「それでも、私は、…助けてくれるみんなの役に立ちたい!」


座愛がより強くあいを抱きしめ、頭を撫でた。


そこに、瞬がコーラを差し出した。

バッグの中に缶を常備していた。


「?」


戸惑うあい。


「仲間だろ?なら、乾杯だ」


可愛い顔をくしゃくしゃにしながら、あいはそれを受け取り、一口だけ飲んだ。


「そろそろ電子の部屋に戻ってみよう。何か掴んだかもしれない」


3人は電子の部屋に戻った。


電子の部屋は対照的にカオスの極み。

黒いパスタを床にぶち撒けたようなケーブルの山。

寝ることと端末を弄ることだけで成立しているような部屋だった。


「あ、瞬。ちょうどよかった」


電子が続ける。


「これを見てください。全部同じルートで“上書き”されてます。何か分かりますか?」


電子の端末に、見覚えのある記録が並ぶ。


「夜桜市場での敵鎮圧…府上駅の防衛…そして、今回の変電施設奪還です!」


「まさか!」


「そうです」


電子が頷いた。


「これらが全部同じ処理ルートです」


「まさか、“あれ”は全部最初から…?」


瞬が少し頭を抑えた。


そして思い出す。

どれも“功績”も“主担当”も、自分ではなかったことを。


――はっ。


「電子、誰かが、俺たちの功績を奪ってるって言うなら…そいつは何者だ!?」


瞬が慌てた。


「落ち着いてください。それを今から辿ってみせますから…」


電子が瞬を少しなだめながら言った。


「削除しきれなかった認証痕、統合運用タグ、中枢アクセス許可履歴…なんでもいい、集めて分析します!」

「頼みましたよ、フォースマン!」


電子がキーボードを打ちながら続ける。


「これは…普通の管理権限では届かない領域ですよ」

「それに、その権限は非常時措置でしか動きません。これを追うと…」


興奮気味の電子を見て、座愛がたまらず口を挟んだ。


「えーと、つまり?」


座愛が疑問に思う中、電子はある行を瞬に見せた。

文字が瞬の目を照らす。


『権限変更通知』

『非常時措置 : 中枢アクセス権付与』

『対象 : (検閲)』


その表示を見た瞬間、瞬と電子の脳裏に同じ光景がよぎった。


そう。

府上駅防衛翌日の特別適正審査時、依頼課・浦賀の端末に表示された“権限変更通知”“非常時措置 : 中枢アクセス権付与”


「あれの対象は…まさか!」


“…もう権限を持ったSランクですから”


瞬と電子は浦賀の言葉も思い出し、何かを半分確信していた。


その時だった。


『逆探知アクセスを検知』


フォースマンの画面にポップアップが表示された。


「おい電子、これは大丈夫なのか?」


瞬が即座に反応した。

電子が余裕を持って答える


「はい。偽のアカウントを何重にも保護して偽装してますから、これが破られたところで何も発覚しません…」


そう言いかけた電子の顔が一瞬で青くなった。


『逆探知プロトコル 強制シャットダウン実行』


その文字が出た瞬間、フォースマンがブラックアウトした。


「これ、偽のアカウントは飛ばされて本体のアドレスで抜かれてます!なんでバレた!?電子の正体には誰も近寄れないはずなのに!」


電子が珍しく焦る。

それほどまでに、相手は簡単じゃなかった。


フォースマンを再起動する。


そこで、電子はキーボードに素早く入力して何かを立ち上げた。


『フォースマン : 防衛モード起動』


「お…おい、電子…本当に大丈夫なの?」


座愛が思わず声をかけた。

すると電子は鬼を宿す。


「うるさい!黙れ!!…今やってます!」


左手でデスクを叩いた。

この異様な圧に、誰も口を挟めなくなった。


「こうなったら仕方ない!危険は覚悟でアクセスの速度が出る本命アカウントから直接行きます!」

「フォースマンが数秒だけ匿名性を守ってくれる!それまでにアクセスを切れなかったら、たぶん敵がここに押し寄せます!…覚悟は!?」


電子の問いに瞬が答える。


「…あ、ああ。頼む」


『防衛モード : 残り10秒』


電子が狂ったようにキーボードを打ち始めた。


「ログ…ログを!中枢アクセス権を誰が得たのか…」


無数のポップアップが出る。

中には(!)の付いた、いかにも危険なものも見える。


瞬たちは電子の圧に押され、見守るしかなかった。


『防衛モード : 残り3秒』


「来た!個人コード入手!!強制脱出!!」


『防衛モード : 残り1秒(成功)』


電子が何かを掴んで画面に表示してみせた。

汗をかいていた。


「…掴みました!個人認証コードが来ます。個人認証コード : 07147014」


「…で、それは誰か分かるか?」


瞬の刀が鳴った。

電子が静かに、唸るように言う。


「…Sランク1位、黒乃 虚空。“ピリオド”です」


「…やっぱり」


その場の空気が、ひとつの結論へ収束した。

それと同時に、新しい疑問が湧いてくる。


「…ピリオドが俺たちの功績を奪って、かなり大きな権限も得て、都市のシステムにも深く手を突っ込んでる?…なぜだ?」


視線が一斉に電子へ集まった。

だが。


「…電子にはさっぱり分かりません。ただ…」


言葉が詰まった電子に、座愛が代わって続ける。


「だが、あいつがクロで、この騒ぎの大元なのはわかった」


「――はい、名前は割れました。次は、何を企んでいるのか、中身と証拠です。ここからが本当の勝負です」

「――ですが、もう戻れませんよ。これは本当の戦争になります」


読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、次話も読んでいただけると嬉しいです。

感想・ブックマーク・評価、とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ