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第10話【2日目】みんなを守る

 第7チェックポイントを終えた奈緒子達は第9チェックポイント会場のプレハブ棟へ向かった。

 朝よりもかなり日差しが強くなり、暑さを感じるようになってきた。

 ミニフットゴルフで出番の無かった奈緒子だが、それでも体力を消耗した感じがするので屋内への移動はありがたかった。

 プレハブ棟に入るとエアコンが効いていてひんやりしていた。汗がみるみる引いていく感じがする。


 ロビーの受付テーブルには第6チェックポイントと第9チェックポイントの看板が掲示されていた。

 プレハブ棟はこの2つのミッション会場になっているようだ。

 なぎささんが先に第9チェックポイントをやってほしいと要望したので、冬真さんがそちらの受付で手続きをしている。


 ふと傍《かたわ》らに立つ蒼大君をちらりと見てみた。おそらく身長180cmを超えているだろう。

 150cmを少し超えるぐらいの奈緒子は彼を見上げて会話することになるので、ちょっと首が疲れそうだなと思った。

 体は大きいけど大人しくて優しい雰囲気なので恐怖は感じない。それに奈緒子と話す時の波動は好意的なものだった。


「受付を済ませてきたよ。みんな、ミッションを確認してみてもらえるかな」

 と冬真さんが頼んできた。冬真さんはA4用紙の束とハサミを持っていた。

 受付後ならアプリでミッション内容を確認可能だ。奈緒子は早速確認してみた。



 <第9チェックポイント【知力】>

 ・ペーパータワー

 ※基本ルールは別項を参照すること。

 ・作成したタワーの高さによりスコアを決定する。タワーは運営スタッフが計測する。

 <獲得スコア:タワーの高さ90cm以上:100>

 <ボーナススコア:100cmを30cm上回る毎に+10>

 <減点スコア:100cmを10cm下回る毎に-10>

 ※なお、本ミッションは同盟メンバーも含めて全員参加すること。

 ・制限時間は運営スタッフが計測開始してから1時間以内とする。


 以下、基本ルールには記載の無い事項を補足する。

 ・材料は運営が支給するA4用紙20枚とする。

 ・使用可能な道具は原則、運営が貸与するハサミのみ。私物の糊《のり》やテープ等を使用することは不可。

 ※筆記用具は運営スタッフに使用方法(切り取り線を記入する等)を申告して許可されれば使用可能。



 みんなで会議室に入った。運営スタッフの若い女性が1名、付き添っている。

 会議室の中は机と椅子が端に寄せられていて、タワーを作成するためのスペースが確保されていた。

「制限時間の1時間はどんなタワーを作るかの検討時間も含みますか?」

 冬真さんが運営スタッフさんに質問した。

「はい。検討時間も含めて1時間以内でタワーを作成してください。作成後、アプリで呼び出しボタンを押せば運営スタッフが計測に伺います」

 運営スタッフさんがスマホのアプリ画面を出して説明を続けた。

「今から私が開始の手続きをします。直後にカウントダウンが開始されますので、みなさんのアプリで残り時間が確認できるようになります。何かご質問はありますか?」

 冬真さんがみんなを見回した。奈緒子を含め、質問は無さそうだった。

「質問はありません。開始をお願いします」

「承知しました。たった今、開始しました。ご健闘をお祈りいたします」

 と、言って運営スタッフさんは退室した。


「まず、どんなタワーを作るかだな……」

 と、冬真さんが考え始めた。

「タワーと言えば、通天閣やろ。ビリケンさんもいらっしゃるしな」

 玲央奈ちゃんが早速提案した。

「通天閣は見たこと無いけど、東京タワーのイメージで作ればいいか」

 冬真さんが提案してみんなを見た。奈緒子も通天閣は見たことが無い。

「とにかく4本脚を作って土台を安定させて、その上に更に細いタワーを積んでいく感じでええと思う」

 玲央奈ちゃんがだいたいのイメージを固めてくれたのでそれでいこうか、ということになった。


「けどさー。ペラペラの紙で作るのってなんか強度的に不安だよねー」

 なぎささんがA4用紙1枚を手にとって、ひらひらさせながら心配した。

「あの、それについては紙を何回か折れば強度が確保できるのではないでしょうか?」

 奈緒子は小さい頃に熱中した折り紙を思い浮かべて言った。

「お、奈緒さん、えらーい。それでいけそうだねー」

 なぎささんが賛成してくれたので嬉しかった。

「じゃーさ。紙と紙の連結はハサミで切れ込みを入れて、差し込んで噛み合わせていけばいいんじゃないかなー」

「せやね。それでいけそうや」

 女性3人で段取りをどんどん決めていく。男性3人はポカーンとして見ている。

「ほらほら。そうと決まれば分担して土台の脚を作っていくよー。男達もぼさっとしてないでしっかり手伝ってよねー」

 なぎささんがテキパキとみんなの分担決めと指示出しをした。


 玲央奈ちゃんがホワイトボードに書いたイメージ図に従って、みんなでパーツを作成していった。

 奈緒子が各パーツの作り方を考案してみんなに教えながら進めた。

 蒼大君に教えてる時に奈緒子の手が彼の手に当たった際、顔が赤くなっていた。

 好意の波動が強くなっていたので、今後は気を付けなくちゃ、と思いながら作業を進めた。

 パーツがだんだん出来てきたので、パーツを組み立ててタワーを作る作業も並行して進めることになった。

 組み立ては冬真さんと蒼大さんが主で、悟さんがサポートする形で進めていく。

 土台が組み上がったのでその上に細いタワーを載せてどんどん積み上げていった。

 タワーはもうすぐ奈緒子の身長を超えそうだ。ノルマの90cmは既に余裕でクリアしているので、あとはボーナススコアの積み上げ段階だ。

 会議室内には運営側で用意してくれた小さい脚立《きゃたつ》があったが、蒼大君は脚立を使うこと無くタワーを積み上げていく。

 それを見ながら、

「私はチビだから、身長が高くて羨ましいです」

 と、つい奈緒子は口から漏らしてしまった。

「いえ、僕は単にデカいだけですから……。奈緒さんは小柄で雰囲気が似合ってると思うし、素敵だと思います」

 蒼大君が照れながら言った。冬真さんがうんうんとうなずいている。

 つい、蒼大君が可愛いな、と思って奈緒子は笑ってしまった。冬真さんは昨日も数回出していた謎の幸せの波動を出していた。


 タワーが蒼大君の身長ぐらいになったところで、

「もう、これ以上高くするのは厳しいです」

 と、蒼大君が言った。

 奈緒子はタワーを近くで見上げていたので首が疲れてきていた。

「うーん、なんとか190cmまで伸ばしてボーナススコアを上積みしたいところだけど」

 冬真さんが言って残り時間を確認した。

「これ以上、伸ばすのは大工事になりそうやし、残り時間的に厳しいからこれでええんちゃう?」

 玲央奈ちゃんの見解にみんなうなずいたので、冬真さんがアプリで運営スタッフさんを呼び出した。


 さきほど説明してくれた女性の運営スタッフさんに加えて、もう1名の男性スタッフさんが会議室に来た。

「では計測します」

 と女性スタッフさんが言って計測を開始した。

 脚立の上に男性スタッフさんが立ってメジャーで測っている。メジャーの地上側は女性スタッフさんが押さえている。

「180cmオーバーしてますが、190cmには届いていないです。スコア120とします」

 なかなか上出来ではないだろうか。

 奈緒子がみんなと喜びを分かち合いながら、ふと悟さんを見ると、なぜか運営スタッフさん達のスタッフ証をじっと見ている。

 何か気になることがあるんだろうか?


 女性の運営スタッフさんが提示してくれたQRコードをスマホで読み取るとスコア120が加算された。

 これにて無事に第9チェックポイントもクリアだ。順調だなぁ。運営スタッフさん達が退室していった。


 次は同じプレハブ棟の第6チェックポイントかな? と奈緒子が思ったところでなぎささんが会議室にみんなを呼び止めて話し始めた。

「実は神崎さんから第6チェックポイントで対戦しようって持ちかけられているの。神崎さん達も第7と第9チェックポイントをクリア済なんだってさ」

 なぎささん曰く、朝に神崎さんから連絡があって、こちらのパーティーの動向をこれまで共有していたらしい。

 プレハブ棟に到着して先に第9チェックポイントをクリアしたのは、その後の第6チェックポイントで神崎さん達と対戦するための調整だったということが分かった。

「なぎささんのことが諦めきれないんやなぁ。もしかして、対戦の勝敗で何か条件をつけられてたりする?」

 と玲央奈ちゃんが心配そうに聞いた。

「神崎さん達が勝利したら、こちらのパーティーに来て欲しいってまた誘われちゃったけど、わたしにはダーリンがいるから無理って言ってやったわよー」

 なぎささんが笑いながら言った。冬真さんの波動が一瞬動揺してたけど、落ち着いたようだ。分かりやすいなぁ。

「でさー。逆にもしもわたし達が勝利したら、何か助けて欲しいことができたら神崎さん達に協力してもらえるって条件なら検討してあげるよー、って言っておいたわけよ」

 となぎささんが胸を張って言った。

「それで神崎さんは納得したん?」

「うん、それでもいいってさー」

 なるほど、負けても失うものが無く、勝てば神崎さん達の協力を得られるってことか。なぎささん、折衝力《せっしょうりょく》高いなぁ。

「そんなことになっていたんですね。なぎささんって交渉上手ですごいですね。あと、やっぱりモテるんですね」

 蒼大君が感心している。

「そうなのよー。誰かさんと違って、蒼大君はわたしのことをちゃーんと分かってくれて偉いねー」

 なぎささんが上機嫌で蒼大君を褒めたので、彼はかなりデレデレしていた。冬真さんと同じで女性に弱そうだなぁ。

「で、リーダーの冬真さん、どうするー? 愛するなぎささんを守るために神崎さん達と勝負しちゃうー?」

 別になぎささんを守るための勝負ではないけど、冬真さんを焚《た》きつけるところがなぎささんらしい。

「うーん、負けた時にスコアが少なくなるデメリットがあって勝負する道理は無いけど、昨日決めた強者に勝てるパーティーになるってビジョンがあるから、やってみようか」

 冬真さんが少し考えて決めたようだ。うん、冬真さんらしくていいなぁ。素敵。

「ちょっとー。道理が無いって何よー。なぎささんを守るって道理があるでしょうよー」

 なぎささんが不満そうに言うので玲央奈ちゃんが笑いながら、

「ここは、俺がなぎさを守る! って言うべきところやで」

 と冬真さんにアドバイスした。

 蒼大君が期待のまなざしで冬真さんを見ている。奈緒子もなんだかドキドキしてきた。

「俺がみんなを守る!」

 冬真さんが言った! 嬉しい!

「はい、正解! よくできました」

 なぎささんが冬真さんのみぞおちをパンチした。

「ぐはっ……。なんで……」

 玲央奈ちゃんと蒼大君が笑い転げている。悟さんはやれやれという感じだ。

 女の子の扱いは下手だけど、でも今のはカッコよかったよね、と奈緒子は湧き上がってくる嬉しさを噛み締めた。


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