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閃光の瞬  作者: KK9996
12/18

第11話 粉に潜む罠と逆転の一斉掃射

企業都市で、借金を背負った剣士が日本刀と知略で成り上がっていくSFバトルものです。

テンポと引きを重視して書いています。

少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

「――ぱぁん!……ふっ、私の敵じゃないな」


あいが、売り物のハンドガンで遊んでいる。

ここは武器屋。

だが、売り物の銃には弾は入ってない。

誤射の心配はなかった。


「あい、それは売り物ですよ!それに、オモチャじゃありません!」


電子がそれを、恥ずかしそうに止めようとしている。


「わかってるけど、ついやっちゃうじゃん」


あいはまだはしゃいでいる。


そこへ、座愛が入ってくる。


「セミオートの小型ピストルなんて、この都市じゃ護身用品にもならないよ」

「ほら、撃つならせめてこれ。EE44。大口径のハンドガンだよ」


「お、おう…」


座愛の本気のアドバイスにあいが少し引く。


「そして、銃はこうやって両手をしっかり添えて、効き手でトリガーを持って、効き目で照準器を覗くんだ。そう」


撃ち方の次はリロードを教えた。


「アサルトライフルの弾倉の交換は、そこを引っ張って…そうそう。最後にこのレバーを引けば、発射可能。今は弾が入ってないけど」


この前、瞬に教えた時のように、座愛はあいの後ろに周り、手を添えて銃の扱いを教えた。


そうしてる間に、瞬が店主と話していた。


「…高炭素鋼ベースだ。焼きも悪くない」

「確かに切れ味は劣るかもしれないが、鉄を斬れる剣でも斬れない“頑丈さだけ”はある…つなぎには十分だろ」


店主はそう言うが、瞬はどこか不満げだった。


そんな瞬が鞘からゆっくりと刀を抜く。

鈍い光、響かない音。


「悪くはないが、酒呑しゅてんの代わりにはならないな」

「…今は、この辺が及第点か」


――少し前。


「何にしても、刀が無いと始まらない」


瞬がコーラを飲みながら言い出す。

腰には、いつも差してある刀がない。


「武器屋を巡ろう。電子、この辺に日本刀も扱ってる武器屋はあるか?」


そう言われた電子が素早く端末を起動して入力をした。


「…3軒ヒットしました。というか、瞬、それくらい自分の端末で調べてください」


早い。

しかも、言ってることももっともだった。


調べ物となると、つい電子を頼る癖がついていた。


「…俺が自分の端末に“日本刀”“取り扱い”と文字入力するより、電子が調べる方が、頼むの込みでも3秒は早いだろ」

「3秒あれば、コーラを一口飲んで、スカッとできるんだよ」


瞬が意味不明な持論を展開し始めた。


「瞬、もしかして、刀抜いてないとアホになる?」


「…アホとはなんだアホとは」


瞬が、本当に軽く、タッチするように座愛の頭を小突く。


それを見た電子とあいは顔を見合わせた。


(これが、夫婦漫才ってやつ…?)


「…とりあえず、武器屋なら行ってみたいです!」


おさげが弾んだ。

…あいが嬉しそうにはしゃいだ。


――そして、現在。


「…悪くはないから、これで一旦我慢しよう。店主、これをもらう」


「はいよ」


瞬がそのまま、マネーを送信する。

日本刀は希少だ。

値は張ったが、ひとまずの刀は確保できた。


電子は嬉しそうに笑い、端末を確認した。


「…それはそれとして、依頼が入っています」


あいの銃撃ごっこを受けていた電子は、すでに依頼を持っていた。


あいはリロードが得意になっていた。


「今入ってる依頼は、配給車列の護衛です。市民権で配給される、無料の食料品や医療品の護衛ですね」


…この企業都市・ヒートシンクでは、登録市民に最低限の食料品と医療品が配給される。

だが、市民登録そのものに金がいる。

その金すら払えない連中が、第6地区のスラムに溜まっていた。


「俺にもやっとそういうカッコいい依頼が来るようになったか」

「俺に来るのは、何故かいつも湿っぽい討伐依頼ばかりだ」


それに座愛が答える。


「だから、瞬の刀と閃きは暗殺向きで、逆に護衛には向いてないと踏まれてるんだよ」


瞬は少しだけ肩を落とし、自分の端末を確認した。


『配給車列護衛』

『報酬 : 固定50万Vicks(平常)、+Aランクボーナス、有事の際、出来高』

『時間 : 7月7日 10:00』


「何事もなくても、刀代にはなるな。受けるか」


――こうして、瞬は依頼を受けた。


『>はい』


――しばらくして。


「Aランク3位が護衛なんて、頼もしいです!」


車列のリーダーらしき男が興奮していた。


「最近はどこも外敵騒ぎで、配給も恐る恐るです。Aランクが護衛してくれるなら、安心できます」


「ああ、安心しろ。もし、外敵が襲ってきても守ってやる」


リーダーは興奮気味だが、助手席の副リーダーは不満げだった。


「…ピリオドじゃないのかよ」


それに、リーダーは答える。


「…ピリオドは非常事態レベルでないと動かない。こんなところの護衛なんかに来るわけがない」


こうして、先頭の配給車列のトラックの後部座席に4人が座る。

両ドア側に瞬と座愛、真ん中にあいと電子が座った。


「あい、またそこ。ズルい…」


座愛がその席順に文句を言うが、これは任務。


荷台には、水や医療品に混じって、「精製小麦粉」と印字された白い袋も山のように積まれていた。


「…荷崩れだけは勘弁してくれよ」


荷物が多いせいか、車列のリーダーは何度も振り返っていた。


「…なあ、瞬がSランカーになった時の通り名だけど、“殲滅の瞬”とかはどう?」


座愛が急に切り出した。


「カッコいいが、なんか残酷だな。そこまで惨いことはやってない」


「…いや、殲滅してるだろ」


――しばらく時間が経った。

目的地である配給センターまで来たが、何も起こらない。


…その時だった。

治安調整部隊“パトロール”の車が突然、車列の前を塞ぐ。

屋根に「停止してください」のホログラム。


「瞬、これって…」


「…ああ、だがまだ断定はできない。本物かもしれない」


外敵はいつも、パトロールを装って現れる。

だからと言って、見ただけで撃つわけにもいかない。

本物なら終わりだ。


「最近、外敵の襲撃が多い。この配給車も、既に敵が乗っ取っている可能性も排除できない」

「運転手のIDを確認させてもらう」


パトロールのその言葉に、一瞬安堵が流れる。


「はい、どうぞ。正規の運転手です」


運転手は端末にコードを表示し、パトロールがそれを読み取る。


「…企業都市ヒートシンクの住人と確認。作戦開始」


パァン!パァン!


乾いた音が2発。

外敵だ。


運転手は胸に大口径のハンドガンの弾2発受けた。

アーマーから煙が出て、衝撃で助手席の方まで倒れ込む。


「おい!大丈夫か!」


瞬が運転手に後ろから尋ねる。

他の3人も同じように、心配そうに運転席を覗き込む。


「…ああ、防弾チョッキと皮膚アーマーのおかげで死にはしないが…襲撃です。Aランク。頼みました」


「こちらも作戦開始だ!行くぞ!迎え撃つ!」


トラックを降りると同時に、銃撃してきた1人の腹を刺突。

1人目は即・無力化された。


座愛もトラックを降りる。

辺りにサイレンが鳴り響き、さっきまでノリノリで商品を紹介していた企業広告のバナーが「緊急」「避難」の文字に変わる。


人々が軽いパニックになり、四方八方に走り始める。

緊急時避難退路を示すインディケーターに従っていない。


「電子が避難誘導します!」


その状況を見ていた電子がたまらず叫ぶ。

トラックを降りる。


「…わ、私も!」


それに乗るように、あいも避難誘導へ名乗り出る。


「おい、大丈夫か!?」


瞬と座愛が、電子とあいを心配する。


「大丈夫じゃないかもしれないけど、市民の安全が最優先!」


そこに、座愛が予備の銃を投げて寄越す。


「さっきと同じEE44だ!使い方は教えただろ!いざとなったら使え!」


「うん!」


あいが、初めて実戦で銃を手にした。

両手で握り締めて、震えている。


――敵がパトロールの車から降りてくる。


最初に攻撃してきた1人目の敵は、瞬が既に刺突で無力化している。

だが、瞬には違和感が走っていた。


「…切れ味がついてこない気がする!」


手に馴染まないわけではない。

だが、酒呑ほどの一体感はない。


その予感はすぐに現実のものとなった。


敵がアサルトライフルを連射する。

瞬がいつものようにフラッシュで超反応し、弾道に刀をかざす。


火花が散る。

同時に、弾丸が割れる。


…だが。


「…弾丸を斬った時の衝撃がデカい!…手が!」


切れ味が足りない。

弾丸を斬った時の余計な衝撃が、そのまま手に返ってくる。

酒呑では起きなかったことだ。


その衝撃のせいで手が痛み、いつもの踏み込みからの刺突が遅れる。

そして…。


「まずい!」


瞬が見つめる先には、ショットガン。


「座愛、頼む!」


「わかった!」


瞬は、自分の弱点であるショットガンを持った敵を座愛に処理させる。


蜘蛛脚が展開され、重い連射音が辺りにこだまする。

ショットガンを持った敵は、50口径弾の前には紙のように踊り、武器を手放して崩れ落ちた。


「助かったよ座愛!」


…次の敵に備えて足に力を溜める。

そして、踏み込み中に敵の銃が放たれるのが見えた。


間一髪。

フラッシュで反応し、横へのステップで避ける。

頬をかすめたので、血が出る。


しかし、刺突一閃。

2人目の敵の腹を刺す。


その2人目を刺したまま、瞬が振り返る。

刀は抜かない。

貫通している。


2人目をそのまま盾にした。

そこへ集中砲火。

2人目の体から、皮膚アーマーと弾丸がぶつかって出る破片と火花が連発して放たれる。


そのまま、2人目から貫通して飛び出した刀の部分を使い、3人目も刺す。

2人を刺した状態。


「座愛、こっちに援護を!」


「了解!」


座愛が銃を放つ。


ダン、ダン、ダン、ダン、ダン!


鈍い連射が敵を捉えた。

4人目から6人目は反動で動けないまま、座愛のスプラッターキャノンの餌食になった。


終わった。


――しかし、現実はそう簡単じゃない。


「ですよねー」


座愛の視線の先に、新たに到着したパトロールの車がそれぞれ7台。


うち、正面から来た3台は本物、裏から来た4台が外敵だった。


瞬と座愛が、正規のパトロールの正面を押さえる。

そこに、避難誘導を終えた電子とあい。


市民はまだ列を作って逃げていた。


向かい側に、敵が24人。


「くそっ、状況が悪すぎる!」


瞬がフラッシュで弾を捌きながら叫んだ。

手には重い衝撃。

パトロールの車の防弾壁に、割れた弾が次々と刺さる。


だが、あるものが見えた。


「はぁ…はぁ…今日積んでた白い袋…やっぱり小麦粉か?」


座愛が頭を低くしながら返す。


「ああ、そうだな!そうらしい!」


「それに、今日はほぼ無風…配給センターもすぐそこ…」


――はっ!


「閃いた!」


何か閃いた瞬に対して座愛が言う。


「小麦粉を全部破いてばら撒いて、“粉塵爆発”でもさせて一掃ってところ!?」

「残念、それじゃ護衛任務としては失敗だし、何より民間被害が出る!」


「…」


小麦粉は危険だ。

空気中に舞ったところへ火が入れば、爆発的に燃える。

いわゆる粉塵爆発だ。


「全員、俺の端末を見ろ!」


瞬が端末に何かを入力して、後ろにいる味方に見せる。


『(!)強力フラッシュグレネード使用。目と耳を塞げ。そして、炸裂したらすぐに…(!)』


瞬がそれを見せると全員が頷いた。

そして、瞬はバッグから何か取り出した。


「…闇市で買った、規格外の手製の超強力フラッシュグレネード…ここで使う!」

「軍用バイザーでも無効化できない!」


それのスイッチを入れ、敵の足元に転がす。


そして、炸裂。

爆光と高音が敵の目と耳を一時的に潰す。


――何も見えない、何も聞こえない。


しかし、それも一時的。

敵の視力と聴力が回復してくると、耳鳴り共に見えてきた辺りは、数メートル先も見えないほど粉だらけだった。


敵の足元には“精製小麦粉”と書かれた袋が何袋か破れて捨てられている。


「…敵は配給物資を利用した。袋の表記は精製小麦粉、運搬データとも一致する。全員、粉塵爆発に注意し、火気厳禁。銃を捨て、近接戦に移行せよ」

「敵のリーダーはサムライだ。銃火器を封じて近接戦に持ち込むのが狙いと思われる」


敵が一斉に銃を捨てた。

あるいはセーフティーにする。


ナイフや警棒に持ち替えた。

瞬たちはその音と声を聞き逃さなかった。


「よし!敵は策に嵌った!全員、粉の中に飛び込んで一斉掃射だ!!」


銃を持った味方全員が粉の中に飛び込み、うっすら確認できる敵に一斉掃射を浴びせる。


――あいだけはまだパトロールの車の後ろに隠れている。


ハンドガンの聞き慣れた音。

アサルトライフルの軽い乾いた連射音。

スプラッターキャノンの重く湿った連射音。


全部が重なる。

死のオーケストラだ。


「…バカな…なぜあちらは銃を使っても粉塵爆発しない…」


敵が撃たれながらそう言うのも無理はない。


…瞬の指示はこうだ。


『(!)フラッシュグレネード使用。全員、耳と目を塞げ、そして、炸裂したら素早く消火器を撒け(!)』


舞っているこの粉の正体は消火器の粉。

消火器は配給センターから拝借した。

配給センターは粉物も扱う。

火気にはうるさく、消火器が多めに置かれている。


既に緊急事態のサイレンが鳴る中、敵の目と耳が生きてない間に静かに調達して、撒くのは容易い。


そして、敵の足元にあるのは、中身を撒かずにただ破いて捨てた小麦粉の袋が、何袋か置かれただけだった。


つまり、敵から見れば、全部が小麦粉の粉に見える。

粉塵爆発を警戒するのも当然だった。

だが、実際に舞っていた消火器の粉だ。


…消火器の粉は粉塵爆発を起こさない。


ナイフに持ち替えた敵、銃をしまった敵を、座愛たちは一方的に銃で圧倒する。


「さすがだな、瞬!刀を抜いてれば天才的だ!!」


ナイフや警棒に持ち替えた敵は、もう一方的に撃たれるだけだった。


「…やったぞ!あれだけの敵を、消火器と小麦粉の袋だけで倒した!」


「はぁ…はぁ…さすが…Aランク3位だ!」


パトロール隊員と車列のリーダーが喜んでいる。


――その時。


「こんなバカなことが…死ね!」


まだ動ける敵が1人だけいた。

起き上がって、銃を手にして、構える。


「危ない!」


――パァン!


…。


あいの銃口が煙を吐き、反動で真上を向いている。


そう、撃ったのはあいだ。


「バカな…」


――最後の敵も倒れた。


「あ、痛てて…あ、私…人を…!」


あいが取り乱しそうになる。


瞬が敵を確認しに行った。

刀を構えている。

片手に持ち替え、敵の脈を確認する。


「あい、大丈夫だ。ヘッドショットだが、骨格コートで止まってる、脳震盪だ」


その言葉で、あいの肩がようやく落ちた。


「…すごいな!あい!」


「あい!大手柄ですよ!」


あいは、座愛と電子にハグをされ、熱い祝福を受けた。


制圧が完了し、パトロールからその場で事情聴取を受ける。

その合間に端末を弄り、任務完了を送信していた。


「瞬!今回の功績と稼ぎは大きいですよ!」


電子がおかっぱ頭を揺らしながら小躍りしている。

そこに、おさげのあいも混ざり、手を繋いで踊る。


「あいのやつ、意外と才能あるんじゃないか?」


座愛は少し離れた場所からそれを見て、それから瞬のそばに来た。


「ああ、そうかもな。初実戦で頭を撃ち抜く軌道に持っていけるのは、まぐれでもそうそうないだろ」

「…教え方も上手かったんじゃないか?」


座愛がまた照れた。


だが、瞬にはまだ課題があった。


「今回も奇跡的にクリアしたが、刀が全然ついてこなかった」

「…市販品じゃダメだ。もっと良いやつが要る…」


――折れた酒呑の重さが、まだ手の中に残っていた。

読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、次話も読んでいただけると嬉しいです。

感想・ブックマーク・評価、とても励みになります。


次回更新は月曜19:20、2話ずつを予定しております。

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