悪いやつはどうしてもいるのだけど
北の村はやっと少し落ち着きを取り戻したと思ったのだけど、またしても北の村の村長から相談事が舞い込んだ。
何でも、夜、不審な人物が彷徨いていて、朝になってから調べると、壊れた家屋や、援助物資の集積場から、物が盗まれていたらしい。
まあ、なんと言うか、良くある火事場泥棒とか被災地荒らしという奴だろう。
普段の村ならば、周りは低いとはいえスライム避けの石壁で囲まれていて、出入り口に扉もついている。 そしてそれぞれなんらかの重要な場所には鍵がかかっているし、そういう所は不審者にはすぐに気が付く場所にある。
村に侵入するとしたら、その経路も限定されてしまう。
また村には、大抵何人かの冒険者が滞在していることもあって、普段の村というのは、意外に防犯がしっかりしているのだ。
ところがこういった災害があると、夜になるまで周りに知られずに隠れる場所もあるし、どこからでも侵入出来る。 村人の居場所も普段と違っているから、気付かれることも少ない。 冒険者は復興の役には立たないからと居ない。
悪いことを考える奴らには、恰好の状況となってしまうのだ。
そして、普段だったらば自分たちで対処出来ることが対処できなくて、問題となってしまう。
それで困っての話だ。
「よし、たまには土木作業や農業ではない仕事も良いだろう。
お前たち、不心得者を捕まえに行くぞ」
領主様はノリノリだ。
お前たちというのは、僕とジャン、それにウォルフにウィリーだ。
つまり領主様は、僕たち領主様にとっては子供のような扱いの、僕は本当に養子になっているから子供なんだけど、とにかく領主様が子供のように思っている僕らを連れて、一緒に悪党退治をしよう、というのである。
文官さんが呆れている。
「ああ、もう、さっさと行って、さっさと捕まえてきてください。
ナリートくんたちに怪我させないように気をつけて下さいよ。 あなたとは違うのですから」
「大丈夫だ。 俺と違って、こいつらはみんなヒールが使える」
「そういうことではありません」
文官さんは呆れていたから反対してくれるのかと思ったら、止めても無駄だと諦めてしまったらしい。
「やるなら早くやって来い。 後が詰まっている」
というような感じだ。
僕たちも仕方ないと諦めるしかない。
それからちょっとシスターが、
「なんで領主である貴方が直々に捕まえに行くことになるの」とか、
「なんで子供たちまで連れて行くの」とか、
領主様に文句を言ってくれたのだけど、
「いや、こいつらはモンスターとか他のことはともかく、対人経験だけは圧倒的に足りていないから、安全に経験を積ませてやろうと考えてだな」
なんて、領主様はしどろもどろに弁解していたのだけど、そんなことよりも自分が連れて行って楽しみたいという気持ちがもう見え見えで、シスターも呆れてというか、もうしょうがないという感じで折れた。
「子供たちに怪我させない様に気をつけてくださいね」
領主様はシスターにも同じことを言われている。
ルーミエとフランソワちゃんも行きたがったけど、それはさすがにシスターに許されなかった。
領主様と僕たちは、まず町に行き、そこからは村人の格好をして、町に薪を積んで来た荷車を押して戻る人に紛れて、北の町に行った。 こんな単純なことで、小悪党共は引っ掛かるのだろうか、ちょっと不安だ。
僕らの武器は荷車の荷台に筵に包まれて乗せられている。 その都合上、剣だけだ。 ジャンの得意な槍、ウォルフの得意な弓矢は載せられていない。 普通に載せても、筵で包んだにしても、長さの問題で目立ってしまうから。
という訳で、小悪党を捕獲する時に戦闘となると、僕は、たぶんジャンもだろうけど、こっちは真剣に不安だ。 剣は得意じゃないんだよ。
ウォルフは、と思ったら、
「ん、俺か。 俺は大丈夫だぞ。
俺の[職業]は知ってのとおり弓士だけど、衛士をしていた時に、衛士には必要だからって、剣も領主様に鍛えられたからな。
衛士の仕事じゃ、確かに弓矢の出番なんてなくて、もっぱら単なる棒か剣だったからなぁ。 俺は弓だけじゃなくて、その二つも使えるぞ」
そうだった、ウォルフとウィリーは城下村開拓の前は、衛士をしていたのだった。 その時に領主様に鍛えられていたんだ。
え、だとしたら、エレナもその二つも使えるのかな。
そんなことを話しながら、僕たちは北の村に向かったのだけど、ま、のんびりした調子だ。 領主様にも警戒心が感じられない。
僕は少しピリピリしていて、空間認識を目一杯使って、怪しい者が僕ら一行を監視していないかをずっと探っていた。 僕だけ神経質になっていると思われるのも嫌だから、普通に会話しながらだったりするから、余計に疲れた。
まあさ、ジャンには見え見えだったようで、村に着いたら言われた。
「で、ナリートはどうだった?
僕もナリートが周りを気にしていたから、索敵でずっと探っていたけど、何も引っ掛からなかったんだけど」
「うん、僕も見つからなかった」
僕たちは災害の影響を受けなかった村長の家で、これからの話し合いをした。 外で話したりしていては、目に付く可能性がある。
数日、村長の家に滞在させてもらうことになった。
村長は、領主様も含む僕たちを、狭い場所に案内することを申し訳ながっていた。 いや、領主様はどうだかと思うけど、僕らにとっては十分な広さなんだけどさ。
損傷を免れた村長の家は、家を失くした人を受け入れたりもしているから、普段と同じには使えないからだ。
ま、何はともあれ、災害地で泥棒をはたらこうなどとする不届者の小悪党が活動するのは当然夜なので、僕らは夜を待った。
「いくら何でも、俺たちが来てすぐに何かやらかすバカはいないだろう」
と、ウィリーは言って、その晩はのんびりモードだったのだけど、嘘だろと思ったのだけど、そのバカはいるみたいだ。 僕の、念の為にと思って、というより練習気分で探ってみた空間認識に、怪しいのが引っかかった。
「ジャン、なんか怪しいのがいるみたいなんだけど、ジャンは感じない?」
僕がそう声を掛けると、ジャンだけでなく、ウォルフとウィリーも索敵しているみたいだ。
「うーん、僕には感じられないな」
「俺も、敵の気配は感じないぞ」
ジャンだけじゃなくウォルフも感じられないなら、僕の勘違いかなと思ったのだけど、何となくやはり気になる。 少ししてから、もう一度探ってみる。 やはり何かいる気がする。
「やっぱり何かがいる気がする。
ちょっと僕は見て来るよ」
僕がそう言って、一人で村長宅を出て、見回りをしてみようとしたら、それを見ていた領主様が言った。
「それでは儂が付いて行ってやろう。
ナリート一人を夜偵察に出して、怪我でもさせたらカトリーヌに何を言われるか分からないからな」
半分冗談、半分本気という調子で領主様がそう言うと、ジャン、ウォルフ、ウィリーも動き出した。
「領主様が外に出るというのに、俺たちがそのままという訳にはいかないだろ」
ウィリーは、ちょっとだけ仕方ないという調子で、そんなことを言ったけど、ジャンはどっちかというと嬉しそうに剣を取ってきて支度している。
僕たちは光が外に漏れない、暗い裏口から外に出た。 灯りが漏れる中で、外への動きを見せたら、結構遠くからでも気付かれてしまうからね。
外に出て、僕は自分の空間認識で気配を感じる辺りを目指して先導して行く。
「おい、本当にいたぞ」
小声でウィリーが呟いた。
「ああ、俺にも見えた」とウォルフ。
「僕にも見えたけど、見えたら、僕の索敵にもしっかりと感じられるようになったよ」
「ああ、見えているの以外に、4人いるな」
不審者を視認したら、ジャンたちの索敵にも引っかかるようになったみたいだ。 ちゃんと見えていない不審者も感じられたようだ。
「やはりお前たちの方が、そういうことは上手いようだな。 儂だと全然という訳じゃないが、詳しくはわからん。
ナリート、その中で中心人物そうなのはどこにいる? 儂がそいつに向かおう。
ウォルフ、ウィリー、一緒に捕縛に行くぞ。 ナリートとジャンは、逃げようとするのを捕まえるように、左右から反対方向に向かって行って、待ち構えていろ」
領主様は僕に場所を聞くと、のんびりした調子でそう言ったのだけど、すぐに歩き出した。 僕とジャンは離れた場所に向かわねばならないので、急いで動く。 音を立てずに急いで動く訓練なんて受けてないよ。
不審者は簡単に捕らえることが出来た。
いや簡単に捕らえていたのは、領主様とウォルフ、ウィリーの三人だ。 僕とジャンはやっぱりちょっと手こずった。
僕が一人の不審者を組み伏して、さてこれからどうしようかとちょっと困っていたら、ウィリーが近づいて来た。
「ナリート、何しているんだ? 早く縛り上げて連れてこい」
えっ、縛り上げるロープなんて持ってないよ。 少し離れた場所からウォルフの声が聞こえて来た。
「ジャンの奴、ロープを持ってきてないんだ。 仕方ないから、ちょっと村長の家まで行って、ロープをもらってくる」
「あ、ウォルフ、もう1本頼む。 こっちのナリートも同じみたいだ」
ウィリーとウォルフ、それに領主様は捕らえた不審者を縛るためのロープを用意していたみたいだ。
元衛士には、そんなのは常識なのかも知れないけど、僕とジャンはそんなの知らないよ。 二人と領主様は剣を取るだけじゃなくて、ロープも持って来たんだったら、僕らにも教えてくれても良いのではないかと、不平を言いたくなったのだけど、あまりに当たり前のこと過ぎて、僕ら二人が持たないなんて思いもしなかったのかも。
不審な奴らを捕縛して村長宅に戻って来てから、領主様が言った。
「色々考えるべき問題点が見えたな。
まず第一に、ナリートだけは気づいた様だが、お前ら三人の索敵には引っ掛からなかったのは問題だな。 見たら引っかかる様になったということは、敵だという認識がされていなかったのかも知れないな。 あくまで索敵だからな」
あ、そうか、索敵だから、敵という認識がないと引っかからないのか、初めて知った。 僕の場合、空間認識だから、敵とか味方とか関係なく、意識すれば引うしゅっ掛かりはするんだよね。 その上、何となく引っかかったモノのことが少しは解る。
「僕は、人間の敵というのは、城下村を占領しようとした無法者しか会ったことなくて、あれは最初から敵と分かっていたし、まだ索敵出来る距離も短い時だったから、認識出来た時にはもう見えていたから、今日初めて、モンスターじゃなくて人間の敵対する者というのを索敵したので、その気配というのが、やっぱり見てみるまで判りませんでした」
ジャンがそう領主様に答えると、領主様は言った。
「確かにジャンの場合はそうだな、仕方ないかも知れないな。
しかし、ウォルフとウィリーは違うだろ。 お前らは衛士として、法を犯した者なんかの取り締まりもしていたんだから、不審者を認識出来なかったのは問題だな」
ウォルフとウィリーは、小さくなっているしかない。
「それにしても、まだこんな小悪党が領内に入り込んでいたか、チェックをどう掻い潜ったのか」
「いえ、領境の関所でシスターのチェックが始まる前に入っていた者かも知れません」
ウィリーが少し名誉挽回という感じで、文官の感じで言った。
「ああ、その可能性もあるな。 後でしっかりと取り調べよう。
ま、どちらにしろ、それが終わったら、この不審者共は石切り場行きだな」
僕はちょっと、あっ、と思った。
僕は石切り場という存在をすっかり忘れていた。 嫌な記憶と結びついている場所なので、意識を向けることを自然と避けてしまっていたのかも知れない。 でも石は使いたいよなぁ。
そんなことを少し頭の中で考えていたら、もっと大問題を領主様に言われてしまった。
「それから、ナリート、ジャン、見てたぞ。
お前ら二人は、もっと剣と素手の格闘の訓練だ。 もっとそれらがしっかりしないと危なっかしくてしょうがない。
レベルが高いだけでは駄目なのは、良く知っているだろう。
城下村に戻ったら、毎日しっかりと訓練するぞ」
領主様のその訓練を受けたことのある二人が、僕とジャンを憐れみの目で見て、その目で語った。 「頑張れ!!」
PCが絶不調です。
OSを自動で最新のモノに更新される様に設定しておいたら、今回バージョンアップされたら、途端に全くまともに動かない。 うーん、大失敗です。
原因を探るも、どうにもマトモに動かない。 OSの方のバグかなぁ。 それだと待つしかないし。
元に戻すのも大変だし、戻すには少し大容量のメモリーが必要だし、余計な出費だな。 後からも使う予定があれば買うけど、大容量メモリーなんて普段使わないよ。
少し待ちかなぁ。
あー、ストレスです。




