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第64話 試合開始

ショウが大会に出場を決めた数日後、流れ島の町は大会の準備が完了して町を挙げたお祭り騒ぎとなっていた。

町の中心にある闘技場のは、大量の人でごった返しておりこの大会がそれだけ人気の大会だという事がよくわかる。町の住人がほぼ全員といっていいほどこの会場に押し寄せていた。


10年に一度の闘技大会、今回の目玉は何と言っても優勝候補の勇者の存在である。勇者がどんな人間なのかどのような強さなのか、どのような戦い方をするのか皆の注目はそこに集まっていた。


「ほえ~!すごい人だねショウ。」


「ほんとだね。カオス、迷子にならないようにしっかり手を握ってるんだよ。」


「うん、パパ。でも私お子までお子様じゃないよ?」


「あはは、そうだね。でもいなくなったら困るから。」


「うん、わかった。」


ショウは美沙とカオスの手をしっかり握り選手用の控室に入っていった。マリやゼスト、ユカリ、リナも一緒である。


「ショウタン!絶対優勝するのじゃ!」


「ショウさん!カオタンのために頑張ってください!」


「ショウ、まぁ頑張りなさい。」


「ショウ!あまり気張らずに気楽にいけ、お前なら間違いなく優勝だ。」


みんなに励まされてショウはやる気満々である。


「第一試合出場選手のショウさんお時間です、会場までお願いいたします。」


係員に呼ばれてショウは「よっし!」と気合を入れた。


「ショウ!」


「パパ!」


「「いってらっしゃい!」」


ミサとカオスに元気よく「行ってきます!」とバリサルダを振り上げ会場にと控室から出て行った。


闘技場は完全に満員である。そして観客の熱気もものすごい。もちろんこれは賭け事として町の活性化にもつながっている。自分が信じた選手に皆が自分の今まで頑張って貯めたお金をかけるのだ。


突如として現れたアナウンサーのミュウが円形状の闘技場の真ん中に立ちマイクを構える。

闘技場はどれだけ暴れてどんな魔法や攻撃を繰り出しても特殊結界により観客に被害が出ることはないようになっている。ただし、闘技場の中に入るのは簡単であるが出ることはなかなかできない設計だ。其れはなぜかというと、闘技大会が開かれないときはモンスターと冒険者や闘士たちの戦いの場となるためモンスターが万が一逃げ出せないようにするためである。


『さぁみなさん!ついにこの時が来ました!10年に一度の闘技大会!血肉沸き踊る猛者たちの雄姿を目に焼き付けろ!』


ネコの獣人のアナウンスが会場内に広がり観客から『うおぉぉぉぉぉ!』という雄たけびが一斉に広がる。


『さぁ!今から始まる第一試合の対戦者を発表するよ!第一試合青コーナー!犯した罪は数知れず!卑怯な手だって勝てばよし!流れ島の町の荒くれ魔獣!ツアームス!』


『うぉぉぉぉぉ!』


青く塗られた闘技場の出入り口から拳を作った片手を空に挙げてライオンのような(たてがみ)をなびかせた獣人が入場してくる。体はごつくムキムキでレベルもそれなりに高い。ツアームスの武器は2メートルあるツアームスより長い大剣である。切れ味はあまりなさそうだ。


『挑戦者は・・・赤コーナー!なんと!人間の剣士の挑戦だ!こいつは無謀としか言えないぜ!経歴を見ると・・・なになに?冒険者になったのが一年前!?無謀にもほどがあるぞ!大丈夫か!?とにかく頑張ってほしい!冒険者ショーーーウ!』


『がんばれー!』『負けてもいいんだぞー!』『お家に帰ってママのおっぱいでも飲んでなよー』

『殺されるなよー』


などなど、応援といえないような声援が観客席から笑いに交じって飛ばされてくる。


『それではこれより第一試合を始めたいと思います。解説のミサーラさんよろしくお願いします。』


「よろしくお願いします。」


ショウは解説者席を見てびっくりしている。そこには先ほど闘技場の中央でマイクを使っていたミュウと美沙が座っていた。ショウの目は「え?なんでそこにいるの?」そんな目だった。


頭の上にはクーがピタンと張り付いており、ショウを見てペロッと舌を出してウィンクした。解説者席の隣には少し豪華な席が作られており、カオスたちがちょこんと座って「なはははは」と笑っている。


『それでは選手の方たちルールの再確認をさせていただきます。ルールは簡単、何でもありのバーリトゥード、魔法、剣、その他もろもろの使用が可能です。勝利条件は相手が戦闘不能になりさえすればOK!死んでしまった場合も戦闘不能とさせていただきます!戦闘不能の判断は結界に仕込まれている術式で判断させていただきます。戦闘不能になりますと結界のスクリーンに戦闘終了の文字が出ますので其れが判断基準となります。何でもありですから!思う存分力を出して戦ってください!それでは試合開始!』


アナウンスの開始の声でツアームスとショウが戦闘態勢になり剣を構える。


「おい兄ちゃん、かわいそうだから初手はお前にくれてやるよ。さっさとかかってきな。」


ツアームスがショウに向かって話してくる。ショウは黙ったままツアームスを見つめている。


『おや?ツアームス選手がショウ選手に初手を譲るようですよ?解説のミサーラさんどうみますか?』


「そうですね、ツアームズさんは自分の体に絶対の自信を持っているんでしょうがそれは相手の力量がわかっていないからでしょう。本来であれば相手の力量を見抜いてどのように戦うかを計算して攻撃に移るのですが、まぁただの脳筋としか言えないですね。」


『え、えっと・・・ミサーラさんはツアームス選手が負けると予想ですか?あんなムキムキな筋肉で攻撃されたらショウ選手は一撃でダウンしちゃいますよ?』


美沙はすこしだけため息を吐くとアナウンサーのミュウを見る。


「いいですか?ミュウさんどんなにムキムキな筋肉があってどんなに攻撃力が強くても、当たらなければただの無駄な攻撃ですよ?万が一当たれば一撃必殺になるかもしれませんが今回の対戦相手であるショウ選手はスピード型の様です。この対戦もしかしたら大番狂わせがあるかもしれませんね。」


そんな放送が会場に拡声器によって放送される。この放送は闘技場の二人には聞こえないようになっている。なぜならこの放送で気を散らしてしまわないように配慮した形となっている。


「いいんですか?僕の剣は重いですよ?」


「ハッ!この俺様をなめんな、お前みたいなひょろいやつに倒される俺様じゃねぇよ。それとも俺様のこの素晴らしい筋肉を見てビビったか?お家に帰ってママに泣きつきな!」


「わかりました。」


ショウが返事をした瞬間だった。ツアームスがびっくりした顔をしてあたりを見回す。


「ど、どこに行った?!ガハッ・・・」


ツアームスはその場に膝から崩れ落ちる形となる。ツアームスが持っていた大剣だけが闘技場の地面に突き刺さっていた。

ショウはツアームスの後方にものすごい速さで移動していた。その移動の瞬間にツアームスをバリサルダで、殺さぬ程度に切って戦闘不能にしたのだった。


『え?はい?あれ?ツアームス選手が倒れていますね。・・・あれーーーー?!皆さん!スクリーンにご注目ください!戦闘不能の文字が浮かび上がりました!勝者!冒険者ショーーーーーーーーーウ!』


静まり返った会場は一気に雄たけびが上がる『うぉぉぉぉぉ!』

大番狂わせのショウの勝利にみんな自分が賭けた紙を天高く振りまき勝利の紙吹雪のように見えた。


『解説のミサーラさん、いったい何が起こったのでしょうか?!』


美沙は少し間をおいて話し始める。


「そうですね。すれ違いざまの斬撃とでもいうのでしょうか?ショウ選手がものすごいスピードで駆け抜け、すれ違う瞬間に剣で一撃お見舞いしたといったところです。」


『まさか!?あの筋肉ですよ!?たった一撃ですか!?』


「先ほども言いましたが、どんなにすごい筋肉でもあのスピードの一撃なら多少鍛えたぐらいでは意味がないですね。んーしいて言うのであれば威力的には最上級ドラゴンの遠心力が乗った尻尾攻撃といったところですかね?」


『まさか・・・あの小さな体でそんな強力な攻撃力があるなんて・・・恐るべしショウ選手!この後も快進撃を頑張って続けてほしいと思います!もう一度言います!勝者は冒険者ショーーーーーーーーーウ!』


こうして闘技大会が始まった。


「ちょっとママ!なんかいつもとキャラが違うんですけど!」


「え?だって解説者だしまじめにやったほうがいいかな~っと。」


美沙が頬をポリポリかきながら明日の方向をみて、ちょっと考えるのだった。

(^^ゞ「やべ・・・まじめにやりすぎた・・・」byミサーラ

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