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福徳小学校の七不思議  作者: スネオメガネ
怪5 鏡の世界
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鏡の世界

 思わず周りを見回す。


 いつもの壁にいつもの階段。特に変わったところは見当たらない。ただ、左右対称という一点を除いて…。


 篠宮少年を見る。


 特にケガがあるわけではないようだが、先程の私と同じように周りを見回している。


「篠宮さん、大丈夫ですか?」


 篠宮少年は軽く頷いて、こちらを振り向く。


「なに?ここ…」


「おそらく、鏡の中の世界です」


 にわかには信じられないが、鏡の中に引きずり込まれたようだ。


「…これから、どうするの?」


「カエルを探します。

 …引きこもりのヒキガエル野郎の奴を引きずり出してやるぜぇ」


 篠宮少年が、ギョッとした顔でこちらを見てくる。


「…コホン。

 …鏡の中に引きずり込まれた場合は、カエルを鏡の前におびき出して、合わせ鏡の間にカエルが来るようにしてやれば、元の世界に戻れるそうなんです」


 そう言って、ポケットから手鏡を取り出して見せる。


「それも『猿の手』の答えなの?」


 私は、篠宮少年に頷いてみせる。


 猿の手の回答では、合わせ鏡の間に我魔を配置すると、我魔から大量の油が出てきて、その油に飲み込まれることで、元の世界に帰る事ができると書いてあった。


 ただし、その難易度は高く、結局、我魔の協力が必須となるとの事だった。


 あくまで、『正攻法では』の話だが…。


「ここにいても、何も変わりません。カエルを探しに行きましょう」


 そう言って、篠宮少年と共に歩き出す。


 歩き出すと、ものすごい違和感を覚える。


 普段、見慣れた場所の左右対称の世界というのは、こんなにも不安定な気持ちになるものなのだろうか?

 それとも、我魔の能力か何かだろうか?


「ねぇ、なんかすごい気持ちが悪い感じが、するだけど…」


「…多分、左右対称の世界だからでしょう」


 本当は、二手に分かれて探しに行きたいところだが、一度別れてしまうと、カエルを見つけた時に一緒に帰れなくなる可能性がある。

 効率は悪いが、一緒に行動するのがベストだろう。


「ねぇ、どこに向かってるの?」


「カエルは水場を好みます。まずは、体育館の近くにある手洗い場へ向かいます」


「それも『猿の手』の答えに書いてあったの?」


「いえ、ただの勘です」


 誰もいない職員室の前を通り抜け、職員用の玄関に向かい、そのまま外に出る。篠宮少年が、上履きで外に出る事に戸惑いを感じたようだが、大丈夫と声を掛け外に出る。


 運動場にも誰もいない。


 先程まで、始業式が終わり、下校の生徒達が溢れていた児童玄関の方を見ても、人っ子一人見当たらない。


 おそらく、この世界で動いているのは、私達と我魔だけなのだろう。そうならば、動くものを探せば、それが我魔だという事になる。それを篠宮少年に伝え、動くものがあったら、教え合うよう提案する。


 そこで、『猿の手』に我魔の大きさを書いてもらうのを忘れていた事に気付く。


 アマガエルほどの大きさなら探すのは、かなり骨が折れる。


 ある程度の大きさがあるように祈りながら、周りを見回す。


 それにしても、違和感がすごい。


 記念贈呈された鏡を起点に左右対称。


 ただ、それだけの事なのに…、なかなか、集中できない。

 これは、攻略法があっても、難易度が高い。

 先に『猿の手』と遭遇していなかったら、と思うとゾッとする。


「ねぇ、外にはいないんじゃない?」


 篠宮少年が、不安そうに声を掛けてくる。


「大丈夫。校舎の中にはいないはずです」


「なんで?それも勘?」


「…」


 篠宮少年を無視して、辺りを見回す。

 隠れられそうなところは、どこだろうか?


 匂いを辿るために、舌を出し入れしてみる。

 …児童玄関の方が匂いが強い気がする。そういえば、児童玄関の近くにも手洗い場があったはずだ。


「…こっちだ。

 こっちの方から、ヒキガエル野郎の脂臭え匂いがプンプンするぜぇ」


「…ねぇ、先生。さっきから、なんか変じゃない?」


「黙ってろ、小僧」


 篠宮少年を連れて、児童玄関に近付いていく。


 ゲコ。


 どこからか、カエルの鳴き声が聞こえた気がした。


「ビンゴ!」


 そう言って、児童玄関の近くの手洗い場に近付いた時、それを制止する声が響いた。


「ストップ!

 それ以上近付くのは、ご遠慮願うのである」


 声が響くと同時に、手洗い場の後ろから人影が現れた。

 厳密に言うと人ではなかった。なぜなら、それは私と同じくらいの背丈で、人と同じように二足歩行するカエルだったからだ。


「ふむ。

 少年の方だけ、こちらち招待したかったのだが…、余計な(やから)が一緒について来たのである」


 そのカエルは、シルクハットを被り、燕尾服を小粋に着こなしていた。

 手に持ったステッキのような物をクルクル回しながら、微妙な口調で独り言を呟いていた。


 こいつが、我魔?


 カエルの顔が、人と同じようなサイズになると、ここまでグロテスクになるのか、と一人で感心していると、さらにカエルが呟く。


「そうまでして、吾輩の領域に侵入してくるとは…。

 そこの少年、その男から離れるのである」


 そう言って、クルクル回していたステッキの先をこちらに向けて、芝居掛かったポーズを決める。


「その男は、(じゃ)に憑かれておるのである」


 その言葉を聞き、ゆっくりと振り向くと、不安そうに、こちらを見ている篠宮少年と目が合った。

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