リザレオに色々おそわったっ!part4
窓のない室内は、広い両開きの扉を開けておかないと何がどこにあるかわからないぐらい暗かった。
広さは結構狭く、簡単な整理だけで積み上げられている武器の数々に占領され、人が三、四人入れるかどうか、という所だ。
ざっと見た感じ、大半が弓矢の装備で弓は長短色々取りそろえてある。
長弓はかなり大きく、和弓ほどではないにせよ、上半身分ぐらいはある。リザレオがいつも持ち歩いているのは肩幅より少し小さいぐらいの短弓。
これはかなり短い方の弓だ、と言うことがわかった。
「リザレオの弓は短いな。狩り用か?」
「そうだ。でも、戦いの時にも使うことはある。リザレオは誰よりも矢を飛ばせる! 近づくのもうまい。これで十分なときはこれ」
えっへん、と胸を張るリザレオ。大きなおっぱいがより大きく見える。
そんなことしかオトコは思いつかないのか、と言われればそうである。
そのとおりなのだ。
「戦闘能力が高い、ということか。……?……聞き飛ばしそうになったが、狩り以外……があるのか?誰相手の?」
「ある。マークル・ガンツォの時とかだ」
「は?」
また教授翻訳システムが仕事放棄している。ちょくちょくあるが、該当する日本語がないのかもしれない。本来、謎システムで、リザレオ達も謎言語だしな。
後で詳しく聞いてみよう。
矢も色々長さが違うのが取りそろえてある。鏃があるのないの、分かれている。
ないものは真っ直ぐに削られた枝の先を尖らせているだけのシンプルなモノ。
鏃は金属で三ツ山の三角形。ここに来て二度目、二回しか目にしていない金属加工物だ。
「鉈、アガールとか、これとかはどこで作っている?」
「ここでは作れない。これはアザルーゾから持ってきた。アガールもだ」
「アザルーゾとはなんぞ?」
「子供がいっぱいいるところだ。ここに来る前、リザレオもいた。子供がそこで大きくなり、戦闘のやり方を学び、集落に来る。その時、鏃もアガールももらう」
「アガールがもらえるのは優秀なものだけだ。カーマ・リザではリザレオを入れて四人。誇らしいものだ」
アマゾネス戦士の誇りの象徴、というわけか。
「鏃は決まった数しか持ってこれない。だから、狩りの時は最後に使う。とどめを刺すときだけ。これは深く深く刺さる」
リザレオが俺の手の中の鏃付きの矢を指さして解説する。自分でも矢を取り、腰の弓に番えて、実際に構えて見せたりしてくれる。構えは縦構えも横構えも使うようだ。
密林の中では決まった形などない方が利便性がイイ、と言うことだろうな。
しかし、どのような構えでも当てられる、というのはスゴい。
「鏃は獲物から回収する。これを外すのは恥ずかしい。すっごく恥ずかしいことだ。だから、絶対に当てる」
鏃付きの矢を手にしながらリザレオが熱弁する。
「そこでものをいうのがカエル毒、というわけか」
俺は以前リザレオが取り出したのと同じ瓶を見つけ、手に取った。
漏れてないだろうな……手に付くだけでも危険だからな。これは劇薬過ぎて。
「んーん。カエル毒、獲物にはあまり使わない。食べられなくなっちゃう」
「あらら、そっか」
「毒抜きに手間と時間がかかる。その間に食べられなくなる。蟻が食べちゃう」
「それじゃ意味ないな」
「これを使うのはケロウマゥ、神聖な決闘の時と……」
リザレオがその細い指を伸ばし、こつこつと爪先でつつく。
「……マークル・ガンツォの時だけだ。死を持って決する。その時だけ」
リザレオの瞳がギラリと光った。一番始めに出会った時のような鋭い眼光。
マークル・ガンツォ……また出た。なんだそれ。
「この長い弓も……マークル・ガンツォの時だけ使う……長い距離を撃つ。近づけないことが必要。でないと……いつも苦戦する」
しょっちゅう出てくるマークル・ガンツォだが……何者かの襲撃があるのか?
この集落は。
誰が襲ってくるというのか。
「マキタ!もう見たか!楽しい?」
リザレオが空気を変えるように、明るく問いかけてくる。
あまり、して楽しい話題ではなかったらしい。
では、リザレオの心遣いに合わせるか。
「楽しかったぞ。集落のこと、リザレオ達のことがいっぱいわかった」
「そっかー。まだ、会わせたい人たちがいるから集落の方に行こう!たぶんみんないるぞ!」
リザレオは俺の腕を取り、抱きかかえるように歩き出した。
暗い部屋を抜けると、目の前に樹々で織りなしたドームの道。
その先が大集落のようだ。
両開きの扉を閉めに近づいてきた少女兵ジオヴァーナが、俺の腕にぶら下がるように抱きついて、楽しそうにニコニコしているリザレオ、というかカーマ・リザを見て目を丸くしている。
ま、さっきの圧迫隊長と、昨日の夜とかの、とろとろの甘え声でマキタぁとか言いながらいちゃついてきたリザレオとが同一人物に見えないのは俺も同じ。
彼女的には想像も出来ないんだろうな。たぶん。
俺は多少同情的になりながら、リザレオに腕を取られたまま、残りの手をひらひらと少女兵に振って、「じゃあな」と告げながら、並んで武器庫を後にした。
「スーランは家いっぱい!みんな住んでるぞ!王宮もある!かなり広い!」
リザレオが並んで歩きながら、両手をいっぱいに広げる。
自慢なんだろうな。いい集落っぽい。
「仲間もたくさんいる!みんなにマキタ紹介しよう!そうしよう!」
ウキウキと弾むように歩いて行くリザレオは微笑ましいほどかわいい。
さっきの圧迫隊長はどこ行ったのか。
両サイドに森の続く広い道の先が開けている。リザレオの家は、外れの監視小屋のような役目も果たしているのだろう。その先の大集落とはちょっと離れている。
間の森のような熱帯雨林は、人の出入りがあるせいか、うっそうと茂る森奥よりかは間引かれて薄くなっている。それでも巨大な幹が所々にあり、長く伸びた枝葉が頭上でドーム状となっている。
適度に日当たりも弱まり、散策には丁度いい日差しだ。
心地いい道を上々機嫌のリザレオと並んで歩くのはいい感じだ。
その先に見える広間は、ここからでもかなりでかく感じる。
大勢の人が住んでいる、と言うリザレオの言葉は本当のようだ。どこかざわめかしい街の雰囲気のようなモノも漂っている。
ほえー、とあたりの木を見上げ、完全に油断していた。
ひゅぅ、と小さく風の唸りが聞こえたか、聞こえないか。
リザレオは反応していた。ざっ!と素早く俺の前に立つと、アガールを一閃!
ぱきり、と折れた矢が地面に落ちる。
え?
ええ?
棒立ち状態の俺。油断無く辺りを見回すリザレオ。
「カーマ・ハファ!冗談が過ぎる!」
リザレオが噛み付くように叫ぶその声は、さっきの少女兵に放ったような冷徹な響きを持っていた。
広場の入り口。その端の門のような巨大な樹。横に張る大きな枝の上。
そこに一人のアマゾネス戦士が淡い不敵な笑みを浮かべ……しかしその瞳は鋭く、幹を背に腰掛けていた。
装備はリザレオとほぼ同じ。極少ブラとショートスカート。足の革当て、腿の矢筒。頭の革鉢巻きには大きな虹色の鳥の羽。
手にはリザレオのいつもの弓より更に長い弓が。
違っていたのは他にもあった。
褐色肌に環を描いて幾重にも描かれているボディペインティング。
長くストレートの黒髪は背まで届いている。
そして、リザレオより更にデカい……
褐色爆乳だった。
今週週末までは出来るかな。毎日更新。




