リザレオのヤーオをしょうかいされたっ!part1
集落のど真ん中を手を繋いで歩く、と言うのは羞恥プレイにほど近い。
それに俺は耐え、リザレオはうっきうきだった。
だんだんとリザレオの歩む速度が速くなっていく。
目線はしばしば遠くに注がれ、俺の手を握るリザレオの手はさらにぶんぶんと大きく振られていく。
お付き合いして大きく手を振られる俺も、なんかリザレオのわくわくが伝わってくるようでなんか嬉しい。
つい、ふふっ、と笑みを漏らした俺に気付き、リザレオがくるりと振り向き、その満面の笑顔を見せた。
「なに。マキタ。楽しい?」
「ああ。リザレオがすっごい楽しそうで俺まで移ってきた。そんな楽しみか?」
「ん!ヤーオ・エリゼのとこ、もうすぐ! 懐かしい!ああ……中々行きたくてもいけなかったから……こういうきっかけがあると嬉しい。マキタ」
カーマ・リザじゃ中々そう時間の自由もきかないのか、真面目なリザレオの性格では責務が優先だったのか。
「どれぐらいぶりなんだ?そのエリゼさんのとこ行くの」
「んー。どれぐらいだろ。アミリーニャが来てから一度行っただけだから……ずいぶんぶり。あまり前のノールが顔を出すと……新しく来たノールが居心地悪くなることがある……だから遠慮してたところもある」
少し淋しげにうつむいたリザレオがぽつりと言った。
「ノール……ってのは?その幼児施設アザルーゾから来た女の子?その事?」
「そうだ。アザルーゾから集落スーランにノールが来る。ヤーオ・エリゼのとこにアミリーニャ。リザレオは前のノール。そういう意味」
なるほどね。今度用語集でも作らないとな。
アマゾネス社会の構成用語を収集しておかないと、中々フィールドワークもはかどらない。まずここが第一歩だからな。
「でも、アミリーニャいい娘!きっとマキタのこと気に入るからっ!会わせるの楽しみ!」
一転してにっこーと微笑んだリザレオがさらに手をぶんぶんと振り、歩を速めた。
俺はにんまりと微笑み返したが。
そうなればいいな、とこっそり思った。
「あっ!あそこがエリゼの家!いるっ!エリゼっ!」
リザレオが俺の手を振り解き、たっと駆けだした。その様は久方ぶりに我が家に戻るみたい。
懐かしい記憶の中に駆け込んでいくようにリザレオが一心に走って行く。
微笑ましいようなうらやましいような。
飛び立つように走って行くリザレオの背を見ながら、俺もゆったりと足を進めていった。
「エリゼっ!リザレオだっ!ひさしぶりっ!」
リザレオが一直線に走り寄っていった先に、穏やかそうな女性が驚きに目を見開いてたっていた。
「カーマ・リザ!」
一瞬で破顔し、垂れ目がちな瞳がさらに優しく潤む。
たっ、と足を止めたリザレオがエリゼと視線を絡め合う。
「約束通り言うね。ただいま。エリゼっ」
「ありがとうね。リザ。いえ、カーマ・リザ。おかえりなさい」
ふっくらと微笑むその笑顔は母性に溢れ、優しく愛娘リザレオを包み込むかのようだった。
その母の前では子供に戻ってしまうのか、リザレオの瞳も幼げにキラキラと光る。
「逢いたかったけど……いろいろあった。ごめんね。怒ってる?」
そっと伸ばしたリザレオの手がエリゼの両手に包まれる。
「そんなこと……まったくありません。色々と活躍は聞いています。スーランの為命がけで立派な仕事をしてるって……わたしも誇らしく思います。ミニーニ・リザ……あなたはわたしの誇りですから……」
うっとりとリザレオを眺める瞳はどこまでも優しく柔らかく。
ぐっと顔をゆがめたリザレオが、エリゼの胸に飛び込んでいった。
そっと抱きしめたエリゼも、うっすらと涙ぐんでいた。
感動の再会に俺の胸も熱くなりそう。うんうん。よかったね。ほんとうによかったね。うんうん。
家の中からひょっこりと顔を出したのはアミリーニャという少女なのだろう。
驚いた顔をして、手にしていたざるを慌てて床に置いた。
そして、抱き合う二人を優しく見つめている。
俺はこの空気を壊さないように、少し離れたところでじっと見つめていた。
今もまだ軽く互いの身体を抱き合うリザレオとエリゼ。そのリザレオの顔がくるりとこちらを向いた。
「ヤーオ・エリゼ! 紹介したいヒト連れてきた!マキタだ!このスーランの外から来た!強いぞ。ネワザだしっ!」
ぴっと腕を伸ばし俺を指さすリザレオ。目をまんまるに見開いたエリゼが、今気付いたかのように俺に見入っている。
俺は軽く頭を下げ、驚かさないようにゆっくりと二人に近づいた。
目の端で、家から一歩二歩出かけていた少女が、慌ててざるを拾い、部屋の中へと駆け込んだ。
「初めまして。マキタです。リザレオの所で世話になってます」
まずは驚かさないように全ての動きをゆったりと。これはファーストコンタクトの時の大事なことなのだ。特にこういう外部との接触が少ないような人たちには。
両手を見えるところに出しておくのも重要だ。俺は身体の前で両手を組み、出来るだけ上品そうにすぅっと頭を下げた。
ぱっとエリゼから離れたリザレオが駆け寄ってきて俺の腕を取る。
「誰よりもエリゼに紹介したかったっ! このスーランの一人になる! ここのこと何も知らないけど、他のことをいろいろ知ってる。きっと戦力になるぞ!たぶん!」
その……たぶん!とか力強く言い切るのはどうかと。
教授翻訳システム、ちゃんと出来てんのか?真面目な仕事が出来てんの?




