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福徳小学校の七不思議  作者: スネオメガネ
怪4 箱の中の賢者
17/35

百葉箱とプリント

 プリントだ。


 百葉箱に付き物の温度計、湿度計の隙間にプリントが置かれていた。

 ご丁寧に鉛筆も置いてある。


 なんで、百葉箱なんかにプリントと鉛筆を?


「何見てんの?」


 扉を開けたままの姿勢で固まっていると、背後から子供の声がする。

 ギギギという効果音のしそうな動きで首を動かすと、篠宮少年が不思議そうな顔で覗き込んで来ていた。


「…いや、プリントが…」


 そこまで言って、どう言えば良いのか、わからなくなる。


 宿題忘れの常習犯を追って来たら、百葉箱の中にプリントが置いてあった。


 簡潔に言うと、そういう事なのだが、我ながら訳がわからない内容だ。


「これ、夏休みの宿題?」


「…」


「ここ、プリント置いとくと、なんかあるの?」


「…」


「ねぇ、なんでプリントが置いてあんの?」


「…」


「先生が置いたの?」


「…」


 矢継ぎ早に質問が飛んでくる。


 とりあえず、無言で扉を閉め始める。


「ねぇ、なんで閉じちゃうの?」


 扉を閉め終わったところで、質問に答える。


「…正直、状況はよくわからないんです。

 ただ、これは私のクラスの子が置いていったものなんです。

 だから、一度状況を整理して、対応を考える事にします」


 困ったまま、篠宮少年に伝える。


「ふ〜ん、回収しなくてもいいの?」


 そう。


 確かに回収した方がいいのかもしれない。

 だが、後藤少年の願掛けのような行動から、本人にとって、この行為には意味がある事なのだろう事が想像できた。

 だから、少し様子を見た方がいいのかも…と思ったのだ。

 ただ…、プリントには触れない方がいいような気がしたのも事実だった。


 あくまで、気持ちの問題だが…。


「回収して、私が預かっているという内容のメモを置く事も考えましたが、少し様子を見て、次の登校日に事情を聞いてみようと思います。

 勝手にプリントを持っていくと、傷付くかもしれないので…」


「ふ〜ん」


 興味のなさそうな返事が聞こえる。


「さ、行きましょう!」


 気を取直して、篠宮少年にここから去るよう声を掛ける。


 篠宮少年も、素直に運動場へ向かおうとした時、微かに音が聞こえた。


 篠宮少年の足が止まる。


 私も無言で振り向く。


 音は、百葉箱の方から聞こえて来たからだ。


 カ。


 カカカ。


 なんの音だろう?


 どこかで聞いたことのある音だった。


「…なに?…この音…。

 何か書いてる音みたい」


 篠宮少年の言葉に妙に納得した。


 そう。何かを鉛筆で書いている音のように聞こえる。そんな音が百葉箱から聞こえてくるのだ。


 百葉箱の中に置かれていたプリントと鉛筆が脳裏に浮かぶ。


 …まさか、ナニかがプリントをやっているのか?


「ねぇ…、開けてみようよ」


 篠宮少年が、私の服を掴みながら呟く。


 開ける?


 この扉を?


 ゴクリ。


 自分の喉が鳴る音が、大きく響いた気がして、篠宮少年の反応を見てしまった。


 コクリ。


 篠宮少年が頷いた。


 …仕方ない。


 覚悟を決めて、ため息をつきながら、扉に手を掛ける。


 もう一度、篠宮少年を見る。


 コクリ。


 再び、篠宮少年が頷く。


 それを見て、一気に扉を開ける。


 …そこには異様な光景があった。


 赤茶色の毛に包まれた手が、鉛筆を持ち、プリントに何かを書いている。

 手は、肘あたりから先のみで、空間から生えているというよりも、手だけがそこにある感じだった。

 決して、綺麗な持ち方ではない握り方で鉛筆を握り、ものすごい勢いで、何かをプリントに記入している。


 なんだ?これは。


 私は、篠宮少年とともに、何も言えないまま、その光景を見続けていた。


 不意に、手の動きが止まった後、再び動き出し、鉛筆をプリントの上に置くと、手は消えた。


 消えた。


 文字通り、消えたのだ。


 手の先から消えるのではなく、全体的に透けていき、最後には見えなくなったのだ。


「…消えた」


 篠宮少年の声に、ようやく我に帰る事ができた。


 なんだったのだろう。


 プリントを見てみると、全ての解答欄が埋まっていた。


 そして、プリントの最後に書かれている文字を見て、思わず寒気がした。


『あと3回』



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