第32話 人間だって魔族だって同じなんだよ!
今回はちょっとショウの過去に触れています。
お楽しみください。
情報収集に来ていたショウとゼストはギルドマスターの好意で近隣の情報をすべて余すことなく集められたのであった。
①モンスター異常発生
②モンスター高レベル化
③グレリア山頂上に現れた城の偵察
などなどショウたちの知らない情報が沢山出てきたのである。中でも今まで見た事の無い異形なモンスターが異常に多く発生しており、冒険者だけでは対処できない事態まで発生しているところもあるとのことだった。
「というわけなのですゼスト様」
「うむ、とりあえず伝令で城の警備をこの町に回せるように手配はしておく。他に何か変わったことなんかはないのか?」
「そうですね・・・あ、そうだ!おいきみ!例のあれを持ってきてくれないか?」
マスターが受付嬢に何かを持ってくる指示を出すと受付嬢はすぐにものを取りに行く。
そして受付嬢が持ってきたのは汚いリュックとボロボロの剣、そして紙屑だった。
「これは・・・ゼストさんなんですかね?」
「あぁん?俺が知るか、マスターこれについて説明しろ。」
「は、こちらなのですが、頂上の城に偵察に行ったものが持ち帰ったものです。」
「なんでこんなきったないもん・・・この紙屑は・・・おい!ショウ!これ見ろ!」
「どうしたんですいきなり・・・これ!ナタールさんへの手紙ですね!」
紙屑に書いてあった内容は
ナタールすまない、私は騙された、あの女に。
私の体に何かが入って私を消そうとしている、この衝動は抑えられない。
もし私が私でなくなった時は私を殺してくれ。
君にこんなことを頼むのは心苦しい、しかし、君にしか頼めない。
本当にすまない・・・私の意識はもうすぐ。
愛しているいつまでも・・・
手紙はそこで終わっていた。
ゼストは手紙を読み終えるとボロボロの剣を取り剣に刻まれていた紋章に目を移した。
「これは・・・」
「こちらで鑑定をした結果、古の王朝『ガルマザール王朝』のものと思われます。」
「なんでこんなものがここにあるんだ?おいマスターこの荷物、俺の知り合いに心当たりがある。一度預からせてもらってもいいか?」
「えぇ、かまいませんよ?」
「それと、今、このギルドにどれぐらいの戦力がある?」
「えぇっと・・・たしかSクラスが2名、Aクラスが5名、Bから下は全部合わせて50名ほどだったと思います。」
「っち、意外と少ないな。まぁいい、全員を明日の朝までに集めろ、あの城を攻略する。」
「な!?・・・わかりました!我が国の王がそういうのであれば、必ずや!」
そういってショウとゼストはギルドを後にしホテルに戻った。
ホテルに戻ると、浴衣姿の美沙たちが腰に手を当てて牛乳のようなものを飲みほし「ぷっは~!」と息を吐き出した。
「ミサの浴衣姿・・・破壊力抜群・・・」
「あショウ!・・・エロショウになってる・・・」
「ショウたん!私のはどうなのじゃ?」
「う、うん、リナも似合ってるよ。」
「で?なにか収穫はあったの?ゼスト。」
「あぁ、これを見てくれ。」
そうしてショウが持ってきたカバン、剣、手紙をナタールの前に差し出した。
ナタールは黙って手紙を読むと涙を流しながらカバンと剣を手に取り声を殺して泣き出した。
「明日、朝一で城に攻め込もうと思う、反対の奴はいるか?」
皆無言でナタールを見ている。
ほんの少ししか一緒にいた時間はないがナタールの身の上話や思いを全員が真剣に受け止め心の奥底で怒りに火をつけていたのである。
「作戦を考えました、僕とナタールさんそれとミサとクーちゃんでリナに乗り城まで突撃します。ゼストさんとマリさんフィア、アカネさんは町の守りに回ってください。それから三日月さんはちょっと酷かもしれませんが、町の外で僕らの進行を邪魔するモンスターの迎撃をお願いします。僕らが城に潜入したら町に戻ってゼストさんと合流してください。それから・・・聡子さん、隠密行動で上空からではなく地上から城の様子を確認してください。」
全員が頷く。
「城の中の魔物などの数、攻め具合などによってはギルドの冒険者たちに町を任せます。その後僕ら全員で城の攻略に当たります。タイミングは聡子さんにお任せします。そして、魔王は僕が相手をします。」
「はぁ~・・・あのショウがこんな立派になって、ママはうれしいねぇ。」
「ちょ!マリ!こんな時にいきなり何言ってんのよ!」
「だってみさっち!考えてみなよ!あのショウだよ?出会ったころのショウったらもう。ぷぷっ!」
「そりゃ仕方ないじゃないですか!あのころは何も知らない駆け出し冒険者だったんですから!」
「そういえばそうだよね~ショウったら・・・ぷぷっ!」
「ミサまでひどい。自信なくなってきました。」
「おまえらわ~!いつもかわらないよな~!」
「変わるわけないのじゃ!これがみっちたちなのじゃ!」
真剣な話も終わり、ナタールを慰め明日の朝のために皆が早めの休養をとる。
各自部屋に帰ったが、ショウは眠れず一人で素振りの稽古に出かけていた。
「・・・・・魔王かぁ・・・」
「僕ももっと頑張らないと!」
そんなことを一人でぶつぶつ言いながら剣を振り続ける。その時。
「ショウ様・・・」
「わ!な、ナタールさん?!」
「驚かせてしまってすみません。あね、どうしてもお話ししなければと・・・」
素振りをやめ、月夜に照らされた岩の上でショウとナタールは話を始めた。
「魔王は・・・ディアトは私が倒します。」
「・・・」
「彼の手紙にも書いてありました。もしもの時は私が・・・」
「ナタールさんもディアトさんもバカなんですか?」
「え?バカって?え?」
「お互い好きで思いが通じてるのになんで自分たちでけじめをつけてさっさと物事を終わらせようとするんです?ナタールさんがディアトさんを殺して、そのあと残されたナタールさんはどうするんですか?」
「ショ、ショウ様?」
「いいですか?僕が言いたいのは好きな人を信じましょうってことです。今は確かに不安かもしれません。それなら可能性を探せばいいじゃないですか。」
「かのうせい・・・」
「そうです!魔王を倒してディアトさんを取り戻す可能性!僕は諦めてません!だからナタールさんに魔王の相手は任せられません!」
「ショウ様・・・」
「じっさい、そんな可能性があるのか、正直僕もわかりません。でも、ないよりもある方に掛けましょうよ!魔王を倒してみんなでハッピーエンド!僕の作戦はこれができては初めて終わりを迎えれるんです!」
「ショウ様は・・・なぜ私のような見ず知らずの魔族にそんな風に優しくしてくれるのですか?魔族は人間の敵、それが一般常識なはずですが・・・」
「僕の村は・・・魔族に滅ぼされました。」
「え?」
「僕は昔から剣士になりたくて村を離れて自分の練習場という名の草原でいつも一人で剣の練習をしていたんです。ある日いつもより練習の時間が長引いてしまって、急いでむらにもどると・・・煙が上がっていました。すぐに村に行き中の様子を見ると魔物を4対ひきつれた魔族が目の前で村を破壊していました。僕の村は田舎で、冒険者も良くてCランクの人が数人いた程度です。冒険者の人たちは自分に手におえないことがわかると、一目散に逃げ出しました。僕も足が震えて動けませんでした。その時魔族が僕に気付き向かってきたんです。怖かった、逃げ出したかった、殺されると思いました。魔族の手刀が僕の目の前に来たとき、誰かが目の前で微笑みました。『無事でよかった・・・逃げなさい・・・』そういった人は・・・僕の母でした。無我夢中で魔族に僕は切りかかり・・・そのご意識を戻したときには魔族はいなくボロボロの村だけがのこっていました・・・」
「そんな・・・」
「誰か生きている人はいないかと村中を探し回りました。魔族を憎みながら、叫びながら・・・生きている人は誰もいないと思いました、そして母の前で僕は泣きました。必ずこの世から魔族を滅ぼしてみせると母に誓いました。すると、母はかろうじて生きていたんです、手刀が命中したところはギリギリ急所を避け、僕は以前薬屋のおやじさんがエリクシールを手に入れたと喜んでいたのを思い出してすぐに探しにい行きました、無事エリクシールを手に入れて母に飲ませると、みるみる傷がふさがっていきほどなくして会話もできるようになりました。母が生きているというだけで僕は泣き崩れ母に抱きつきました。町はめちゃくちゃになってしまいましたが亡くなったみんなの墓を母と二人で作り、壊れていない家で二人で生活をし始めたんです。」
「・・・ショウ様」
「僕は母に言いました。『僕は旅に出るよ、そして必ず魔族を滅ぼすんだ!』と、母も喜んでくれると思ったんです、魔族が居なければ争いなんて起こらないのだから。しかし母からかえってきたのは力いっぱいこめられた平手打ちでした、『あんた!自分で何言ってるのかわかってるのかい!?』僕は訳が分からず母を見返しました。『人間だって魔族だって同じなんだよ!悪いやつもいればいい奴だっている!家族を持ってる奴だっているんだよ!そんな何もしない悪くない魔族もあんたは殺すのか!?だったらこの間来たやつとあんたはおなじだね!お前なんか助けるんじゃなかったよ!』母は目に涙をいっぱい貯めて僕を叱ってくれました。あの時、母に何も言わずに旅立っていたら僕は善良な魔族も平気で殺し、あの魔族と同じになっていたでしょう。そして、僕は旅立ちます。勇者シオンという仲間に誘われて、そして旅立ちから三日後にミサたちに出会います。僕は母の言葉を絶対に忘れません。だから、貴方をほっておくことなんてできないんです。それに僕は・・・魔族に、ミサに恋をしちゃいましたからね・・・えへへ。」
「そうでしたか・・・本当にありがとうございます!私もこの戦いで何が何でも生き延びてディアトを取り戻します!そしたら!魔族と人間が仲良くなれるように私もお手伝いします!いえ、是非させてください!」
「はい!よろしくお願いいします!・・・もう遅いですし、戻りましょ・・・あ。」
ショウが立ち上がり後ろを振り向くと美沙たち全員が体育座りをしてハンカチを目がしらに当てていた。
「ちょ!皆さんいつからいたんですか!?」
「えぇ・・・と『魔王かぁ・・・』ってとこらへん?だよねみさっち?」
「う゛ん゛!だじが、ぞのあだりがら・・・ショウ、づらがっだねぇ・・・」
「初めからじゃないですか!!」
そんなやり取りをしてまた夜中にぎゃあぎゃあ騒ぎ最終的には笑顔に囲まれて・・・ショウはこの仲間に出会えたことをいつか母に紹介しに行きたいと思っていたのだった。
決戦はもう数時間後、ショウ達は改めて覚悟を決めたのであった。
次回から大決戦?を想定しています。通常会話が多くなるようにしていますが、たぶん・・・・
次回もお楽しみください。




