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第12話【2日目】実力を認める

 第6チェックポイントが終わり、冬真達はロビーに戻ってきた。

 神崎が冬真に話しかけてきた。

「さきほどの勝負、なかなか楽しめたよ。君達のNGワード設定は網羅性があって、よく検討されていたと思う。それと玲央奈ちゃんの説明も見事だった」

 なんだ? 勝者の余裕なのか褒められたぞ。

「勝負していただき、ありがとうございました。全力を尽くしましたが更に上を行かれてしまい、流石《さすが》だと思いました」

 と、冬真はとりあえず言っておいた。


「ところで、いくつか質問したいのだが、いいだろうか?」

 うーん、お腹が減ってるし、手短にして欲しいところだが……、少しならいいか。

「はい、何でしょう?」

「第1チェックポイントはどのような手段でクリアしたか教えて欲しい」

 冬真は、なぎささんがパーティー同盟を組んで分担して電卓で計算したこと、冬真がプログラムで計算したことを説明した。

 神崎はそれを聞いて、

「なるほどね、それぞれの個性があらわれていて興味深い。ところで、それらの方法でやったということは玲央奈ちゃんはいなかったのか?」

 と質問した。

「まだ冬真さん達と合流前やったから、ウチらは別の手段でクリアしたで」

「どうやったか教えてくれるかな?」

「ええで」

 玲央奈ちゃんは手帳のメモ欄に数字を書いて説明し始めた。

「1~10000の足し算の例で説明するで。まず、1+9999、2+9998……、4999+5001のように足して10000になる組み合わせを作ったんや。それが4999組できるから、4999万になるやろ。で、残った10000と5000を足して50,005,000になるってわけや」

「なるほど、等差数列の和の公式の元になったガウスの考え方か。ところで、なぜ素直に公式を使わなかったんだ?」

 佐藤さんが話に割って入ってきた。

「玲央奈ちゃんって何年生だっけ?」

「高2やで」

「神崎さん、高2の春だと、等差数列の和の公式はまだかもしれないです」

「なるほど、そういうことか」

 神崎は納得したようだ。


「もう1つ質問したい。第3チェックポイントはどうやってクリアした?」

 第3チェックポイントは3つのコップから当たりを選ぶやつだったな。

「ええで。これを見てもらえる?」

 玲央奈ちゃんは手帳のメモ欄を開いて、昨日冬真達に説明した樹形図を見せた。

「モンティ・ホール問題を自力で解いたのか……」

 神崎が驚いている。

 そんなに驚くようなことだったのか……?

 やっぱり玲央奈ちゃんはすごい才能の持ち主なんだな。


 神崎がなぎささんを見た。

「さきほどの勝負は我々が勝利したが、君達の実力もなかなか大したものだ。我々に協力して欲しいということだったね。いいだろう、パーティー同盟を組もうじゃないか」

 え、マジで???

 神崎が続けた。

「私も山本さんと一緒に行動できるというメリットがあるし、お互い利があるだろう」

 堂々となぎささんを狙う宣言をしてきた……。うーん、どうしようか。

「ちょっと考えさせてください。今からお昼ご飯なので、食べながらパーティー内で相談します」

 と、冬真が答えると神崎はそれでいい、と了承した。


 神崎達と別れて、冬真達6人で食堂に向かった。

 食堂はやや混雑していて周囲から雑談が聞こえてくる。エアコンが効いてるはずなのにちょっと蒸し暑いと感じた。

 なぎささんが6人分の座席を確保してくれたので、みんなでカレーを持って集まった。

「やっぱカレー食べる流れですよね」

 蒼大君がしみじみとうなずいてカレーをどんどん口に運ぶ。

「完全に頭の中がカレー一択になっちゃったわよー」

 なぎささんも負けずにどんどん食べている。


「で、どうするん? 神崎さん達とパーティー組むん?」

 玲央奈ちゃんが冬真に聞いた。

「もともとなぎささんが神崎さんパーティーに協力してって約束してたし、この流れだと断るのもおかしいよな……」

 しかし冬真には、なぎささんが神崎に狙われている、というところが引っかかっていたが口には出さなかった。

「なぎささんを神崎さんに取られちゃってもええん?」

 玲央奈ちゃんがにやにやしながら冬真に聞いてきた。

「それは……なぎささんが決めることだから俺は別に構わないよ」

 と冬真は答えたが、奈緒さんがこちらをじっと見ている。う……、これはまずいかも。

「強者に勝てるパーティーになる、っていうビジョンはどうするん?」

 玲央奈ちゃんが今度は真面目な顔で聞いてきた。

「うーん……。神崎さんパーティーに協力してもらいつつ、目指すって感じになるかな」

 冬真は自分で言っていて自信が無くなってきた。

「ま、正直、協力内容がパーティー同盟を組むっていうことになるとは想定してなかったのよねー」

 なぎささんがカレーを食べる手を止めてぽつりと言った。そして冬真を見て優しく微笑んだ。

「もしも神崎さん達とパーティー同盟を組むことになったら、わたしは神崎さんとの関係作りのために仲良くするつもりだけど、心はダーリン一筋だから安心して欲しいなー」

 と言ってくれたので冬真は不思議とほっとした。不意に奈緒さんと目が合ったが、彼女は優しく微笑んで冬真にうなずいた。


 冬真は蒼大君を見て、

「蒼大君はどう思う?」

 と聞いてみた。

「そうですね。僕は強力なメンバーが加わること自体はいいことだと思いますね。僕の感覚ですが、神崎さん以外のお2人もかなりデキる感じでしたし」

 確かにそうだな……。確か、佐藤さんが知力+、織田さんが体力+だった。あれ? そういえば。

「神崎さんのパーティーって、昨日のテキサスホールデムポーカーの時は4人いたよね? どうして今日は3人なんだろう」

 冬真は疑問に思ったことを口に出してみた。

「あー。それはねー、神崎さん達は3人の固定パーティーで、4人目が必要な時はオートマッチングアプリを使ってその都度補充してるんだってさー」

 と、なぎささんが答えてくれた。

 なるほど、さっきの対戦は3人で十分だと判断したわけか。まぁ実際、3人できっちり勝利してたわけだが。

 冬真は一旦納得して、今度は別のことが気になった。

 確か佐藤さんのクラスはM2H(男性・20代後半)、織田さんのクラスがM2L(男性・20代前半)でそれぞれ冬真・蒼大君と重複してしまう。ちなみに神崎はM3L(男性・30代前半)だ。

「神崎さん達とパーティー同盟を組むとしても、パーティーポイントが足りているかどうか確認しないといけないな」

 これには玲央奈ちゃんが答えてくれた。

「結論としてはちょうど足りそうやで。今朝の時点でパーティーポイントは3、蒼大さんが加入して+1だから現在は4ポイント。神崎さん達とのパーティー同盟で-2、クラス重複2名で-2、で差し引き0になるで」

 なるほど、それなら問題無さそうだ。


「悟さんはどう思いますか?」

 念のため冬真は聞いてみた。

「そうだな。神崎さんの言う通り、お互いに利があるだろう。なぎささんがダーリン一筋ならデメリットも無いことだし、冬真さんが自由に判断していいと思うよ」

 悟さんまでダーリンって呼ぶのか……。まぁいいや。

「お試しでパーティー同盟を組んでみることにしよう。もしも何か問題があれば同盟解消すればいいし」

 冬真は決めてみんなを見た。みんなうなずいてくれた。

「じゃ、神崎さんに連絡しとくねー」

 なぎささんがチャットアプリを開いて神崎と連絡を取り始めた。


 しばらくして神崎達が食堂にやってきた。

「よろしく頼む」

 と神崎が握手を求めてきたので冬真も応じた。

「はい、よろしくお願いします」

 みんなで次のミッション会場の体育館へ向かった。

 合計9名の大所帯となったので、移動時の列も長くなった。

 神崎は挨拶もそこそこに早速、なぎささんと楽しそうに雑談を始めた。どうやらスキンケアの話のようだ。

 冬真には、なぎささんが会話を楽しめそうな話題の提供力もトーク力も無いのでちょっと羨ましく思った。


 佐藤さんが冬真に話しかけてきた。

「昨日、神崎さんが山本さんに急にアプローチしてきて驚かれたでしょう? 普通に考えてそれでうまくいくわけないのに……」

 佐藤さんが神崎をちらりと見て続けた。

「神崎さんって好みのタイプの女性が目の前にいると、急にIQが下がってポンコツになるんですよね。でもイケメンだからそれでうまくいっちゃう時もあるんですよ……」

 佐藤さんが苦笑したので冬真もつられて苦笑した。ちなみに佐藤さんもイケメンである。

「そうだったんですね。確かに驚きました。俺にはあんなに積極性が無いので少し羨ましいです」

 と、冬真は言ってみた。

「積極的なのはいいんですが、あーいう偉そうな感じの性格だから、付き合うことになったとしても、しばらくすると女性側からフラレるんですよ」

「それなら羨ましくないです」

 と冬真が答えると2人で笑った。

「佐藤さんは女性の扱いがすごくうまいんやけど、モテる分、たくさん泣かせてる感じやから罪深い男やでー」

 玲央奈ちゃんが会話に加わってきた。

「ちょっと……。玲央奈ちゃん、人聞きの悪い。それは偏見だよ、偏見」

 佐藤さんが慌てている。

「へー、そうなんやー」

 玲央奈ちゃんがジト目で佐藤さんを見ている。

「ま、佐藤先輩もあんまり人の事をとやかく言える身分じゃないってことっすね」

 織田さんが笑いながら言った。

「いやいや! 今の彼女は大切にしてるって」

 佐藤さんが更に慌てて言った。

「と、いうことは、〝今より前〟の彼女達は大切にしてなかったんやな」

 玲央奈ちゃんが呆れた感じで更にジト目になって言った。

「玲央奈ちゃんって、こんなにきつかったっけ? 昔の優しい玲央奈ちゃんに戻ってー」

 佐藤さんがもう勘弁してくれの顔で玲央奈ちゃんに頼んだ。

「ウチは今でも誠実な人には優しいで。ね、冬真さん?」

 玲央奈ちゃんが笑顔で冬真を見た。

「あ……うん。なんかいつも遊ばれてる気はするけど……」

 冬真が微妙な答え方をしたので、玲央奈ちゃんが、

「やっぱ冬真さんはもうちょっと女心を学んで欲しいわー」

 と言ってがっくりのポーズになった。その様子を見て奈緒さんと蒼大君が笑っている。

「雰囲気いい感じっすね。羨ましいです」

 織田さんがしみじみとして言った。

「神崎さんパーティーは普段どんな感じなのでしょうか?」

 奈緒さんが笑顔で聞く。

 佐藤さんと織田さんは顔を見合わせた。

「うーん……。職場と変わらないですね。神崎さんにビシバシしごかれる感じです」

 佐藤さんが苦笑した。

「今は神崎さんが山本さんと楽しそうに話してるんで少し解放されて、正直、めっちゃ感謝してるっす」

 織田さんは呑気《のんき》に笑った。

 大変そうだな。うちのパーティーは雰囲気が良くて助かった。

 何気にそういうところは奈緒さんのおかげかもな、と思って冬真は奈緒さんをちらりと見た。

 奈緒さんと目が合ったので2人で笑っていると体育館が見えてきた。


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