第25話 聡子
再会を果たした美沙と聡子であるが、この二人の奇妙な再会であった。
転生という方法でこの世界に召喚された美沙と違い、勇者召喚により別世界から呼び出された聡子、聡子の姿は依然と何一つ変わらぬ女子高生の姿であった。もちろん服装はこの世界の服装で、隠密行動がとれるように黒を基調とした洋服なのである。
「ごめんみんな、おまたせ!」
「おそいのじゃ、おなか減ったのじゃ!」
「ほら、リナ、少しぐらいこれで我慢しなよ。」
ショウがリナに差し出したのは何処にでもある燻製なのだが、リナは事もあろうごとかショウの出した燻製を拒否したのだ、あの食いしん坊リナがである。
「いやなのじゃ、あったかいスープが飲みたいのじゃ!うぅ・・・ショウタンのバカぁ!」
「ちょ、リナ!?」
珍しくぐずるリナを見て一同びっくりしつつ近くの酒場に皆で入ることにした。
入るまえにリナがショウを呼びとめ、ひそひそ話をし始めた。
「さっきはごめんなさいなのじゃ。」
「え?いいよ、あったかいのが食べたかったんだろ?」
「違うのじゃ実は・・・」
「なんだって?!」
果たしてリナはショウに何を伝えたのか?鬼はいつまで存在を無視され続けるのか?謎が謎を呼んでいる・・・
「みんなほんとにごめんね!実は私このこと前にあったことが会って!感動して少しだけ長話しちゃった!」
「そうなの!わたしみさっちに久しぶりに会ったもんだから!もうマジ感激!で、お城からついてきちゃったんだ!」
「それにしては・・・さっきまでお前みさっちのこと知らない感じじゃなかったか?」
「なにおいってるんですか、ゼスト王様!これぞ隠密の妙技でございますぞ!」
「何その口調?聡子あんたなんか変わったわね。」
「みさっちの方こそ色んな意味で変わりすぎだから!!」
「で?いろいろ聞きたいこともあるけど、貴方はどうしてゼストの後をついてきたのかしら?事と次第によってはみさっちの知り合いだからって・・・」
「マリ落ち着け!俺は大丈夫だからな?で、聡子といったか?俺からお前に質問してもいいのか?」
「ええ、大丈夫ですよ?何が聞きたいのですか?」
「では何点か聞きたいことがある。まず一つ目は召喚された勇者は、お前だけか?」
「う~ん・・・確信わないのですが、3~5人だと思います。私もまだこちらの世界に来てそんなに立っていないものですから。でも、その後勇者召喚を行ったのは3回は間違いなくその後ははっきりしていませんから。」
「そうか、今回お前がおれたちについてきたのはみさっちが理由じゃないな?」
「な、なんでですか?さっきも言った通りみさっちをみかけて・・・」
「ちょっとゼスト!なんでそんな質問ばっかり聡子にしてるのよ!」
「みさっちはちょっと黙っていてくれ、これは大事なことなんだ。で、本当の理由は?」
「だから懐かしくてつい・・・」
「嘘ね、本当にみさっちが目的ならあんな態度はふつうとらないもの。」
「マリさんの言うとうりだと僕も思います、本当のことを話してください。」
「わかったわ・・・私はゼスト様のお父様からゼスト一行を見張り、何かあればすぐに連絡をしろと言われてるの。これが本当の目的よ・・・。」
「そうか・・・わかった、疑って悪かったな。最後の質問だが・・・さっきみさっちが言ってた昔っていつのことだ?」
「な、何いいだすのゼスト?!そんなこと別にいつでもいいじゃない!昔よ昔!」
「そうか、まぁちょっと気になっただけだ、気にするな。」
「変なゼスト・・・ところで次の目的地って決まったの?」
「あ、それなら僕が調べておきました。ここから南南東にある大きな山脈で『グレリア山脈』ってところに第二の魔王が封印されているようです。」
「さっっっすがショウ君!どっかの駄目男とは違うね!」
「駄目男って誰のことだフィア!?」
「ゼスト様しかいませんよ?」
「たしかにゼストのことなのじゃ」
「フィアとリナはともかくアカネてめぇ!減給にしてやるからな!」
「ゼスト様駄目男ではありません!」
「今更遅いわ!」
こうしていつものどんちゃん騒ぎをしまくってみんなが自分の部屋に戻ると明日から向かうグレリア山脈に一人固い決意をショウは抱くのであった。
「ミサのお母さんから言われたこと・・・絶対に守らないと!それと・・・リナの言っていたことも確かめないといけな・・・。」
次の日の朝ショウ一行はリナの背中に乗りグレリア山脈に来ていた。
グレリア山脈は鉱脈があり、ここで取れる鉱物は全世界の45%を締めていて武器に使われる鋼の代替がこの鉱脈より摘出されているのである。
「すっごいねー・・・ほぇー」
「ほらみさっち!くち!くち!口が開きっぱなしだよ!」
「はっ!つい見惚れちゃって・・・て、聡子はこれ見てなんとも思わないの?」
「え?あ!っそうだね!すごいよね!」
「そだ、ショウ、ここに異次元の魔王がいるほって本当なの?」
「うん、間違いないよ。ほらこれ見て。」
ショウが指差した先には山脈の頂点部にいつの間にか作り上げられている巨大な城があった。
「ちょ!なにあれ!っていうかあんなのが完成するまで誰も木津開かないとかばっかじゃないの!?」
「落ち着いてミサ、あれは数日でいきなり現れたらしいんだ。だから誰もい分からなかったんだよ。」
ショウが美沙をなだめている間にゼストは頭を抱え、フィアは乾いた笑いをしながら、みんながこんらんをしていた、ただ一人を除いて。
「みさっち・・・実はね、私以外に召喚された人の一人があの城に誘拐されているの。」
「「「「はぁ?!」」」」
全員が一斉に聡子の方を振り向く。
「正確に言うと、自分からあの城に向かったって話なんだけど・・・」
「はぁ?!なんでまた!?」
「私たっちって、異世界召喚されてるじゃない?元の世界に帰してやるから力を貸せみたいな・・・私も何人かそういう人から誘いがあって・・・」
「それでホイホイついていったのか・・・あきれてものも言えんな。」
「ちょ、ゼスト!その言い方はないんじゃない!?」
「でも本当のことよ?元の世界に帰せる確信なんてどこにもないじゃない?」
「マリさん、言葉がきついですよ!」
「しかしほんとのことなのじゃ、何を言っているのじゃ?いつものショウたんならすぐにわかるはずなのじゃ。」
「そうはいっても、勇者召喚の話が出てからみんな少しおかしいよ。」
「ショウ、正直な話をするとな、そこの聡子含め勇者召喚には俺は信用ができん。みさっちの知り合いというのも少し気になる。」
「なんでそんなこと言うのよ!ゼストのバカ!」
「仕方ないことじゃないかな?私たちって、いろんな冒険してきていろんな出会い方してきたけど・・・彼女のことはまだ何も知らないし、むしろこの鬼のほうがショウとやりあって洞窟から出てきてみんなと行動して・・・信じるというか、まだこの人のことを分かってるっていうか・・・」
「そうね、確かにフィアの言うとおりね、私たちはまだ何も知らないの。」
「マリも、フィアも・・・」
皆が一斉に聡子をみる、聡子は眉ひとつ微動だにせずに、みんなを見渡す。
美沙の知っている聡子であればそんな風にされたら「ちょ!なに言ってるの!?マジ卍!」といいながらお茶らけるものである、しかし目の前の聡子はピクリとも笑わない、うごかな・・・
「ね、ねぇさと・・・」
「流石真の勇者の一行様ね。」
今まで話していた声とは違い少し甲高い大人びた女性の声が響き渡る。
「あたしは聡子なんて名前じゃないわ、魔王ディアト様に使える悪魔、ナタールよ。」
「なんだと!?」
ゼストが叫ぶと同時にみんなが身構える。
「いきなり物騒だね!さっきまであんなに仲良くしてあげてたじゃないか。」
「あんた!聡子をどうしたのよ!?」
「あぁ、さっき話した通りよ?勇者召喚で呼ばれたこの子を私がのっとってあげたの。」
「なん・・・」
「こんな小娘が異世界から来たところで何一つできないんだから有効活用してあげてるのよ?城につて行ったときだって、びーびーないちゃってうるさいったらありゃしない。」
「ゆるさないんだから!聡子を返して!」
「聡子を返せっておかしいわね?クス、私がさとこよ・・・あははは!」
美沙の怒りが上がるのがわかる、ミサを中心としたあたり一帯の空気が瞬時に乾き始めた・・・
「そういえば・・・あなたこの子の記憶と姿かたちが全然違うわねぇ・・・みさっち。」
プチン・・
何かが切れる音がした、正確にはそう聞こえたような気がしたのである。
次の瞬間に美沙は聡子の懐に潜り込む形をとっていた、一瞬の隙を突かれた聡子は反応が出来ずそのまま美沙の回し蹴りをもろに位後方に吹き飛ばされる。
「いきなりなんてひどいねぇ・・・お友達でしょ?私たち。」
「聡子の声で次そんなふざけたこと言ったらあんたの精神ギタギタにしてあげる…」
何時もの雰囲気でない美沙に圧倒されてショウたちはその場を動けないでいた。
美沙の手には亜空間収納庫から取り出したドラグヴァンデルが握られている、いつも以上に魔力が込められていて剣の周囲の空間が歪んで見えるほどであった。
「あ、あんた、そんなのだして・・・この子の命は私が握ってるんだからね。わかってるの?」
「それが何?」
ヒュッという風切音とともに聡子の着ていた衣服が切れる、ものすごい速さの誰の目にも止まらない速さで美沙が剣を振ったのである。周りからすると動いたことも認識できない速さである、かろうじてショウの目には動いたというのだけが分かった。
「ミサ!だめだ!」
「ショウはだまってて、こいつだけは許せない。」
静寂な怒りが美沙からナタールに向けて注がれる、例えるのであれば、銃口を口に突っ込まれていつ引き金を引かれてもおかしくない、そんな感覚がナタールを支配する。
次の刹那の瞬間に美沙が動いた、周りには消えたと認識させられたといった方がいいだろう。
ガキン!
剣と剣のぶつかる音が、あたり一帯に響くと衝撃波となってみんなを吹き飛ばしていた…




