カーマ・リザ、カーマ・ハファの合同祝勝会で盛り上がったっ!
俺は遠巻きにされてはいたが、かなりカーマ・リザの中では受け入れられたようだ。
誰も近寄っては来ないものの、チラチラとこちらを見る視線を時々感じる。
度胸試しなのか、俺の背中にそっと忍び寄ってちょっとタッチしてはまたさーっと逃げて、キャアキャア騒いでいる女の娘達のグループもいた。
「触っちゃったぁ」「すっごーい」などときゃわきゃわ盛り上がっている。
何の遊びだよ。ふふふ。可愛いっちゃ可愛いけど。
一戦の後、カーマ・リザの面々はリザレオを中心に集結し、リザレオの一声でぞろぞろと集会所に向かった。まるでそれは女子高の下校風景に女ばかりの職場の定時退社を足したかのような。
ものの見事に若い女ばかりの行列。その一人一人が戦勝に浮かれ、時々あちこちで歓声が上がり、ぴょんぴょん跳びはね、カーマ・リザ!のコールが起こり、まるでコンサートの後のような昂揚が漂っていた。
ジャ○のコンサートの後とかこんな風景?
見たことはないけど、なんとなく似ているのではないかと。
そして例のち○こ岩周辺を守っていたカーマ・ハファの幹部連中あと、ハファエラ自身が、集会所に姿を現していた。
そのハファエラを見つけて、俺の隣を歩いていたリザレオが歩み寄る。
「今日のマークル・ガンツォは小規模だったな。カーマ・リザ」
「ハファエラ。そっちまでいかなくて幸いだった」
二人のアマゾネス隊長達ががっちりと握手をした。
「こんな日没近くに攻めてくるとは……意表を突いたつもりか? おそらくは電撃的に襲撃し、何人か素早く攫う、そんな目論見だったのだろう」
腕組みをしたハファエラが重々しく告げる。濃褐色の巨大サイズ乳がむにゅりと盛り上がり、俺はそっちに目がいきっぱなしだ。
「私もそう思う。ヤツら装備も軽装で槍と小さな盾だけだった。走力重視、という所か。攫われるものが出なくてよかった」
リザレオがやれやれと肩をすくませる。
「ま、腹を空かせた野良犬数匹だ。簡単に追っ払えて良かった」
「甘く見るな。腹を減らすだけのことがヤツらに起きた、と言うことだ」
リザレオの眉根が歪む。それが意味していることを充分に心得ている、と言うことだろう。
「次の襲撃は大きいぞ。対策を」
「そうだな」
隊長二人の会話は短く終わり、その後は全員が集会所の中での会議となった。
此度のいくさの論功行賞もあり、第一等は襲撃の第一発見者、と言うことで決まった。
それは二人の隊長の一致した結論だった。
迅速な対応ができていた、と言うことで、誉れを与えられる。
ちゃんとそういうのもやるんだなー、と俺は遠巻きに見ていた。
褒賞は小さな房だった。それが増えれば大きな房に昇格し、戦士として上格になっていく、というものなのだろう。
照れくさそうに房を受け取る若いアマゾネスは、カーマ・ハファのメンバーみたいだった。これが最初の房のようで、誇らしげに頭の革の輪に下げて両手を挙げて歓びを露わにしていた。俺も拍手で賛美の歓声に加わった。
リザレオは……大きな房を幾つもつけてたな……どんだけ手柄を立てたのか。
ま、そうでなきゃ、隊長なんかやってないか。
その俺の前になにやら杯が差し出された。ン?
隣の若いアマゾネス戦士が中身の入った杯をおずおずと差し出していた。
「あ、どうも……なんすか?これ?」
「ジュレル……です。お疲れさまでした……」
まだ少し目端におびえの影は残っていたが、初めてちゃんと口をきいてくれたリザレオ以外のアマゾネスだ。カーマ・リザの一人のようだった。
「ジュレル……なんだ?」
匂いを嗅ごうと口に近づけると、その娘が慌てて制止した。
「まだです……みんなでっ……一緒にですっ」
「おおぅ……そういうことね。わかった。ありがとうね」
ちゃんと言葉が通じていることに安堵したのか、にこりと微笑む顔が可愛かった。
「今日は大戦果だった! 一人も奪われることなく退けた! 何事も無きが最大の戦果なのだ! 勇敢なるカーマ・ゾンデ達に乾杯!」
「乾杯!」
アマゾネス戦士達がその号令で一斉に杯を掲げ、呑み干していく。
俺も掲げた杯に口をつけた。
例によって果物を混ぜ合わせたようなどろりとした飲料だ。少し発酵臭がある。アルコール分もあるのだろう。お疲れさまのスタミナドリンク、という所だろうか。
大学体育会系の寝ゲロ寝グソの吹き荒れる失神者続出の地獄の飲み会を生き抜いてきた俺には薄すぎるアルコールだが(有名な火が付くウーロン茶とか。ウォッカとかスピリタスとか言う単語が飛び交う地獄現場なのだ)彼女らアマゾネスにはこれでも充分効くようだ。ビールより仄かなアルコールでもすっかり顔を朱くしている娘までいる。
酒が入り、すこし緩んだ雰囲気は中々かしましくて微笑ましい。
その人並みがざっと別れたと思ったらその真ん中からリザレオが現れた。
かき分ける必要すらない。ただ通れば道が空く、というのがすげえな。
「マキタっ! 呑んだ? ジュレルっ!」
「ああ。んまかった。もう少し濃いアルコールだと俺は嬉しかったけどな。でも味はすっごい美味しかった」
「あるこーる?……マキタ、時々ヘンなこと言う。これは勝利の味だ。勝ったときだけ飲む。いっぱいいっぱい飲みたいものだなー」
軽く回っているのか、リザレオも目の端が少し朱いような気がする。
「これでマキタもカーマ・リザの一人だっ! 一緒に戦おうっ!なっ!」
バシバシと俺の肩を叩くリザレオは、やはり酔っている。酔い方が中年オヤジみたいだなコイツ。
「いてて。おう。いろいろと聞きたいこともある。後で教えてくれ」
「ン……ジュレルでここはもう終わりだ。またゆっくり休んで明日からの襲撃に備えないと」
「夜襲はないのか? あの胸毛マン達の」
「ない。それはジッダに反する。それはヤツらも守る。守らなければお互いに歯止めが効かなくなる」
「なんぞ?ジッダとは?」
「……んん……他の言葉だと、協定……かな? 約束事だ。このマークル・ガンツォの」
「そうだ。そこだ。いろいろと聞きたいことが山ほどある」
俺の目が尖るのが自分でもわかる。この襲撃には不明の約束事がいっぱいあるようだった。ついさっき目の当たりにしたこの一戦はまるで……ゲームのようだ。実際に人死には出るのだが。
「じゃ帰ろー。マキタ……リザレオの家に……なっ……」
リザレオがしなだれかかるように俺の腕を抱える。むにゅっ、とその豊かな胸が潰れるやわやわな感じが……うっ。
少し酒が入っているせいか、よりくったりとしがみついてくるリザレオの身体は熱く、俺をまっすぐ見つめる瞳は潤んでキラキラしている。
その俺の指が丁度リザレオの股間に当たるのは……わざとですかっ?リザレオさんっっ!
俺の指先をまたがんばかりに腰を擦り寄せるのはっ……わざとなんですかっ!
こ、これがラテンの血っ!ラテン娘の情熱!というものですかっ!
んふう……自制しないとっ。
情報を聞き出す前に……押し倒してしまうかもしれん。
と言うか……きっとそうなる。
俺もリザレオも、たっぷり戦いの昂揚を身体の中に残している。体中を駆け回ったアドレナリンはその熱を頭の芯に疼かせている。今の俺達はもう火が付く寸前のニトログリセリンだっ!
爆発せずに!発散させずに寝られるかっっっ! んおおっっ!
でもその前に情報を。理性理性。
ジュレルの淡いアルコールでもリザレオには十分なようで、帰り道はすっかりご機嫌だ。
三々五々お開きとなった集会所を出るときはまだ回りに取り巻くように人がいたのだが、集落の一番端まで行く俺達の廻りから一人離れ、二人離れと、姿が消えていく。すっかりと陽も落ち、月明かりだけで歩く細い樹木の回廊にさしかかる当たりではもう俺達だけになっていった。
足下がふらつく、と言うことまではないものの、お気に入りのぬいぐるみを抱きしめるようにリザレオは俺の腕を抱きしめて離さない。
ま、二の腕がむにむに心地いいのは嬉しいが。
まして、今回の完勝は見事だった。戦勝の昂揚と相まって、少したがが外れてしまうぐらいは仕方の無いことだろう。
時折身体を捻るようにして、ふんふんと俺の腕にしがみついてくる。
「マキタのこの腕のおかげで勝ったっ。カーマ・リザの……いや、リザレオの宝物だなっ。ふんふーん」
嬉しげにぶんぶんとしがみついた俺の腕を揺らすリザレオは本当に可愛い。
可愛いが……腕が抜けそう。
「わかった。わかったから……真っ直ぐ歩いてくれ。リザレオ。中々家に着かないぞ……今、色々聞いてもいいか?」
「ン?……いいぞっ」
今の上機嫌なリザレオに水を差すのも可哀想だが……色々と俺の頭は疑問で膨れあがっている。これを吐き出さずに、並べ直さずに……家に帰ってえっちにのめり込めない。
仕事仕事。
「あまり楽しい話題ではないんだけどな……あの胸毛マン達は目当てはなんだ?食糧か?奴隷か?」
「ん……よくわからない。攫われていく戦士や、スーランの人がその先、どうなっているのか……ま、どのみちろくでもないことだろう……戻ってきたものは一人としていないのだから……」
「……そうか。人質交換とかはないのか……身代金的な」
「連れて行かれたらそれっきりだ……もう二度と会えることはないと……皆、覚悟している」
「すまんな、ヘンなこと聞いて……でもここを理解しておかないと。俺から何か提案できるかも知れないからな……」
「んーんっ……マキタ、このスーランのこと考えてくれている……それはうれしい。いっぱい嬉しいから……どんどん聞いてくれ。知ってる限り話すから……」
エリゼからは得られなかった情報。他の集落の人とは会話すらほぼ成り立たなかった。ハファエラからは激しい拒否。カーマ・リザの副隊長達も似たようなものだ。
俺にはただ、リザレオしかいなかった。




