第63話 覚悟
ダッシュでいなくなった町長を見ながらショウたちはとりあえず言われた通りにその場で待機することにした。することも無くただ街を眺めるだけの時間ではあるが、美沙とショウとカオスはレジャーシートのようなものを敷いてお茶をしながら待つことにした。
「・・・」
「どうしたの?ミサ?」
「え?あ、うん・・・」
「ママ?」
「ううん、なんでもないの。ただちょっとね、この街のこの風景見ていたら今までいろんなことがあったな~って。」
「確かにそうだね。」
「うん」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
三人は何事もない平和な日常を過ごす町の人たちをみて各自が思い出にふけっていた。
「ね~美沙ー!このあとカラオケ行こうよ!」
「はぁ?!昨日も行ったじゃん!」
「昨日は昨日!今日は今日!結衣たちも行くって言ってるよ!」
「私今日はパス、夕飯の買い物して帰らないといけないし」
「え~いーこーうーよー!」
美沙の脳裏に前世の記憶が蘇ってくる、何気ない日常の何気ない会話、そんな当たり前だったことが今では懐かしく思えてくる。
「ちょっとシオン!その草は食べれませんから!」
「何言ってんだショウやろうと思えば人間なんだってできる!なんだってくえる!」
「あ!ダメだってシオン!ミポリンさんからも何か言ってください!」
「え?ふぁひぃふぁひぃっふぁ?」もきゅもきゅ
「って!ミポリンさん?!たべてる?!その草は下剤のもとになるやくそうなんですからぁ~!」
その後二人はトイレと三日間仲良くすごした。そんな光景をショウは少し思い出して苦笑いした。
「お父さん!お母さん!お使い行ってきたよ!」
「お帰り※※※、ずいぶん早かったわね。」
「うん!急いで帰って来たんだ!」
「どうした?おぉ!※※※もう行って来たのか!ずいぶん早かったな!」
「お父さんおひげ痛いよ~!」
「そうか!でもな、男ってやつは馬鹿でこれがしたいためにひげを伸ばしたりするんだ。」
「あなた!※※※に行ってもわからないわ、そんなことよりご飯にしましょ、今日は※※※のだ~い好きなオムレツよ~!」
「やった~!お父さん早く!早く!」
三人は仲良く食卓を囲み、笑いが溢れる光景がカオスの脳裏に浮かんでいた。もちろん数百年、数千年前のことであり、カオスはこれがいつの思い出なのかは思い出せないが、自分にとってとても大切な記憶であることは間違いはなかった。
「どうしたのショウ?苦笑いなんかして。何かあった?」
「え?あぁ、いや、ちょっと昔のことを思い出しただけだよ。」
「そっか、私もちょっと思い出してた。」
「パパとママも?実は私も・・・」
三人はお互いの顔を見て笑顔になる。みな自分にとって大切な思い出があり、忘れることができない思い出であることも確かであった。
「僕ね、今のミサとカオスを見て再認識したよ、この世界は争いなんてものはないほうがいい、いや、どの世界だってそうだと思う。」
「「うん・・・」」
「だからね、今まで自分が勇者だなんておこがましいと思っていたけど、これからは勇者としてちょっとだけ頑張ってみようと思うんだ。」
「ショウ・・・」
「パパ・・・」
拳をぐっと握ってその拳をショウがじっと見つめる、ショウの中で決意が固まった証拠だ。その拳にすっと二人の手が重なり合う。ショウはハッとして二人を交互に見返す。
「ショウだけに背負わせないよ、私たちみんなで、だよ。」
「そうそう、パパだけ頑張ってパパだけ苦労しても意味ないんだよ。ね?ママ?」
「そうゆうこと、だからね。わたしもカオスもほかのみんなだっているんだから大丈夫!この平和な時間が続く世界を私たちみんなで作っていこう。」
ショウは二人の笑顔をみてうなずいた。今までみんなで困難を乗り越えてきた。最初は美沙、マリ、ショウから始まったこの旅も仲間がどんどん集まった。こんなにも頼もしいことはない。自分の目指す道も見つけた。あとは・・・そこに向かって歩くだけ。
「そうだね!みんなで頑張ろう!」
三人は笑顔で笑いあった。そんな時だった。
「お待たせいたしましたぁぁぁぁぁぁ!」
叫びながら空から大急ぎで降りてきたのは町長のユンだった。
「たたた、大変お待たせいたしました!皆さんのお泊りになるお部屋をご用意させていただきましたので!どうぞこちらに!」
ユンは血相を変えてあわただしく身振り手振りで宿を案内する。その場にいた美沙達一行はやれやれといった感じでユンの後をついていった。
「そういえば今年の闘技大会には30年ぶりに闘技王様が帰ってこられるそうですよ。それと、先ほど勇者様と名乗る方もエントリーしたとかで。何やら面白いものが見れそうです。」
「え?!」
ショウが驚く声を発するとその場にいた全員がショウを見る。ミサ、マリ、ゼスト、カオス、リナ、ユカリが何してんだこいつ?といった目で見ていた。
「してないですよ!?エントリーなんて!僕してないです!」
「ショウ様は確かにエントリーしていませんね。勇者様といったのになぜ皆さんショウ様を見るんですか?ショウ様が勇者様のわけないじゃないですか。」
何も知らないユンはケラケラ笑いながら手をひらひら振っていた。
「ちょっとショウ、どうゆう事?」
「わからないよ!誰か勝手にエントリーしたんですか?!」
全員見ても全員が首を横に振る。
「あれだな、こりゃショウがエントリーしてその勇者様の存在を確かめたほうがいいかもな。」
「確かに、またあのシオンとか言う偽勇者みたいなのが現れたら面倒だしね。ショウ、あんたエントリーしなさい。」
「ゼストさんもマリさんも何言ってるんですか!こんな時に!」
ゼストとマリがショウに向かって参加を促す。
「パパ頑張って!」
「ショウならやれる!」
何故か参加確定に美沙とカオスの一言でダメ押しされた。
「ショウタンのかっこいいところみたいのじゃ!」
「そうですね・・・カオちゃんが応援してますから死んでも優勝してください。死んでも。」
マリとユカリに脅迫されて決定した。
「という事で町長さん、うちのショウがその大会に出ますのでエントリーお願いします。」
「え!?出られるんですか?!やめたほうがいいですよ~ショウさんみたいなひょろっとした剣士の方は、大体が初戦敗退しますからね~。」
その一言でショウが出る気になったのは間違いない。
「エントリーお願いします。そしてひょろいとか言わないでください。」
さすがのショウも少し頭にきて自分から参加することにしたのであった。




