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福徳小学校の七不思議  作者: スネオメガネ
怪6 邪なるモノ
23/35

猿の手の回答

 元の世界に戻ってきた。

 いや、強制的に戻されたというべきか?


 鏡には、怒りの形相になっている私と、その隣に驚いた顔の篠宮少年が映っていた。無理矢理、顔を隣に向けると篠宮少年がこちらを見ていた。


 篠宮少年だけが鏡の中にいる事も脳裏に浮かんだが、どうやら私だけでなく、篠宮少年も元の世界に戻って来たらしい。


『けっ!

 逃げられた!あのクソガエル野郎!』


 口汚い言葉が、自分の口から発せられる。


 あとは、この邪を自分の中から追い出せば、ミッションコンプリートとなるわけだが…。


 後ろを振り返ると、生徒用の机と椅子が1セット階段の踊り場に置いてある。どうやら、間に合ったようだ。


「あれ?この机、僕のだ!」


 机に気付いた篠宮少年が、机を触り、声を上げる。おそらく彼が書いたと思われる机を背負ったナメクジのラクガキで自分の机だと気付いたのだろう。


『はっ!そういう事かよっ!

 準備万端だったって訳か!

 クソ野郎がぁっ!』


 続いて、邪が忌々しそうに声を上げる。


「谷口先生に予め頼んでおきました。

 篠宮さんの机を、始業式が終わった後にこの踊り場に持ってくるように…」


 無理矢理、口の主導権を握り、篠宮少年に事情を説明する。


「どうゆう事?」


 私は、一枚の紙を篠宮少年の机から取り出して、篠宮少年に渡す。

 谷口先生に頼んで仕込んでもらった『猿の手』の回答のコピーだった。


 質問の内容は、

『問1

  現在、七不思議の内、手長足長、大ナメクジ、小さいおっさん、猿の手は遭遇済みの状態である。

 無事に試練を受けるための最も効率的な手順を答えよ。


 問2

 試練の内容と、無事にクリアするための手順を答えよ』

 となっている。


 これは、後藤少年の宿題プリントが一枚で、一つの質問とカウントされていたことをヒントに考えたプリント形式の質問だった。


 問1の回答は、七不思議に関するお願いとして、篠宮少年の机を始業式の後に、この踊り場まで運んでもらう事を依頼する手紙を書き、谷口先生の机の引き出しに入れておく事から始まり、邪に憑かれている谷口先生を呼び出し、邪と契約する事、始業式の後に篠宮少年とこの踊り場に来る事などが書かれている。


 問2の回答は、文字化けのような文字の羅列が書かれており、なんら情報が増えなかった。何かのバグかと思い、再度、同じ質問をすることも考えたが、嫌な予感がしたのでやめておいた。

 先程の我魔との会話で出た試練の内容は、言えない規則という言葉で納得できたし、ムキになって同じ質問をしなくてよかったとも思えた。


「谷口先生、邪に憑かれてたんだ…」


 読み終えたであろう篠宮少年が口を開く。もっともな感想だ。私も、回答を見た時は驚いたのだから。だが、後藤少年に百葉箱の賢者の事を教えた事を考えると、納得がいったのも事実だった。


「はい。

 あとは、そこに書かれている通りに進めるだけでした。

 そして、今、その仕上げの段階です」


「谷口先生はどうなったの?」


「特にどうもなってないです。

 ただ、今まで信じてなかった七不思議が事実だと知り、自分も残りの妖を探すとは言ってましたが…」


「そっか」


『あいつは、担任の自分を差し置いて、お前とこのクソ野郎が仲良くしているのが気に入らないようだったからな。憑くのは簡単だったぜ』


 邪が口を挟む。


「え!?

 そうなの?

 じゃあ、谷口先生が憑かれてたのって僕のせいってこと?」


『いわゆる嫉妬って奴だなぁ。

 嫉妬は最高だ。

 一番、付け込み易い感情だぜ』


 邪が、実に楽しそうに笑う。


「そうなんだ」


 篠宮少年が寂しそうに呟く。


「まぁ、そのおかげでと言うと、聞こえが悪いかもしれませんが、ここまでスムーズに来た訳ですし、谷口先生も今はなんの影響もないんですから、結果オーライですよ」


 私は、意気消沈している篠宮少年の背中を軽く叩きながら、フォローを入れる。


 実際、今の谷口先生は元気だし、共通の秘密が出来たおかげで、私と谷口先生の距離も縮まったのだから、悪い事だけではなかったと考えたい。


 だが、邪が抜けた直後の谷口先生は、疲れ切った感じだったし、自分を責め続けている感じで、見ていられない状態だったのも事実だ…。


 私は、谷口先生を呼び出した時の事を思い出していた。


 あれは、百葉箱にプリント形式の質問を書いた後、要は登校日の2日後の事だった。


 私は猿の手の指示通りに手紙を書き、それを谷口先生が席を外した際に机に入れ、戻ってきた谷口先生に声を掛けた。


 自分でもベタ過ぎると思ったが、体育館の裏に呼び出したのだ。


 蝉がうるさく鳴いていた夏の昼下がりの事だった。

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