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第17話【3日目】胸を張る

 奈緒子達はプレハブ棟のロビーまで移動した。

 さっきまではどんよりと曇っていたのだが、今は少しだけ晴れ間が見えて日が差し込み、ロビーが柔らかい光で包まれていた。

 ロビーの椅子には男性3人、女性1人の合わせて4人組が座っていた。なぎささんがスタスタと4人組のほうに向かって歩き、声をかけた。

「お待たせしました。山本なぎさです。こちらのパーティーは山本姓が2名いるのでわたしのことは、なぎさと呼んでください。本日はよろしくお願いします」

 椅子に座っていた1人、40代に見える男性が立ち上がってなぎささんに応じた。

「三浦と申します。こちらこそよろしくお願いします」

「じゃあ、今から段取りを説明しますね」

 となぎささんが言って、みんなで聞くことになった。


 なぎささんの説明によると、残りの第12から第15チェックポイントは、所要時間を見積もると今日中に全てのミッションをクリアすることが難しいらしい。

 とはいえ、足切りスコア1500以上の獲得に加えて、昨日のお題当てゲームのようにスコア平均が高いほうが有利なミッションがあることを考えると、全てのミッションクリアを目指したいところだ。

 そこで、各ミッションの注意書きの『参加していないパーティー同盟メンバーにもスコアを加算する』というルールを活用することにしたのだ。

 要するにパーティー同盟で分担してミッションをクリアしても、全員がスコアを獲得できるということだ。

 なるほど、それでパーティー同盟を更に増やして分担して進めるってことか、と奈緒子は納得した。


 なぎささんの説明後、パーティー分けをすることになった。

 知力ミッションと体力ミッションでメンバーを分けた。

 知力ミッションパーティーは冬真さん、玲央奈ちゃん、そして今回加わる室さん、白石君の4名。

 体力ミッションパーティーは奈緒子、なぎささん、悟さん、蒼大君、そして今回加わる三浦さん、緒方さんの6名。

 三浦さんが冬真さんに心配そうに言った。

「奥村さん、そちらのリーダーをお願いします。室君とのコミュニケーションがちょっと難しいかもしれないですが、白石君がフォローしてくれるので、うまくやっていただければと思います」

「承知しました。ご助言ありがとうございます」

 と、冬真さんが応じた。

 奈緒子は室さんをじっと見た。力を抑えているような印象を受けるが、安定した頼もしい波動だ。そういう意味では悟さんに似ているが……。

 奈緒子はスマホで室さんと白石君の情報を確認してみた。

 室《むろ》亨《とおる》さんのクラスはM3L(男性・30代前半)で、ステータスはなんと、知力++、体力+、運+と卓越《たくえつ》したものだった。悟さんと逆である。

 白石《しらいし》景《けい》君のクラスはM1(男性・10代)で、大学生のようだ。

 三浦さんが何を心配しているのか奈緒子には分からないのでちょっと気になったが、玲央奈ちゃんも一緒だし多分大丈夫だよね、と思い直した。


 奈緒子達は冬真さん達と分かれて第12チェックポイントへ向かった。グラウンド方面である。

 奈緒子は歩きながら、今日挑む体力ミッション2つは、体力にさほど自信がなく、共感覚もおそらく活かせそうにないので活躍できるイメージができないな、と思った。

 でも、ここで消極的になってはいけない。冬真さんに頼られる存在になりたい、だからパーティーに貢献できるようにがんばろう、と奈緒子は気合を入れた。


 奈緒子達はグラウンド近くに設置された第12チェックポイントで受付を済ませた。奈緒子はミッション内容をアプリで確認した。



 <第12チェックポイント【体力】>

 ・オリエンテーリングII。

  各所に設置された通過ポイントにカタカナが隠されている。

  アプリでカタカナを回答することで通過ポイント毎にスコアを得られる。

 <獲得スコア:10/通過ポイント毎>

 ※なお、本ミッションでは参加していないパーティー同盟メンバーにもスコアを加算する。

 ・制限時間は2時間。

  第12チェックポイント付近のスタート地点にあるQRコードを代表者1名がスマホで読みとると制限時間のカウントが開始される。

  ※制限時間カウント状態でないと通過ポイントのスコアが得られない。

 ・通過ポイントはパーティーメンバー全員で通過する必要がある。

  ※パーティー同盟の場合はパーティー毎に通過ポイントを分担することが可能。

 ・なお、追加で下記ボーナスミッションを達成するとスコアが更に増加する。

  ①10か所全ての通過ポイントでスコアを得た後、全員でスタート地点のQRコードを読み取る<ボーナススコア+20>。※パーティー同盟推奨



 今日は少し曇っているので日差しはさほどきつくないが、蒸し暑い。水分補給には気を遣うべきだろう。

 奈緒子達は第12チェックポイントで配布しているミネラルウォーターを受け取った。

「山道コースと道路コースで分担するよー。スニーカー履いてるわたしと悟さんが山道コースね」

 となぎささんが言って、なぎささん達2名と奈緒子達4名とでパーティー同盟を再編成した。

「では、こちらのパーティーは私が先導しますね」

 と三浦さんが買って出てくれたので奈緒子達はよろしくお願いします、と言って三浦さんに付いて行った。

 なぎささんと悟さんは山道コースへ向かって歩いて行った。

 奈緒子は三浦さんと緒方さんの情報を確認してみた。

 三浦《みうら》智也《ともや》さんのクラスはM4(男性・40代)、緒方《おがた》美穂《みほ》さんのクラスはF3L(女性・30代前半)、両名共に会社員だ。

 三浦さんが、

「歩くペースが早かったら遠慮なく言ってください」

 と配慮してくれたのだが、奈緒子は、

「私は早く歩くの慣れてるので大丈夫です」

 と言っておいた。


 4人で少し早めに歩いて1つ目の通過ポイントに到着した。

 通過ポイントのQRコードをスマホで読み取るとノノグラムが表示された。

 今日はいきなり、15マス×15マスの難しい問題だ。

「これは時間がかかりそうですね……」

 と三浦さんが困った顔で言った。

「ノノグラムは自分に任せてください」

「僕もがんばります」

 と緒方さんと蒼大君が張り切って言ってくれたが、奈緒子も自分なりにがんばって解いてみることにした。三浦さんもとりかかっている。

 そして、緒方さんが一番早く解き終わった。

「できました、ここの通過ポイントのカタカナは〝ツ〟でした」

 一昨日はアルファベットだったが、今日はカタカナのようだ。

 みんなで回答アプリに〝ツ〟を入力すると正解だったので、緒方さんがなぎささんにチャットで情報共有した。

「2時間制限に対して、通過ポイントがかなり遠距離で設定されてますね。他の通過ポイントのノノグラムも15マス×15マスだとすると全ての通過ポイントを回るには少し走らないと間に合わないかも」

 緒方さんが心配そうに言った。今日のこの蒸し暑い中で少しでも走るのはかなりきつそうだ。

 なんとかする方法があるのではないだろうか? こういう時、冬真さんや玲央奈ちゃんなら何か考えるはずだ。奈緒子には思いつかないけど、みんなで考えれば……。無駄なあがきかもしれないけど自分のやれることをやろう。奈緒子はダメ元で言ってみた。

「私達4名を更に分けて、通過ポイントを分担して回る方法は無いでしょうか?」

「通過ポイントはパーティーメンバー全員で通過しないとスコアが得られないからねぇ……」

 緒方さんが困った顔で応じた。

 しかし、蒼大君がはっと思いついた顔になって言った。

「ちょっと待ってください。ノノグラムを分担することは出来ると思います。と、いうのも通過ポイントを同時に通過しろ、とはミッション説明に書いてないので、時間差があっても結果的に全員で通過した状態になっていればスコアは加算されると思います」

「そうか、通過ポイントのノノグラムを分担して解いて回答を共有しておいて、後で担当外の通過ポイントを通過すれば全員通過したことになるから、ノノグラムを解くのにかかる時間分を短縮できますね」

 三浦さんが笑顔になって言った。

 良かった。なんとかなりそうだ。冬真さんや玲央奈ちゃんがいなくてもやれるんだ! 奈緒子は嬉しくなった。

 奈緒子達は更に二手に分かれて通過ポイントを回ることにした。

 三浦さんと蒼大君がこのまま2つ目、3つ目……と回って5つ目まで回りスタート地点へ。

 そして緒方さんと奈緒子が逆に5つ目、4つ目……と回って2つ目まで回り終わったらスタート地点でみんなと合流する。

 三浦さんがこちらの作戦をなぎささんにチャットで伝えた。すぐになぎささんから返答があり、あちらも、なぎささんと悟さんでノノグラムを分担することにしたようだ。

「じゃ、青木さん、5つ目の通過ポイントへ急ぎましょう」

 と言って緒方さんが歩き始めたので奈緒子も後を追った。


 5つ目の通過ポイントはかなり離れているので2人は早歩きで向かった。

「自分は青木さんの歩く速度に合わせるから、無理の無いペースで歩いてね」

 と緒方さんが気遣ってくれたので、分かりました、と奈緒子は言って無理しない範囲で早歩きした。

 奈緒子としてはかなり速いペースで歩いてるつもりだが、緒方さんは息切れもせずに余裕で付いてきた。

「緒方さん、体力あるんですね」

「普段から軽い筋トレやウォーキングしてるからこのぐらいなら大丈夫よ」

 三浦さんが先程の道中で、緒方さんは文武両道で三浦さん達のパーティー内でエース的な役割を担ってくれている、と奈緒子達に紹介してくれていた。

 日頃から鍛えてるだけあってスレンダーで引き締まった体をしていて、ショートボブの髪型が活動的な緒方さんに良く似合っている。

 緒方さんには及ばないけど、少しでも近付けるようにがんばろう、と奈緒子は思った。


 5つ目の通過ポイントに到着したのでノノグラムにとりかかった。

 おそらく緒方さんが早く解くだろうけど、自分で出来るところまではがんばろうと奈緒子は思った。

 案の定、緒方さんが奈緒子よりも大分早く解き終わったので答えを教えてもらって4つ目の通過ポイントへ向かうことになった。

「お役に立てずに申し訳ありません」

 奈緒子は謝った。

「いや、役に立ってるわよ。さっき、青木さんの一言が無かったら、ノノグラムを分担せずに進めてたかもしれないし。それに青木さんと一緒だといい雰囲気になるしね」

「そう言っていただけると救われます。いつか、緒方さんみたいにみんなに頼られるような存在になりたいです」

「あはは。自分はそんな大したもんじゃないわよ。それに、頼られるほどしっかりしてるっていい事ばかりじゃないし」

「えっ? そうなんですか?」

「うん。合コンとかで『緒方さんって1人でも生きていけそうだから、彼氏なんか必要無さそうですね』って言われたことあるし……」

「そういう見方もあるんですね……」

「ま、確かに1人でも何の不都合も無いし、その通りなんだけどね。お荷物のパートナーがいるよりも気楽に暮らせるし」

 奈緒子は少し考えてから言った。

「お互い常に支え合う関係を求めてるなら、1人でも生きていけるとすると確かにパートナーは必要無さそうですね。けど、1人でも生きていける2人が出会ってパートナーになって、そのほうがお互いもっといいよねって思える関係も素敵じゃないですか?」

 緒方さんは、はっとした顔になって奈緒子を真っ直ぐ見た。

「うん。確かにそうかも。ふーん、青木さんの雰囲気ってやっぱり人間性の良さから醸《かも》し出されてるんだね」

「ありがとうございます」

 緒方さんから信頼の波動が出たが、奈緒子はなんとなくチクリと胸が痛んだ。


 4つ目の通過ポイントに到着し、ノノグラムにとりかかった。

 しばらくして、緒方さんが、

「おかしいなぁ、どこかで間違えたかな?」

 と悩んでいるようだ。

「青木さんのをちょっと見せてくれる?」

「はい。でも、緒方さんのと比べて全然進んでないと思いますけど」

「それでも全然構わないよ」

 緒方さんが自分のスマホと奈緒子のスマホを見比べている。

「あ、分かった。やっぱり自分がミスしてるところがあった。青木さん、ありがとう。これで解けそう」

「お役に立てて良かったです」

 ほどなくして、緒方さんが解き終えた。

 チャットを確認すると、三浦さんと蒼大君は既に2つ目、3つ目のノノグラムを解き終えているようだ。

「これで後は残りの通過ポイントを巡ってスタート地点に戻るだけだね。余裕で時間内に間に合いそう」

 緒方さんがほっとして言った後、少しゆっくり歩いて戻りましょう、と奈緒子を気遣った。

 途中で三浦さんと蒼大君にすれ違った。あちらも少しゆっくり目で歩いているようだ。

 お互いを励まし合った後、また別れて奈緒子と緒方さんは黙々と歩き、3つ目の通過ポイントを過ぎた。


 周囲には草木が生い茂り、それを切り裂くように舗装された道路がまっすぐ伸びていて、周囲には誰もいない。

 2つ目の通過ポイントを過ぎたあたりで奈緒子がぽつりと言った。

「あの……、実は私の人間性って別に良くないんです。人を観察して、反応とかを見て態度を変えてるんです」

「へー。そうなんだ。確かに青木さんって感受性強そうだもんね。じゃあ、自分には良い青木さんを見せてくれてるわけね」

 緒方さんは笑って言った。

「はい。緒方さんには良く思われたいので、そうですね」

「でも、それって青木さんにとっての処世術だから悪いことじゃないでしょう? 青木さんって小柄で可愛い雰囲気だから、舐《な》められやすそうだし、出会う人全員に良い青木さんを見せてたら嫌な目にもあうだろうし、実際そうだったんでしょう」

「はい、そうなんですけど……。でも強い人なら常に同じように人に接することが出来るのかなって」

「そうかもしれないけど、別に気にするようなことじゃないと思うわよ」

「高校生の時、〝悪い女〟って言われた事があって……、確かにそうだなって」

「あはは。確かに悪い女かもね。でも、青木さんがそばにいるおかげで、いい雰囲気になって穏やかな気持ちになれてる人達がいるとしたら、悪い女でも別に構わないでしょう?」

「……緒方さんにそう言われたら、確かにそうかもって思えてきちゃいました」

 緒方さんと奈緒子は顔を見合わせて一緒に笑った。


 奈緒子達はスタート地点で先に到着していた三浦さんと蒼大君と合流した。

 奈緒子がミネラルウォーターを飲みながら休んでいると、悟さんとなぎささんもスタート地点に戻ってきたのでボーナススコアをゲットすることができた。

「じゃ、そろそろお昼ご飯を食べに行きましょうかねー」

 と言ってなぎささんが食堂に向かってスタスタと歩き出したのでみんなで付いて行った。



 昼食を済ませた奈緒子達は、再びグラウンドに移動した。

 奈緒子達にとって、本日最後のミッションである。



 <第13チェックポイント【体力】>

 ・ミニフットゴルフII

 ※基本ルールは別項を参照すること。

 ・全ホール終了時の打数で獲得スコアを決定する。

 <獲得スコア:全ホール終了時の打数72±9以内:100>

 <ボーナススコア:打数72を10打数下回る毎に+10>

 <減点スコア:打数72を10打数上回る毎に-10>

 ※なお、本ミッションでは競技に参加していないパーティー同盟メンバーにもスコアを加算する。


 以下、基本ルールには記載の無い事項を補足する。

 ・パーティー全員(最大4名)が順番にサッカーボールを蹴り、カップインを目指すこと。

  ※パーティー同盟の場合は代表者4名を選ぶこと。

 ・制限時間は2時間。タイムアップの場合、時間内に回れなかったコース数×5打を打数に追加する。

 ・全18ホール。各ホールの規定打数は全て4打とする。



 まずは代表4名を決めることになった。消去法でいけばいつも通り悟さんが抜けて、あとは奈緒子も見学になるだろう。

「1打目は僕が行きます。趣味でフットサルやってるんで少し自信あります」

 蒼大君が立候補した。

「承知しました。では1打目は蒼大君でお願いします。2打目は緒方さんお願いします。3打目は私がやりましょう」

 三浦さんが言って緒方さんがうなずいた。

「はいはーい、4打目はスニーカー履いてるわたしがやりまーす」

 となぎささんが立候補したのでこれで決まった。奈緒子の予想通りのメンバーだ。

 とりあえずこのミッションでの奈緒子は応援以外にやることが無さそうだが、頼られる存在になるために気を抜かないで臨むことにした。


 1ホール目からスタートした。

 昨日のように蒼大君が1打目でカップキットから10m以内に寄せた。

「おー、流石に上手いですね」

 三浦さんから褒められて蒼大君が照れている。

「蒼大君、素敵だよー」

 奈緒子も悪い女になって蒼大君をノセてみた。

 蒼大君がデレデレしたので、それを見て緒方さんとなぎささんが笑っている。

 2打目は緒方さんが無難にカップ手前2m弱まで寄せた。

 そして3打目、三浦さんがあっさりカップインさせた。

 うん、いい調子だ。このまま18ホールまで何事もなく進められればいいな、と奈緒子は思った。


 2ホール目以降も順調に3打ペースで進んだ。

 5ホール目で惜しくも三浦さんが外して4打になったが、続く6ホール目で今度は緒方さんが2打でカップインして3打ペースに戻した。

 そのまま10ホール目まで3打ペースで進み、これならボーナススコアも得られそうだ。

 しかし、11ホール目で異変が起きた。

 蒼大君が1打目を外して方向がずれてしまい、カップキットから残り30mぐらいのところへボールが飛んでしまった。

 しかし緒方さんが2打目でカップキットから残り3mのところまで寄せて挽回したので11ホール目も3打となった。


 奈緒子は蒼大君をじっと見た。波動が不安定になっている。さっきの失敗でメンタルにダメージがあるようだ。

 うーん、どうしよう……。おそらく1打目は距離が長いだけに繊細なコントロールが必要なはずだ。このまま蒼大君に次も打たせるのはまずいのではないかと奈緒子には思えた。

 12ホール目にみんなが到着したところで奈緒子は思い切って言ってみた。

「すいません、さっきのホールで蒼大君が少し動揺してると思います。このまま打ってまた失敗したら、蒼大君の調子がますます悪くなるリスクがあります」

 奈緒子の共感覚を知っているなぎささんも同調してくれた。

「無理しないほうがいいよー。奈緒さんにいいところ見せたいかもしれないけどさー」

 蒼大君は苦笑しながら、申し出てくれた。

「自分から立候補しておいて申し訳ないですが、自信が無いので1打目を代わっていただけますか?」

「じゃあ、自分がやりますよ。昨日のミニフットゴルフは1打目を自分が担当していたので」

 緒方さんが引き受けてくれたので助かった。三浦さんもうなずいて提案した。

「蒼大君はもしかしたら見学に回ったほうがいいのかもしれませんが、私としては競技に参加している内に調子を取り戻す方に賭けたいので、蒼大君には2打目を担当してもらっていいですか?」

「はい、分かりました。がんばります」

 と蒼大君が了承したので、緒方さんと蒼大君の順番を入れ替える形で進めることにした。

 そして、緒方さんが1打目でカップキットから15mぐらいのところへ寄せた。まずまずの成果だ。

 2打目で蒼大君が残り1mまで寄せたので三浦さんが楽に3打目で決めることができた。

 奈緒子は蒼大君をじっと見た。さっきよりも波動が落ち着いてるようだ。

「蒼大君、きっちり決めてすごいね」

 と奈緒子が褒めると、なぎささんが、

「うんうん、しっかり役目を果たすことができる男はかっこいいねー」

 と言って更に持ち上げた。

「流石《さすが》、ボールコントロールが優れてますね。頼りになるわ」

 そして緒方さんが止めを刺した。

 蒼大君は顔を真赤にして照れている。奈緒子は弟みたいに可愛いな、と微笑ましく思った。


 そうして14ホール目まで終わったところで奈緒子は蒼大君の波動が完全に安定していることを確認できたので、

「そろそろ蒼大君も落ち着いたようなので1打目に戻してみませんか?」

 と提案してみた。三浦さんがうなずいて元の打順で15ホール目に挑んだ。

 15ホール目の1打目で蒼大君はカップキットから残り3mまで寄せた。絶好調だ。

 そして緒方さんが2打目でカップインした。

 16ホール、17ホールは順調に3打で終わった。

 そして最後の18ホールは蒼大君が1打目で残り5mのところに寄せると、緒方さんが2打目で決めた。

 トータルで52打でまわることができたのでボーナススコア20をゲットすることができた。


 第12、第13チェックポイントは共に最良のスコアを獲得できたはずだ。

 役に立てそうに無かった体力系ミッションだったけど、少しは貢献できたはずだ、と奈緒子は充実感を持つことができた。

 少しずつ成長できている。奈緒子は胸を張って冬真さんと合流できるなと思った。


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