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福徳小学校の七不思議  作者: スネオメガネ
怪4 箱の中の賢者
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七不思議の全容

『この学校の七不思議を全部教えてください』


 そう紙に鉛筆で書く。

 答えが書き込まれるスペースを空けるため、紙の上に一行で書いておく。

 さて、どんな答えが返ってくるのだろう。


 篠宮少年は、自分が箱に入れたいと主張したが、最後に書かれる回数が嫌な感じなので、念のため、私が箱に入れるよう取り決めた。


 後藤少年は、プリントと一緒に鉛筆を入れていたので、質問を書いた鉛筆も一緒に百葉箱へと入れる。


 私が扉を閉めた後、二人で様子を見る。


 しばらく待ったが、さっきのような答えを書き込む音は聞こえてこない。


 一日の中で、回数制限でもあるのだろうか?


 そう考えたところで、プリントの最後に書き込まれていた回数に思い当たる。

 だが、さっきプリントに書かれた数字は、『あと3回』だった。

 ならば、まだ今日の制限回数には達していないはずだ。


 ごちゃごちゃ考えていると、不意に篠宮少年が呟く。


「なんか、二人でボーッと突っ立って、側から見たら、きっと変に見えるよね?」


 …確かに。


「…一日、待った方がいいかもしれないですね。

 今日は、解散しますか?」


「明日、学校に来たら、ちゃんと教えてくれる?」


「もちろん」


「じゃ、今日はもう帰ろうかな?」


 そんな会話をしていると、かすかに音が聞こえてきた。


 カッカッカッ。


 さっきも聞いた、答えを書き込む音だ。


 二人で顔を見合わせて、唾を飲む。


「…書いてるね」


「…はい、音が止むまで、待ちましょう」


 どれくらい時間が経っただろう?


 待っている間は、永遠に続くのではないかと思われた音が止んだ。


「…開けようよ」


「…私が開けます。篠宮さんは、念のため、私の後ろにいてください」


 そう言って、そっと扉に手を掛ける。


 大丈夫。


 さっきも、あの毛むくじゃらが襲ってくる事はなかった。

 だから、開けても、きっと紙が置いてあるだけのはずだ。


 そう。


 …そうに決まってる。


 怖気付く心を無理矢理押さえつけ、一気に扉を開ける。


 想定通り、毛むくじゃらの手が襲ってくる事はなく、紙が一枚置いてあるだけだった。

 震える手で、その紙を取り、見てみる。


『七不思議


 6匹の(あやかし)と、それに遭遇した者に課される試練を合わせて七不思議として語られる。

 試練を越えた者は、1つだけ過去を変える事ができる。


 ただし、どう変わるかを選ぶ事はできない。

 また、試練に失敗した場合は輪廻の輪から外され、妖として七不思議に取り込まれる。

 その際、既存の妖の内の1匹が輪廻の輪に戻る事ができ、常に妖の数が6匹以上になる事はない。


 (じゃ)

 ヘビの姿をした妖で、様々な方法で人を誘惑し、魂を堕落させる。特定の縄張りを持たない。


 我魔(がま)

 カエルの姿をした妖。

 校舎内の鏡の中に住んでおり、時折、人を鏡の中に引きずり込む。


 大ナメクジ

 ナメクジの姿をした妖で、机の中に住んでいる。

 邪気を食べる性質があるが、人前には滅多に出てこない。


 猿の手

 百葉箱を縄張りとする、なんでも質問に答えてくれる妖。

 1人の質問に答えられる回数は5回。5回質問に答えた時点で、代償として記憶を奪う。


 手長足長

 手と足が自由に伸縮する妖。

 主に体育館を縄張りとしている。よほど気に入らない事がない限り、人は襲わない。


 小さいおっさん

 文字通り、小さいおっさん。

 叫び方が滑稽。集団で行動する。肉食。

 あらゆるところに出現する。


 試練

 最初に妖を見た日から、1年以内に全ての妖を見る事で試練を受ける権利を得ることができる。

 試練の内容は、過去の自分と向き合う事。


 あと4回』


 …


 無言で紙を見つめる。


「ねぇ、…これ、ヤバくない?」


 篠宮少年が震える声で呟く。


 確かにリスクはあるように思えるが、過去を変えられる。どう変わるかはわからないが、過去が変えられるのだ。


 どこがヤバいと言うのか?


 最高じゃないか?


 真琴…。


 …真琴の死を変えられるかもしれない…。


「あの…後藤?って生徒、もう2回『猿の手』ってやつ使ってるんじゃん?」


 篠宮少年に言われて気付く。

 後藤少年が懲りずに、百葉箱に宿題を入れると、あと3回で記憶がなくなるという事だ。


 …が、百葉箱に鍵を掛けておけば、問題はないだろう。


「篠宮さん、百葉箱には鍵をつけておきます。予備の南京錠が職員室の備品置き場にあったはずですから…」


「そっか。それなら安心…かな?」


「…」


「それにしても、すごいね。

 七不思議って本当に過去を変えられるんだね?

 僕は、先生と同じだけ見てるから、あと2つって事だね」


 残された不思議は邪と我魔の2つだけだ。


 こうして見ると、リスクがありそうな2つが残ってしまったようだ。

 それに、なんとか遭遇できたとしても、試練のリスクが半端なく高い。


 まるで七人ミサキの話みたいだ。

 輪廻の輪って…。

 普通に考えると、転生の事だろう。

 妖がいるんなら、そういうのもあるのかもしれない。

 そうなると、試練に失敗したとしたら、転生することなく、ここの妖として生きるという事になるのか…。


 転生自体が、突拍子がなさすぎて、いまいちピンと来ない。


 私は、真琴の死を覆す事が出来るのだろうか?

怪4完

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