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第33話【最終日】雌雄を決する

 冬真となぎさ、そして神崎と織田さんのそばまで佐伯さんが来ていた。その横には藤堂さんもいる。

「その勝負、私が預かります。両パーティーは体育館まで来てください」

 佐伯さんの言葉に冬真となぎさは顔を見合わせた。

 玲央奈と奈緒が駆け寄ってきた。

「どういうことなん?」

「佐伯さんが勝負の場を用意してくれるらしい。行こう」

 冬真が言うと、玲央奈と奈緒がうなずいた。


 体育館に冬真達が来ると、その後ろから野次馬達も付いてきていた。

 体育館に再び熱気が籠《こも》り始めている。

 正木さんが冬真に声をかけてきた。

「奥村さん、代表者4名を選んでステージに上がってください」

「承知しました」

 冬真はパーティー同盟全員を集めた。

「既にメンバーを決めているようだね」

 悟さんが確信を持った顔で冬真に話しかけた。

 冬真はうなずく。

「俺、なぎさ、奈緒、玲央奈の4名で決着を付けます」

 悟さんはうなずいた。

「では、私達は見守ることにするよ」

 悟さん達はステージそばへ移動を始めた。


 冬真は宣言した。

「神崎と決着を付ける。力を貸して欲しい」

 なぎさ、奈緒、玲央奈が無言でうなずく。

 言葉を交わさずとも分かる。

 なぎさを受け入れた冬真が、ついにみんなの心を1つにまとめた。

 4人はステージに上がる。

 既に神崎パーティー4人がステージ上で待ち構えていた。


 審判の正木さんが8人を集めて説明を始めた。

「これ以降、私の許可無しに発言を禁止します。まず、みなさんのスマホを運営にて一時的に預かります」

 冬真達は黙ってうなずいた。運営の人にスマホを渡した後、正木さんが今度はマイクで再び話し始めた。

「既に決勝が終わり、優勝パーティーは決まっています。これから行う対戦はエキシビジョンマッチの扱いとなります。対戦者8名はご着席願います」

 ステージ上には折り畳み机が2つ、そしてそれぞれに椅子が4脚ずつ置かれている。

 冬真達はそれぞれパーティー毎に分かれて着席した。

「決勝は体力と知力の勝負でした。よって、この場は運の勝負とさせていただきます。ステージ上のプロジェクターをご覧ください。対戦メンバーの8名は手元に配布した紙にてルールをご確認願います。何か質問があれば挙手にてお願いします。私のところまで来ていただき、2人だけで会話させていただきます」



 <エキシビジョンマッチ【運】>

 ・パワーアップ協力じゃんけん

  4名で協力して1つの手を出して対戦するじゃんけん

 ・メンバー同士でのコミュニケーションを禁止する。

  審判が反則と判断した場合、敗北とする。

 ・各メンバーに「グー」「チョキ」「パー」「パワー」「パス」の5種類のパネルを配布する。

 ・1戦毎に任意のパネル1枚を消費する。但し、「パス」だけは何度でも出せる。

 ・4名で1つの手を出すことを原則とする。

  例えば、グー、グー、パス、パスの場合、〝グー〟が有効な手として認められる。

  もしも、グー、チョキ、パス、パスのように手が割れた場合、手として認められず無手となる。(ポーカーで言うところのブタ扱い)

 ・両パーティーが有効な手を揃えた場合はじゃんけんのルール通りで勝敗を決める。

  片方のパーティーのみが有効な手を揃えた場合は、そのパーティーの勝利とする。

 ・パワーは有効な手をパワーアップする効果がある。パワーアップされた手は通常の全ての手に勝つことができる。

  但し、パワーが2枚以上重複するとパワーアップが無効になる上に、有効な通常の手が無手扱いになる。

  例えば、グー、グー、パワー、パスの場合、〝グー〟がパワーアップされ、通常の手全てに勝つことができる。

  しかし、グー、グー、パワー、パワーの場合、〝グー〟が無効化され、無手になる。

 ・両パーティーがパワーアップされた有効な手を揃えた場合はじゃんけんのルール通りで勝敗を決める。

 ・5戦行う。

 <勝利条件:先に3勝する。もしくは5戦終了時点で相手よりも多く勝利する。>

 ※5戦終了時、もしも勝利数が同数だった場合、延長戦を行う。






 ステージそばで見守っている悟のそばに藤堂と佐伯さんがやって来た。

「神崎君達、強者はいつ、いかなる時でも統制がとれている。誰が何をすべきか理解している。この勝負、神崎君達が勝利するだろう」

 藤堂は自信たっぷりに言った。

 佐伯さんはステージ上の冬真さん達を見つめている。

 藤堂は続けた。

「たとえ、強者に食い下がるも及ばない結果だったとしても、若者達が生み出すドラマは人々の感動を呼び起こすだろう。充実したレポートがまとめられそうだ。水無瀬達に感謝するよ。奥村君にもお礼を言っておいて欲しい」

 悟はそんな藤堂を黙って見つめた。

 そして穏やかな顔になって諭すように言った。

「藤堂、昨日の夕方、私が君に言っていた冬真さんの真の力。今、ここで実現するだろう」

「なんだと?」

 悟は横にいる蒼大さんに話しかけた。

「ついに全ての条件が揃った。冬真さん達が強者の壁を超える、その瞬間をしっかりと目に焼き付けておくんだ」

 蒼大さんは悟を不思議そうな目で見た。が、すぐに真剣な顔になって、

「はい!」

 と力強くうなずいた。




 正木さんがマイクでアナウンスした。

「では、これよりエキシビジョンマッチを始めます」

 体育館全体がおーっと盛り上がった。

 冬真達4人は2度目の応竜戦をイメージした。


 1戦目。

 神崎チーム、「グー」「パス」「パス」「パス」。

 神崎のみが手を出し、他のメンバーが全員パスすることで有効な手を出す作戦のようだ。

 奥村チーム、「グー」「パス」「パス」「パワー」。

 ソルトジェネレーター。最初はコペル。玲央奈がパワーを出した。

 体育館がざわざわしている。

 正木さんが驚きながらマイクで叫んだ。

「奥村チーム、いきなりパワーアップを成立させました! 奥村チームの勝利です!」

 神崎が戸惑いの表情を見せている。


 2戦目。

 神崎チーム、「チョキ」「パス」「パス」「パス」。

 奥村チーム、「チョキ」「パス」「パワー」「パス」。

 次にコットン。奈緒がパワーを出した。

 体育館のざわつきが大きくなった。

 正木さんが目を見開いた。

「奥村チーム……。まさかの2連続でパワーアップ成立! 奥村チームの勝利です!」

 神崎が驚愕の表情になった。


 3戦目。

 神崎チーム、「パー」「パス」「パス」「パス」。

 奥村チーム、「パー」「パワー」「パス」「パス」。

 最後にナオ。なぎさがパワーを出した。

 体育館が静まり返った。

 正木さんが信じられないような目でパネルを見つめている。

「奥村チーム……。3連続でパワーアップ成立……。奥村チームの勝利です。先に3勝したので、エキシビジョンマッチは奥村チームの勝利となります」

 神崎が呆然としていた。


 水を打ったような静けさになった体育館。

 唐突にあらわれた奇跡の衝撃でみんなが身動きできずにいた。

 おもむろに冬真が立ち上がり、ゆっくり歩いて神崎の前に立った。

 呆《ほう》けた神崎が座ったまま冬真を見上げた。

 冬真が神崎に右手を差し出した。

 神崎がそれを見て立ち上がった。

「ありがとう。彼女が奥村君を選んだ理由が分かったよ」

 両者が握手した瞬間、体育館全体から猛烈な拍手が湧き起こった。

 なぎさ、奈緒、玲央奈の3人が抱き合って喜んでいる。

 佐藤さんと織田さんが冬真の両脇に来て肩を組んだ。

 そして神崎さん達4人と冬真とでそれぞれ肩を組んで1つの輪を作った。




 ステージそば。

 三浦さん、白石さん、緒方さんの3人がハイタッチして喜びを分かち合っている。

 室さんは腕組みをして壁にもたれていたが、悟と目が合うと、満足そうにうなずいた。

 体育館全体が形容しがたい不思議な一体感に満たされている。

 藤堂が呆然とした顔で悟を見た。

 穏やかな笑顔で悟が言う。

「これこそが、人の持つ最高の力だ」

 佐伯さんが満足そうな笑顔で藤堂に問いかけた。

「プランの進め方、再検討しませんか?」

「今更……、簡単に変えることはできんが……。しかしこうして実績で示されてしまってはな。それを無かったことにはできまい。これから更に大変になるだろうが、力を貸して欲しい」

「もちろんです」

 佐伯さんが自信を持って答えた。

 蒼大君が感激した顔で悟に、

「僕。いつか冬真さんのようになりたいです」

 とつぶやいた。

「今の冬真さんを見て、なりたい姿をイメージ出来たなら、きっとなれるさ」

 悟は優しく言った。


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