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第62話 流れ島の町

ゼストのイタズラも終わり船は目的の島のすぐ近くまで来ていた。

マーメイドラグーンを出発してから、はや三日、島が見えてきたことにより美沙は興奮していた。


「ねね!島が見えてきたよ!あの島だよね?!」


「ほらもーみさっちったら、そんなにはしゃいでいると落っこちるわよ。}


はしゃぐ美沙をマリが宥める、内心みんなワクワクしている。封印された島、犯罪者の多い島、何よりもショウの父親がいるかもしれないという島での少しだけの冒険に。


「おい、お前たち少しは緊張しろよ!」


「はぁ?ゼストは緊張しすぎなんですけど。」


「お前は緊張しなさすだろ!」


ゼストは慎重派、美沙はお気楽。その他みんなでこの二人のやり取りを見るのももうこなれたことである。そんな事を言っているうちに船は島に着岸する・・・なにか様子がおかしい。何も無い島のはずがか普通に港が有る・・・流刑の地として聞いていたにもかかわらず発展している。家があり人がいて街がある。あっけに取られた乗組員全員が口を開けて惚けていた。


「ちょっと!なにこれ?!ショウどういうこと!?ねぇ!」


「ちょ!ミサ!そんなに激しくしないで!」


美沙がショウの首をブンブンと振り回しショウの目が回るくらいだった。船はそのまま着岸して港に入る、すると出迎えの人達が万遍の笑みで手を振ってくる。獣人もいれば魔人もいる中にただし人間の姿は一切見えなかった。ここは間違いなく魔物だけの町であった。着岸した船がよほど珍しいのか、住人たちがワラワラと集まってくる。

そのうちの数人が前に出てお辞儀をする。それはそれは丁寧に客人を向かい入れる為のお辞儀といった感じだった。

出てきた魔物は4人、一人はゴリラのような容姿に角が生えていて、全身毛むくじゃらの上にスーツを着込んでいた。


「これはこれは人間の皆様、よくぞいらっしゃいました。流し島の町の町長をしているユンといいます。」


りゅうちょうな言葉であいさつして来たのは、4人の中でただ一人の女性悪魔型の魔人ユンだった。


「今回は何の用でこの島を訪れになったのでしょうか?」


こちらは代表して、船長がユンに恐る恐る挨拶をして、雪不動に向かうための途中に立ち寄った経緯を話す。


「そうでしたか、皆さん長旅ご苦労様でした。今夜は町の宿でゆっくりとお過ごしください。」


ユンはそういうとほかの三人の元に戻り、状況を説明して積み荷の準備をさせ始めた。

ほかの魔人たちは一度うなずくと集まってきていた数人の魔人に声をかけて買い出しや船の整備のためにドッグを用意させる準備に取り掛かる。

そんなこんなであわただしくなった流れ島の町は歓迎ムード一式となる。手配が一通り終わると、ユンが美沙達の前に戻ってきた。


「あなた方も船員さんなのですか?」


「いえ、私たちは雪不動に行くのにのけてもらっているだけで。」


「そうでしたか、そちらの殿方は・・・剣士様でしょうか?」


「僕ですか?」


「えぇ、貴方です。剣士様にしては帯剣していないようですし、間違えていたらごめんなさい。」


「あってます、でも、剣はちょっとした事情で今は持っていないんですよ。」


幼女の姿をしているカオスをショウは「なははは・・・」といいながらチラリとみる。カオスは無邪気にクーと追っかけっこしていた。


「そうでしたか、実は今年10年に一度のお祭りがありまして、あそこのコロシアムで強者NO.1決定戦を執り行うのです。もしよかったら参加でも見学でもしてください記念になると思いますので。」


「面白そうだな、ちょっと見に行ってみるか。」


「ちょ!ゼストさん!そんなことしてる暇ないですよ!」


「いいじゃないかショウ!お前ならきっといいとこまで・・・いや、優勝できるんじゃないか?」


「あら?そんなにお強いのですか?」


ゼストの優勝できるという言葉にユンが反応する。

そりゃそうだろう、真勇者であり、今まで異世界の魔王と呼ばれる猛者たちをショウは倒してきている。レベルも人知を超越してほぼ誰もがショウに勝てるような要素はこれ一つ何もなくなっている。ある一人を除けばだが。


「えーショウ君が出るなら私もやってみようかな?!」


「なに言ってんの!?ミサが僕と当たったらまず僕勝てないんですけど!」


「なに弱気になってるショウ!ミサッチなんかコテンパンにのしちまえ!」


「ゼストさんも何言ってるんですか!ほらミサッチが起こってゼストさんのうしろ・・・あ・・」


瞬間移動か!という速さで美沙がその場から一瞬でいなくなり、ゼストの後ろに回り込んで、思いっきり上級光魔法「光の槍(ランサーレイ)」を数発無音でゼストに浴びせる。今のゼストならこれぐらいの魔法では死ぬことはないと分かったうえでのことであった。ちなみに一般人がこの魔法を食らえば最悪の場合、命を落とす危険性もあるという話は聞かなかったことにしておこう。


「ミサッチ!やりすぎよもう!いくらゼストがあほだからって、いちいち本気にしてたら、あんたまでアホって思われちゃうわよ?いいの?」


「だってマリ!」


「だってじゃないでしょ!?いいの?」


「よくない!私あほじゃないし!アホなのはゼストだけで十分だもん!」


今までの一連のやり取りをユンは何この化け物どもといったような表情で口を開いたままじーっと見ていた。


「あの、大丈夫ですか?ユンさん?」


「ハッ?!あ、すみません!殺さないでください!私何もしてません。」


「あの、僕らそんなことしないですから。」


「今すぐあなた方の部屋を用意しますのでこちらで少し、いえ、ほんの少しお待ち下し!本当にすぐ戻りますので!」


「そんな、大丈夫ですから。」


「本当にすみませんでしたぁぁぁぁぁ!」


ユンは脱兎のごとく猛スピードで最高級ホテルのある方角に翼を広げて飛んで行った。その際、ユンの心の声が駄々洩れになっていた。


「いやぁぁぁ!何か経ましたら絶対の殺されるぅぅぅぅぅ!」


そう叫びながら空を飛ぶユンがその日町中で目撃された。



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