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ループ

 なんだ?


 何が起きた?


 夢?


 夢だったのか?


「ねぇ?どうしたの?さっきから…。体調でも悪いの?」


 真琴が心配そうに聞いてくる。


 確かにさっき病院から電話が掛かってきて…、いや、普通、病院から電話が掛かってくるか?

 そうだ。

 親とかに電話するならわかるが…、なぜ交際相手に電話してくるんだ?

 そもそも、俺が交際相手だと、何故病院側がわかるんだ?携帯の着信履歴で頻度の多い相手に電話した?

 いやいや、真琴は確か携帯にオートロックを掛けていたはず。病院が俺に電話を掛けてくる事など、あり得ないんだ。


 …いや、思考がズレている。


 病院からの電話云々は置いといて、今が大事なんだ。

 夢か、何かのファンタジーが炸裂して、時間が戻ったのかは、どうでもいい事だ。

 大事なのは、今現在とこれからの未来だ。

 どちらにしろ、縁起の悪い、さっきと同じルートは辿れない…。


「…あぁ、ちょっと体調が悪いみたい…」


「!

 やめてよ。こんな大事な時に!」


「とりあえず、熱を測ってみるわ」


 熱を測ってみるが、結果は平熱だった。当たり前だ。なぜなら、体調は全然悪くないからだ。


「…何度だったの?」


「…39.7度…」


「嘘!

 すごい熱じゃない!?」


「ちょっと、実家に連絡して、延期してもらうわ」


 真琴がジト目で、見つめてくる。

 愛しさが溢れてくる。

 思わず抱き締めたくなるが、今、抱きつくと熱がないのがバレてしまう。


「…わかった。体調不良じゃ、しょうがないよね」


 何とか、回避できたか?


「薬はあるの?」


「…あったと思う」


「じゃ、薬飲んで、もう寝てなさい」


「送るよ」


「病人に送ってほしくないんですけど…。

 バスで駅まで行って、電車で帰るわ」


 …電車。


 先程の夢(?)を思い出す。すごく不吉な気がする。

 なんとなく時計を見る。

 まだ昼過ぎだ。さっきの夢(?)とは時間が全然違う。

 ここで無理に引き止めても、こっちの仮病がバレる可能性が高くなる。ならば、時間も状況も違うのだから、大丈夫と信じて布団に入っておくのが自然だろう。


「わかった。申し訳ないけど、寝させてもらうわ」


「はいはい、お大事に」


 俺は、布団に行き、真琴が帰るのを待つ。


 真琴が、玄関から出て行ったのを確認して、実家に電話を掛ける。今日のイベントを延期してもらうためだった。


 とりあえず、やる事をやったところで、暇になった。


 しばらく、布団でゴロゴロしていると、いつのまにか寝てしまっていた。


 携帯のバイブで目が覚める。


 外を見ると、もう夕方なのか、空が暗くなっていた。


 眠い目を擦りながら、電話に出ると女性の声が響いた。


「あ、もしもし、失礼ですが、こちら溝口雄大様のお電話で、間違いないでしょうか?」


「…はい」


 …まさか。


「私、間山総合病院、救急センターの者です」


 その電話は、最寄駅から家に帰る途中の道で、真琴が交通事故に遭ったという内容の電話だった。


 目の前が、真っ暗になり、音が聞こえなくなった。


 ________________________


「……てるの?」


 後ろから声を掛けられて、慌てて振り返る。

 そこには不思議そうな顔をした真琴が立っていた。


「ねぇ!さっきから…、ちゃんと話を聞いてるの!?」


 …まただ。


 どうなってるんだ?


 また、同じ時間を繰り返している。

 なんで?


 いや、何が起きたとかは、今は関係ない。

 大事なのは、今現在とこれからの未来だ。


 心苦しいが、今回は親父に体調不良になってもらおう。

 そうすれば、堂々と真琴を送って行ける。

 きっと、今日は両親に挨拶させるのは、やめておけという神様の忠告なのだろう。


 俺は、携帯に着信があった振りをしながら、真琴から離れる。

 電話が終わった後、残念そうな顔をしながら、今日は延期になったことを真琴に伝える。

 真琴も残念そうな顔をしていたが、なんとか理解してもらえた。


 その後、お袋の携帯に急用が入ったという内容のメールを送り、延期を願い出た。

 すぐに電話が掛かってくるのを避けるために、電話に出られない事もメールしておいた。


 これで大丈夫だろう。


 夜、一緒に食事をしてから、真琴を家まで送る。


 事故に遭わないよう、細心の注意を払いながら運転する。

 ここで事故に遭ったら、シャレにならないからな。


 真琴が家に入るのを見届けてから家路に着く。ようやく、長い1日が終わる。ホッとしながら、部屋に戻りテレビを付ける。

 チャンネルをニュースにして、風呂に湯を張りにいこうとして、動きが止まる。


 見覚えのある家が燃えている映像が流れたからだ。


 燃えているのは真琴の家だった…。


________________________


「……てるの?」


 後ろから声を掛けられて、慌てて振り返る。

 そこには不思議そうな顔をした真琴が立っていた。


「ねぇ!さっきから…、ちゃんと話を聞いてるの!?」


 それは、何度も経験している実家に行く直前の状況だった。

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