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第29.5話【番外編】華麗にバックステップする

 審判の正木さんが3戦目のプレイヤーを招集した。

 正木さんの前に室さんと服部さんが集合した。

 景と玲央奈ちゃんは室さんから少し離れたところに立った。

「監視役は出しますか?」

 正木さんが室さんに聞いてきた。

 そういえば1戦目と2戦目の監視役をしていた青木さんは、玲央奈ちゃんのお父さんを連れてプレハブ棟に向かったッス。

 景が困って周囲を見回していると美穂姐さんがこちらに向かって歩いてきた。

「自分が監視役をやります」

 美穂姐さんが申告すると正木さんがうなずいた。


 室さんが服部さんをじっと見た。

「お前、確定的に絶対忍者だろ……」

 服部さんが不敵に微笑んで返す。

「流石《さすが》だ。よく見抜いたな。鈍重なナイトなど、もはや時代遅れ。これからは忍者の時代だ」

「黄金の鉄の塊のナイトが、卑怯な忍者などに遅れをとることなどありえん!」

 やばいッス! 室さんの怒りが有頂天になったッス。

「フッ。本物の強者は口で説明するのではなく、実績で証明するものだ」

 服部さんが平然と受け流して室さんを更に挑発してるッス。

 正木さんがポカーンとして見ているので、慌てて景が、

「正木さん、そういうロールプレイッス。気にせず進めても大丈夫ッス」

 と言うと正木さんがうなずいた。

「では3戦目を開始します」



 3戦目。

 室《むろ》亨《とおる》、知力++、体力+、運+。

 対するは、服部《はっとり》弦《げん》、知力++、体力++。

 ついに全参加者の中で最高峰の力を持つ超人同士の戦いの幕が切って落とされた。


 しばらくの間、2人は様子見をしているのか、慎重に移動しながら攻撃をしていたが、双方共に当たらない。

 室さんは忍者からの攻撃を、キャキャッっと華麗なバックステップも交えて移動しつつ避けてるッス。

 ……両者の均衡を破ったのは、運に勝る室さんからの一撃だった。

 ピーッと攻撃音が鳴り響き、忍者のHPが減り、残り2となった。

「破壊力ばつギュんやで!」

 玲央奈ちゃんが興奮して叫んだ。

「見事な攻撃だと感心するけど、どこもおかしくないッス!」

 オイラも先制攻撃に嬉しくなってしまい叫んだッス。


 攻撃を食らった忍者は攻撃主体に転じてきた。

 室さんは淡々と忍者の候補マスをつぶしていく。

 ……そして攻撃に夢中な忍者がミスしたッス! 候補が残り1マスの状態で攻撃してきたッス!

 室さんが最後の候補マスを攻撃した。しかし……、攻撃成功音が鳴らなかった。

 これは……玲央奈ちゃんのお父さんがさっき使ってた〝空蝉《うつせみ》の術〟ッス!

「汚い! 卑怯すぎる! 忍者嫌い!」

 室さんが叫んだ直後、ピーッと攻撃音が鳴り響いた。室さんのHPが残り2となった。

「室さんが叫んだから、忍者に位置を特定されたッス!」

 オイラは室さんに慌てて警告したッス。

「一瞬の油断が命取りだったな!」

 忍者の声が向こうの陣地から聞こえてきたッス。

 ピーッと攻撃音が鳴り響いた。忍者の残りHPが1になった。

「見ろ! 見事なカウンターだ! 調子に乗ると痛い目にあう!」

 室さんの満足そうな叫び、これはヤバいッス!

 ピーッと攻撃音が鳴り響いた。室さんの残りHPが1になった。

「ちょっと!! 室君、黙りなさい!」

 向こうの陣地から、監視役の美穂姐さんの怒声が返って来たッス。

 拮抗《きっこう》する両者の戦いに体育館全体が熱気……ではなく、観客達の笑いに包まれていた。


 再び拮抗した戦いが続いたが、ついに室さんの運の良さが再び忍者を制し、試合終了となった。

「やったー!」

 景と玲央奈ちゃんは飛び上がって喜んだ。

 室さんがちょっと疲れた様子で景のところに来た。

「大丈夫ッスか?」

「どちらかというと大丈夫」

 室さんがうなずいた。

「ピンチを救ってくれてありがとう! すごいやん!」

「それほどでもない」

 さすがは室さん、謙虚ッス!

 忍者がいつの間にか、室さんの近くに来ていて、ボソっと言った。

「これで勝ったと思うなよ」

 玲央奈ちゃんがキッとした顔で、

「何、いきなり話しかけてきてるんや?」

 と言ったのでオイラも、

「もう勝負ついてるッス」

 って言ってやったッス。

「そんなふうに調子にのると忍者の里でひっそりと終わりを迎えることになる」

 室さんがそう言って追い払うと、忍者は心底悔しそうな顔をして去って行った。

 これ以降、ゆくえ不明となった忍者の姿を見たものはいない。




 ※作者注

 本作中の一部表現は2000年代頃、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)発祥のネットスラング〝ブロント語〟として広く知られていた言い回しをオマージュとして使用しています。

 原典となった特定の投稿者や投稿を特定することは困難であるため、ここに敬意を込めて表記します。


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