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アマゾネスにつかまった!  作者: abso流斗
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蛮人どもの襲撃がはじまったっ!part2








森の中からわらわらと。

ごりごりの胸毛マン達が姿を現した。


手に手に長い槍を持ち、身につけているものと言えば腰布一枚。

後はみっしりとした全身万遍ない体毛ぐらいだ。毛深いなー。

背は平均して俺と同等ぐらいだ。中にはぽつりぽつりと上背があるのもいる。ただ身体の厚みはスゴい。胸板の厚さなど俺の倍近くあるかも知れない。

筋肉隆々のゴリマッチョ揃い。アメリカアニメの原始人か。こいつらは。

なるほど……一番目に付く……そしてアマゾネス達と決定的な違い。

胸毛……ね。インパクトありすぎでしょ。

それはもうしっくりときすぎて、それ以外は思いつかないぐらい。

ガンツォの一言で、もう言い表せすぎてしまっている。一度納得したらもう頭から離れない。



「襲え!」

先頭の一人がわめき、その胸毛マン達が一斉に近場の家に走り出す。

おっ、と思った。ヤツらの言語も翻訳できるようだ。

さすが教授翻訳マシン。伊達にバカ天才ではない。

何の相談も通知もなくヒトの首裏にマイクロチップを埋め込むだけのことはある。

まさに全ての意味で常識外だ。クソ教授。なんか連絡しろ。



物陰に潜んでいたアマゾネス達が走り寄ってくる胸毛マン達に弓で応戦しつつ撤退する。飛んでくる弓矢は距離次第では目視でき、長い距離、1本だけの矢筋ならば、身構えていれば普通に避けられ、腕次第ではたたき落とすことすら可能だ。

だからこその短弓か。至近戦しかないが、カエル毒を使うとも聞いた。

そこで拮抗を謀っているのかも知れない。


森の中から湧き出してきた胸毛マン達の数は意外と少なかった。総勢十人以上二十人未満。十五、六人という所だろうか。

アマゾネス達が退いた家の影を陣取り、ここから本格的に攻めよう、という形を取るようだ。

三棟の家が胸毛マン達に占領され、それと対峙して広く間を取った五棟ほどの家の並びにアマゾネス達が集い、にらみ合う形となった。

俺は、どちらの陣にも近づかず、両方を見られる場所はないかと探る。

ただ一つぽつりと離れた屋根の高い小屋があった。こそっとそちらに移動すると森側からよじ登り屋根の上の影に隠れる。

なんと言っても丸腰だ。戦闘のど真ん中に取り残されるのだけは勘弁。



占領した家の中を探っていた胸毛マンの一人が大量の槍を抱えて出てきた。備蓄を見つけたらしい。大騒ぎして、胸毛マン達がその一つ一つを地面に突き立てていく。

二つの陣営の間はかなり開いていて、二十メートル以上離れているだろうか。胸毛マン達は隠れることもなく、物陰から平然と出てきて、わさわさとたむろっている。

「撃てっ!」

甲高い女声のアマゾネスの号令が響き、何本かの矢が放物線を描いて放たれた。せいぜい数本だ。10本となかっただろう。にやにやと宙を飛んでくる矢を眺めていた胸毛マン達がひょいひょいと身を躱す。中にはあっさりと手にした槍で叩き落とす者までいる。


弓の遠距離射撃は数がないと。また不意を突かないと。


今のアマゾネス側にそれほどの長弓の数がないようだ。主力装備の短弓では矢がそこまで届かないのを知っているかのように胸毛マン達は余裕綽々でそこいらを徘徊している。

ただ、それ以上近づかないのは、短弓の射程距離を知っているからか。

彼らは戦い方を心得ていた。


胸毛マンの一人が、地面に突き立てた槍を取り、うらぁぁぁっっ!と一声吠えると手にした槍をアマゾネス達が隠れている家めがけて放り投げた。

横から見ているとそう高くもない放物線を描き、投擲した槍は女戦士達が潜んでいる家の壁に当たり、バキッと貫いた。

おおー、と胸毛マン達が賞賛の声を上げる。投げた一人は敵陣に届いたからか、すっげえドヤ顔だ。両手を軽く上げていやいや、たいしたことねーぜ、とでもいっているかのよう。


見えはしないが、アマゾネス陣営からは焦りの色が浮かんでいる。

こちらからの反撃は届かない、届いても微力。しかし、相手側からの攻撃は十分届き、そして威力も抜群。


反して胸毛マン側は大盛り上がりだ。

その最初の一投をきっかけに、我も我もと簒奪した槍を投げ込んでいく。

投げ込んでいく槍の半分はアマゾネス達が隠れている家に届き、バキバキとその家を破壊していく。作りとしては厚い壁ではない。もう少し勢いがあれば遮蔽物となっている家そのものも貫通してしまいそうだった。


半分の槍は届かず、地面にぽとりと落ちる。投げたヤツがおおぃ!とばかりにはやされ、「しょうがねぇだろ、ちょっとしたミスだぁ」と言い訳しているようだ。

そんな盛り上がりはまるで……遊びのようだ。

その鏃には即死確実の毒が塗られ、その槍の先は一撃で身体を貫くほどに研ぎ澄まされていても。


一方的に優位にある事を確信した胸毛マン達は、もうろくすっぽ身を隠すこともなく、防壁としていた家からも離れ、挑発的に近づくとおもむろに槍を放った。

「一人二人!かすれりゃいい!突き刺せっ!」

一人が口汚くわめき、他のヤツらが次々と前進しつつ槍を放っていく。

高さのない放物線を描き、放った槍はアマゾネス達が隠れている家の壁を突き破り、部屋の中まで侵入した。

胸毛マン達が槍を投げる位置が近づいてくれば近づくほど……投擲の槍の威力は増していく。前進して短弓を生かすのが難しくなる。また射程距離内に退路まで含まれていくだろう……。

じわじわと前進していく胸毛マン達の脅威に、アマゾネス側が志気を折られ、後退、敗走するようなことがあれば……背を打たれ突き殺されることすら想定出来る。

分水嶺は迫っている。


俺は屋根の影から出て行くタイミングを伺いながら、頭を巡らせた。

ヤツらの目的はなんなのか? 勝利の報酬は?

何を目当てに動いているのか? 食糧か? 奴隷か?


さあっ、と矢の雨が降った。

油断して近づきつつある胸毛マン達の頭上に放物線を描く矢が降り注ぐ。

おっと……!と足を止め、胸毛マン達の無防備な前進が止まった。

「タイミングを合わせて長弓を撃て! いくぞっ! てーっっ!!」

リザレオの声が響き、引き連れてきた長弓部隊と共に、物陰からも長弓の矢が放たれる!

数の揃った矢衾は功を奏し、何人かのガンツォの肩に突き立った。

「くそったれっ……またあのメス袋かっ……」

遠くでわめいているのが聞こえる。悔しげに胸毛マン達は下がっていく。

野太い悲鳴が上がった。

肩に突き立った矢を抜いた胸毛マンの一人が唐突に倒れた。

足が二三度バタバタともがき……ふいにそのまま動きを止めた。

カエル毒は神経毒だ。呼吸が出来なくなる。

それは遠くで起きている出来事だった。なにやら奇妙に静謐な絶命だった。



ぞくぞくと、そのリザレオの長弓一隊の後から補給部隊が続く。

最前線を後退させ、アマゾネス達の戦力は整いつつあったが、膠着はまだ解けない。


「持ちこたえるぞ!カーマ・リザの牙達っ! もう日没が近い!ジェロエスタは間近だっ!そこまで粘れっ」

リザレオの力強い声が響き渡る。その声にアマゾネス達の意気がぐっと盛り上がるのがここからでも見えるようだ。

「今日のマークル・ガンツォは軽装だっ。矢で押し切る! 距離を詰めて撃ちまくれっ!」


長弓の矢衾で足を止められた胸毛マン達に少しでも迫るようにアマゾネス達が家影から出て、前線を上げていく。

短弓が当たる位置まで。

侵攻を続けたいところだ。


しかし、何も遮蔽物のない平地を身を小さくしてじりじりと進んでいくのはいかにも危険だ。蛮人共の槍の射程距離内に完全に入っている。

ましてその一員に……リザレオがいる。

俺は屋根から飛び降り、アマゾネス陣営の方に家々の影を伝い走り寄っていった。

撃たないでねっ。頼むからっ。



とにかくリザレオの近くに行かないと、俺まで襲撃されてしまう。

「リザレオぉぉっっっっ!」

大きく手を振り、目立つように! 思った通り!何人かの構える短弓がこっち向いた! うおっ!

「マキタっ! みな撃つなっ!」

リザレオの静止が一瞬早く、何とか無事に最前線の家の影まで辿り着いた。はふー。

平地の最前線をじりじりと身をかがめ進んでいくリザレオが精一杯振り返り、大声を上げた。

「マキタ! ここは危ないっ! 下がれ!」

「リザレオ。目的は追放か? 殲滅か?」

「しのげればいい! 陽が落ちれば……落ち切ればそこまでだっ」

「じゃ……手を貸せそうだ」


バキッと音が鳴り、投げ込まれた槍がついに家を突破し始めた。隠れていた側の家の壁を突き抜いて槍の穂先が突き出した。きゃっ、と可愛い声を上げて、アマゾネス戦士の一人が怯えていた。よく見ればまだ若々しい。日本でなら……高校出たてぐらいの年頃のようだ。そんな若い娘が。

くそったれ。


家の前に出て、槍を物色する。一人の胸毛マンが新たな槍を投げつけてきた。

モーションまで見えていたら当たるはずがない。外野フライを捕れない人はいても避けきれない人はいない。そもそもショボい投擲線で俺のかなり前でぽとりと落ちた。投げ返してくださいとばかりに地面を滑り、俺はそれをブーツでがつりと踏み止めた。


へたくそめ。


そんな記録じゃ中学生大会の予選だって通らないぞ。



俺は身体を軽くほぐし、ブーツで踏み止めた槍を拾うと重心を探り何度か持ち替えて、右手に構えた。

ふう、と肩を落とし、一息軽く吐くと、槍を担ぎ助走に入る。

オーバーラインはないから気楽なものだ。充分勢いをつけ、深々と吸い込んでいった息をきゅっと止める!

サイドステップに移ると身体をひねり、一気に投擲!

「うぉぉぁぁっどりゃくそがぁぁぁっ!」

投擲後の怒声も乗せて!俺の放った槍はぐんぐんと飛んでいく!


槍は回転しつつ綺麗な放物線を描いて飛び、胸毛マン達が防壁にしている家の屋根を軽く越えてその先に消えた。


波のように、ガンツォ達の動揺が伝わってきた。








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