リザレオにマークル・ガンツォのことを聞きまくったっ!
また夜が少し深まり、ジャングルからなにやら獣の叫び声が響く。
真夏の夜のようなねっとりとした空気は、ちゃんと服を着ている俺には少し暑いぐらいだ。リザレオぐらいの軽装で丁度いいのだろう。
暑いのは……戦の昂揚がまだ残っているからかも知れない。
それはリザレオも同じだったろう。抱きつかれている滑らかな褐色の肌は未だ少し熱を帯びているような気がした。
「せっかくの戦勝の夜に……なんか盛り下げる様で済まんな。リザレオ」
「ううん……楽しかったけど……あまり浮かれてもいられない。次の襲撃はきっと……大きなものになる。マキタ。力になってね……」
しっとりと俺の腕に抱きついているリザレオがさらにきゅっと力を込めてくる。
その頭をなでなでとすると、さすがに砂埃でジャリジャリだ。
「先に戻る前に身体洗うかっ。俺も汗を流したい」
「んっ!マキタっ。それいいっ!リザレオもそう思ってたっ!一緒!」
ぶんぶんと抱きついた俺の腕を振り回し、リザレオは大賛成のようだ。着替えはないけど、ま、もう集落の外れだから特に問題もないだろう。
洗い場はリザレオの家から近いし、何なら全裸で帰っても。ぐふふ。
「他の人も集まっているかな? 洗い場は?」
「んー。他にも場所はあるからー。少しかな? スーランの真ん中にもっと大きいのがあるし。そっちが近いヒトはそっちに行く」
「まいっか。ンじゃ進行方向転換ー。目標洗い場ー」
「んー。こっちー」
リザレオが俺の腕をぐいぐいと引いていくのにまかせて、俺はゆったりと歩いて行った。
「ハファエラは前線に出ないであのでかい岩……グロルル……だっけか?……あの廻りを固めていたのはなんか意味があるのか?」
「あのグロルル……忌まわしい岩は……ガンツォの目標だから……」
リザレオの声が少し昏くなる。申し訳ないと思いつつも……聞かないわけにはいかない。
「アレに触れられると……負けになる。その時点で戦闘は止めないといけない。誰か一人がそこまで辿り着くと……あとはどんどん触られてしまう……」
「触られるとどうなる?」
「その触った人数分……スーランの人を送り出さねばならない……ガンツォ達に渡さなければ……」
その一言を言うときのリザレオは…………
聞いて良かったんだろうか……と、俺を後悔させた。
「ガンツォはイヤがる娘達を引きずって連れて行く。森に消える。そして二度と会えることはない……」
それをおとなしく目の当たりにしなければならないリザレオ達の慚愧は……歯がみするほどの怒り、虚しさ、痛切はいかなるものか。
想像するだにつらい光景だ。
「……だからそのグロルルを死守していたのか……そのルールは誰が決めたんだ?」
「遙か昔からの掟だ。誰が決めたかとかはもうわからないほどの昔から。何故この様な掟があるのかすらわからないほど昔から」
「それをそのまま遵守しているのか……」
「どのみち……ガンツォ達は襲いかかってくる。ルールがあるならその方がまだマシだ。今日のような完勝は滅多にないが……それでもマシだ。だいぶだいぶマシだ」
返す言葉が見つからない。その戦いこそが、アマゾネス達の平穏を支えていたのだ。
「……グロルルに触られた人数分は誰が行くんだ?どうやって決める?」
「……アッガ・ヒラームで決められている」
「それは……順番を決めているリストのようなモノか?」
「そうだ……戦士は上位になればなるほど後だ……先に行くのは……スーランの者の中から選ばれたヒト……若い戦士もそこに含まれる……そこを切り抜け、手柄を立てれば順位は下がる……しかし、スーランの中から選ばれたヒトはずっと……」
「それは誰が決めている?」
「アッガ・ヒラームを決めているのは、グラビオラ様とその取り巻きのイゼマニ達だ。もう年老いてヤーオを退いてグラビオラ様の帝宮に入った者達だ。グラビオラ様の名の下に指名され、順を決められる」
「…………リザレオも入っているのか?」
「もちろん! だいぶ順位は後だが……心苦しいことだ……が。務めがある。勝たねばならぬ責務がある」
悲壮なる覚悟がリザレオの横顔に浮かぶ。背負っているものの大きさ、それはこの集落そのものなのだ。リザレオが失すれば……どれだけの娘が泣くこととなるのだろう。
「まぁ、マークル・ガンツォの最中に負傷し、ガンツォに捕らえられてしまった者はそのアッガ・ヒラームに関わりなく、連れて行かれる。そういうことになっている」
と言うことはリザレオとて、簒奪の危機から逃れているわけではない……と言うことか……。
「ガンツォ達は攻撃で斃れた戦士を引きずって森に消えていく。グロルルまで進めなくても充分な数、戦士を斃して連れて行ければ……それで満足して去って行くこともある……」
「……むむむ……あの、低い音は?リザレオが俺を止めたアレ」
「ジェロエスタのことかな?……あれが響けば戦は中断だ。ガンツォ達も温和しく去って行く。例え捕まってる戦士がいても手放さなければならない」
「誰かが吹いているのか?誰だ?」
「それは知らない……ガンツォの方の誰かが森から見ていて、戦況を見て吹いているのだろう、とハファエラが言っていた。リザレオもそう思う」
ふむ……結構、不利なルールなんだな。勝ちきることはできにくい、と言う話か。
「ヤツらに襲撃は掛けないのか? こちらからさ」
「森のどこにいるのか……わかっていない……おそらく遠く遠くから来る。リザレオ達が一日で歩ける範囲の外だ」
「森で野営して攻め込めば……?」
「バカな!……森で寝ると精霊に頭を乗っ取られてしまう。おかしくなっちゃうぞ。マキタ。森で寝たら絶対ダメ。カラソゥが耳から入ってきてしまう。ダメだぞ」
なんぞ。その迷信。しかし、それを言うリザレオの顔はまったく真面目そのものだった。
「昼寝もダメなんかい」
「ダメ。森で寝たら。昼なら他のガリンゴとかに襲われることもある。知らない虫に魂を持って行かれることもある。ちゃんと起きて動いて、ちゃんと出てきて、うちに帰ってから寝る。ちゃんと!」
律儀な性格は女性ならではか。ちゃんと!、とかリザレオに言われるとなんか妙に説得力が。
どこかで聞いたような耳触りなのが、ちょっと気になった。おふくろかっ。
リザレオの家を宵闇の彼方に薄く見て、方向を変えた俺達はいくらも歩かないうちに洗い場に到着した。
夜の洗い場は月明かりしかなく、足下が少しコワいが、中々月明かりにいい雰囲気でもある。
何人か、先に使っている女性達がいて、後から現れたリザレオに軽く会釈している。この闇でも見えるのか……さすがジャングル娘達。
俺にはまったくおぼろにしか見えないぞ。くそ。美人かどうかどころか、身体のラインすら見えない。くっそう。
そんな残念な気持ちも、一気に吹き飛んだ。
隣のリザレオがぱぱぱっとその羽根飾りのかぶり物を取り、小さなブラを取り、腰巻きを脱ぎ去った。
いくら見ても文句の言われない極上ボディが直ぐ近くに!
俺に背中を向けて、屈んで足の革紐を解いてるリザレオは月明かりの中……息を飲むほどエロティックだ……。
満々たるエロ尻がこちらを向き、紐を外していくたびくねくねと揺れる。
……っっ!
危うく胸の中にわだかまる熱に火が付いてしまうところだっ!
いかんっ!まだここではいかんっ!
他の人もいるしっ! いやいや……あえて……いるのがいいか? ぐふふっ。
いや!そのプレイはまだ早いっ!
必死の思いで俺はその月明かりに滑る光を放つリザレオ尻から目を離し……くっ。自分の服を上から手早く脱いでいった。
いかん。少し反応している。はー。深呼吸。
「さ!いこー!マキタっ!」
堂々と真っ裸なリザレオが、俺の肩を柔らかく押す。
「待て。ブーツの紐が……先行ってていいぞっ」
「時間かかる。マキタ。いっぱい着すぎ。先行ってるぞっ。早く来てねっ」
とてとてとリザレオが水辺に近づくと、今まで入っていた他の人たちがそそくさと上がってくる。
やはり……隊長と同時に風呂に入るのは気詰まりか。なんとなくそういう雰囲気だ。それとも……俺のせい?
上がってきた人たちは身体を拭くのもそこそこに、小さな衣服を手に持って歩き去って行く。その素肌の曝し方の堂々っぷりたるや。
もっと明るかったら、じっくり見れたのに。
ま、もっとイイものあるけどな。
俺は、もうもつれてほどくのも面倒くさくなったブーツを蹴り捨てて、靴下を引っこ抜くと、そそくさとリザレオと同じ素っ裸になり、先に浸かっているリザレオの所に歩いて行った。
なんでログインできない?まったく!あれか?!




