第29話 勇者召喚の失敗作
連続投稿5本目になります。次回から毎週金曜日の夜23:00前後にUPしていこうと思います。
再会を果たしたナタールとクレアおばさんは少し話すとまたナタールの話に戻るため一つだけ約束をした。
「ナタちゃん、必ず帰ってくることだけおばちゃんと約束しておくれ!必ずだよ!」
「うん、ありがとぅ・・・クレアおばちゃん・・」
そういってもう一度抱き合うとクレアおばさんは手を振りながら店の外に括り付けた馬の手綱をも引いて村に帰っていった。
「みなさんすみませんでした、えっと、どこまで話しましたっけ?」
「ナタァールゥ~!よかったね!ほんとよかったね!」
「ありがと聡子、でもまだ終わったわけじゃないから・・・・あ、そうでした。私と聡子は融合をしました。もちろん見た瞬間の聡子が今にもとけてしまいそうだったのと私の鑑定眼で見た聡子のスキルをお借りするためでした。聡子のスキルは完全隠密・・・誰にもきずかれることなく相手の近くによることができますので。ショウ様には見破られてしまいましたが・・・この力を使って私は聡子の記憶を頼りにデカルーデンへ戻りました。そこでゼスト様のお父上とお会いしたのです。」
「そうか・・・」
「私は、いえ、聡子は勇者召喚の失敗作として扱われていました。完全隠蔽の能力も始めてきた世界でうまく使用できずに・・・そんな時にお父上様は使えない聡子の処分を考えたのです。ワザと魔族の多いところに聡子を連れ出し、不完全な隠蔽で聡子は魔族にとらわれ、何かしらの術を掛けられた結果が私と融合する前の聡子だと分かりました。」
「・・・デガルーデンへ・・・この件が全部片付いたら一度戻るぞみんな。」
「そうね、ゼストならそういうと思ったわ。」
「そしてあの日、私は皆様と出会ったのです。聡子のことを知っているミサーラ様には驚かされました。ここで計画がばれては元も子もなかったので・・・あとは皆様が知っているとおりです。」
「・・・ごめんねナタール、わたし・・・そんなこと全然わからなかった。」
「いえ、私が自分でしたことですから・・・。」
「それを言うなら僕もです・・・あんな風にしてしまってあんな態度をとってしまって・・・」
「しかたないですよ、私がそうけしかけたようなもですから・・・この世界の逆鱗に触れてしまいましたね、あはは・・・」
一通り話し終えると、皆が考え込むように静かになりそれぞれが自分の胸に色々な思いを刻んでいた。
魔物と人の恋愛・・・ショウと美沙、リナも自分たちのようだと。マリとゼストは自分自身の大切な人たちの安否を、フィアはパーティー全員のあり方を。アカネは自分とリナの今後をゲヘゲヘ言いながらかんがえた。
「我が国の人や魔物を見ればもしかしたら良い解決策が生まれるかもしれませんね。」
鬼がもしや、みなこれについて考えているのでは?と思い、皆の安心を得るために発した一言だった。
「そうだね!鬼の言うとおりだよね!っていうか、そろそろ鬼の名前が知りたいんだけど?呼捨てというか、なんだろ?ちゃんとした名前教えてください。」
美沙が鬼に向かって『今かよ!』と言われるような質問を繰り出した。
「私の名前は・・・三日月とかいて『ミツキ』といいます。三日月の晩に生まれたからそう名付けられました。」
「ほぇ~・・・思ったよりもきれいな名前~、てっきりもっとこう厳つい名前を想像してた。」
「こんな美人捕まえていやですよ、みさっちったら。」
何故かそんなことで場を和ます二人、こりゃもう天性の天然としかいうしかないと誰もが思った瞬間であった。
「よし!じゃあ次は・・・みさっちと聡子お前らの関係を聞いてもいいか?」
「え?友達だよ?マブダチ!ね~みさっち~!」
「え・・・うん・・・」
「な!?何その反応!?違うっていうの!?この裏切りものぉぉぉぉぉぉぉ!」
「ちょ!違わないから落ち着きなさいよこのバカ!」
「みさっちがばかっていった・・・・ぐすん」
「はぁ、とりあえずここは私が話すわね。」
「じゃぁ、みさっち頼む。」
「うん。」
そういうと一呼吸すぅ~っと飲み込むとみさっちは話し始めた。
「これは・・・私がまだ、ちいさかった時の話です・・・」
みんなの喉がゴクリという音をならした。
「暑苦しい夏の夜・・・ふと目が覚めた私はトイレに行こうとベッドから立ち上がろうとしました・・・しかし、私の体がなぜか硬直していて・・・動かすことができないほどでした・・・。」
「・・・なぁそれ。」
「私はびっくりして、これはもしや!?と思い周囲をみわたしました・・・やだなぁ~・・・こわいなぁ~・・・そんなことを口にしていたと思います。」
「おい、みさっち?」
「その時でした!急に雷が鳴り響き真っ暗だった私の部屋を一瞬明るく照らしたのです!その瞬間わたしはみてしまったのです!ベットにしがみつく父親の姿を!きゃ~~~~!こ、こいつ!この世のものじゃない!と思ったとき体の自由が一瞬だけ戻り、私はナンマイダブナンマイダブといいながらベットにしがみついた父親に最上級の爆炎魔法と氷雪系魔法をぶっ放していました・・・いまでもおもいます・・・あの時のあれはなんだったのかと・・・。」
「みさっちの淳二おもしろい!ちょっと鳥肌立ったよ!あはは!」
「いや~そんなに褒めたって何も出ないよ?聡子~・・・向こうからスーッスーッとくるんですねぇ・・・
私分かった!これ間違えてたら私殺されます!わたしほんとにわかった!ここで殺されたのは、自殺したオーナーの奥さんの叔父さんだ!間違いない!たぶん!」
「でた!たぶん!ケラケラ!みさっち最高!」
「ゴゥオラァ!みさっち!誰が怖い話しろって言ったんだ!っていうか怖いのは父親の行動とみさっちの考え方だろ!」
「なんでよ!バカゼスト!ほんとに怖かったんだから!ほんコワよ!」
「怖かったからって父親に最上級魔法はダメだろ!ってかこんな話聞きたいんじゃない!」
「わかってるわよ!ただ最近蒸し暑いからこういうはなしでもいれとこうとおもったんだもん!」
「だもんじゃねぇ!ちゃんと話せ!」
「ばかゼスト!べーだ!」
美沙はあっかんベーをしながらショウの陰に隠れる。ショウはショウで、まぁまぁといいながらゼストをなだめていた。
ナタールをはじめその場にいるみんなが笑顔になる。これが美沙の天然笑顔製造マシーンの効果である。
「ちゃんとはじめから話すね。マリと、ショウには少しだけ話したことあるからびっくりしなとおもうんだけど・・・みんなはびっくりするかも知れないね。私と聡子は正真正銘の友達です、ただ違うのは私も聡子も別の世界からこの世界に来たということ。」
「は?!みさっちが別の世界から?だってパパもママもいるじゃない?」
「うん、フィアにも話したことなかったからね。私と聡子のいた世界は地球という星の緑豊かな世界でした。この世界と少し違うのは文明が発達していること、魔物がいないこと、魔法やスキルがないこと。これが大きく変わってるの。」
「ちょ、ちょ、まて!いきなりすぎて話が分からん!」
「うん、これから詳しく話すよ。こっちからしたら異世界の地球は私が17年間、生まれ育った場所なの。
一番簡単なのは映像を見て話すのがいいと思ってさっき私のスキルで記憶玉を作ったからこれを見て話すね。」
そういうと美沙がポケットから小さな玉を取り出しテーブルの上に置いた。
ヴォンというおとを発し空中の日本の映像が映し出される。
「こ、これは・・・なんて高度な文明なんだ!」
「これが私と聡子が生活していた場所、地球。そして私は『山本 美沙』として生きてきたの。」
「みんな同じ服着て机に向かってるけど・・・ここは奴隷収容所か何かか?」
「ふふ、ケリーさんも同じこと言ってたよ。ここは学校と行って色々なことを学ぶ場所なの。もちろん私も通っていたわ。ある日、聡子と一緒に家に帰るときに不審な男にあったの、私は無視をしていたんだけどこの男に無理やり渡されたものがあったの。中身を見ていないからどんなものかはわからないけど正六角形の形をしたペンダントのようなものだったと思う。その日私はこの世界でミサーラとして生まれ変わったの・・・」
「もしかしたらそれ・・・強制転生じゃないかしら?」
「そんなことができるのか!?犯人は!?」
「フードかぶっていたからよく見てないの、それになぜ私だったかもわからないし・・・そうなってしまった以上私はミサーラとして生きていくことを心に決めたの。だって、この体で元の世界にはもどれないし・・・戻る方法もわからないし・・・。そのあとはマリと出会ってショウと出会って・・・みんなに出会えた。これが私なの・・・。」
「みさっち・・・あのね。あの日みさっちが居なくなって・・・数日後、東京は関東大震災がお起こったの。」
「え?!嘘!?」
「なんだその、カントウダイチンマサマというのは?」
「関東大震災!とてつもない規模の地震だよ!で、パパとママは!?聡子!」
「それがね、昼間に起きたから被害は少なかったけどそれでも何万人が亡くなったよ、みさっちのパパは海外から帰ってくる前で無事だった。ママは・・・足をタンスに挟まれたけど命は無事だったよ。」
「そっか・・・あんたも大変だったね。」
「うん、それよりも大変なことが起こったの・・・」
「ど、どんなこと!?」
「地割れや火口などから見たこともない化け物たちが這い出してきて・・・世界が混沌に覆われたの。」
みんながびっくりした、異世界でそんな大変なことが起こっているのか!?やばいじゃないか!?と。
「私もいっぱいいっぱい逃げた、逃げて逃げて、目の前が真っ白になったと思ったら・・・この世界に召喚されていたの、目の前には知らないおじさんと知らないおじさんと知らないおじさんと・・・あぁここが天国なんだなぁとおもったら、全然違った。絶望を抱えたわたしは・・・ナタールさんにであったの。」
自分たちの世界で大変なことが起こっているにもかかわらず、なおかつ異世界の事件まで・・・誰も知らない別の世界ならそこまで心配はしないがさすがに美沙と聡子の故郷となるとそうとは言えないものがあった。そしてまた皆が無言になり色々と考え始めたのであった・・・




