幕間 登場人物紹介・その二
お読みいただきありがとうございます。
前回のご紹介から、王都はずいぶんと賑やかになりましたので、恒例の(二回目ですが)紹介の幕間です。
本編は次回から再開します。ネタバレは控えめですが、第17話までお読みの後をおすすめします。
◇ 学園の新顔たち
【クラリス・ルーメル】(活躍:第10話)
姿勢のいい亜麻色の髪の令嬢。制服の着こなしは校則の見本と言われる。子爵家の長女にして、学級委員長。提出物は期日の二日前、背筋は常にまっすぐ、説教は正しくて長い。ただしその中身は、成績と体調の心配ばかりである。
とある夜の依頼をきっかけに、この学園でただ一人、眠そうな同級生の秘密を知る人になった。本人はその秘密を、王都で一番堅く抱えている。少し、嬉しそうに抱えている。
最近の口癖は「バイトも、ほどほどにね」。
【ネイト・ボーグル】(登場:第15話)
がっしりした肩に日焼けの残る、声の大きな少年。男爵家の次男。山と川で育った本物の山育ちだが、王都では長らく、声と宣言だけが有名だった。
秋の野営実習で班を遭難させ、同じ実習で班を救った。魚の追い込みは学年一、反省文は指定の倍書く男である。以来、彼の空回りは、少しだけ愛される空回りになった。
【トト】(登場:第15話)
図鑑を抱えた、小柄で物静かな眼鏡の少年。採集課題の頼れる頭脳。遭難中の名言は「僕、家より良く眠れてる……」。
最近、昼を一緒に食べる友人が四人できた。
【エリアナ・ローウェン】(登場:第13〜14話)
柔らかな金の髪と、完璧な角度の会釈。ローウェン侯爵家の一人娘で、魔法科の一年。完璧なご令嬢という言葉を人の形にしたような有名人である。
人の顔は見ないが、所作とリズムは見る。仮面の夜会で出会った「眠りの給仕」を、彼女はまだ探している。……らしい。
【ダリオ・ヴェッセル】(活躍:第11話)
短く刈った髪に、負けん気の強い目。牙狼使いの叩き上げ。相棒のガルフと乳兄弟のように育って八年。とある事件の後、世話帳面に「成分」の欄が増えた。
リオへの当たりは相変わらず強いが、当たりの中身は少しだけ変わった。「……助かった、とは言わねえからな」
◇ おなじみの面々・近況
【セナ・ラティス】
十匹の相棒は今日も健在。冬に向けて、フワの湯たんぽ業が繁忙期に入った。
なお、とある鍋の予約を一件、入れているらしい。フワのために、である。
【カイル・レオンハート】
剣術科の武者修行は続く。あの「半歩下がる」は、素振りの数だけ本物になった。
最近の関心事は、飯盒の蒸らし時間である。
【ミラ・フォルカ】
谷の牧場は今日も満員。診察の糸は五十三本になり、新しい手伝いの老婦人が加わって、賄いの鍋がひと回り大きくなった。
【マルタ】
眠り鹿の宿の女将。研究の末に完成した干し芋のスープは、いまや宿の新名物である。樽は、まだ半分残っている。
【ゼフ】
ルーメル家の老執事。信条は「わたくしは、何も見ておりません」。今日も準備が良い。
【グラント・ヴェイル】
帳場の主。手紙は今日も一行である。
近ごろ、古い借りをひとつ、倍にして返したらしい。
◇ 依頼で出会った人々
【マーゴ・レンフィールド】(登場:第17話)
小柄な体に杖、日焼けと人懐こい皺。元・王国軍獣騎兵、そして元隊長。女の獣騎兵がまだ一人もいなかった時代の草分けである。
五十年連れ添った相棒のウォーホース、ブランを、夕陽の丘で見送った。国境一の脚は、望みを全部叶えて、足りて、眠るように逝った。
近ごろは谷の牧場に手伝いに通っている。次の子の世話を始めるのに、常識の歳などないそうである。
【西の霧山の主】(登場:幕間・第16話)
王都の西門前に三日座った、城門より高い大角鹿。角は左右に張り出した若木の林、足元には晴れの日も薄い霧。用件は歯医者だった。
抜歯と林檎を経て、機嫌よく山へ帰還。王都では「神鹿様」と呼ばれ、鹿見まんじゅうは今も売れている。
曰く「困ったら、また来るとしよう」。西門の騎士団は、その日が来ないことを祈っている。
【老騎士どの】(登場:第11話・第16話)
白髪交じりの髭の、騎士団の年配査定官。規定とスジと順番の人。公開査定と西門騒動で二度、獣医師会の見立てを信じた。
孫に話せる仕事が、また一つ増えたそうである。
◇ 窓口の顔ぶれ・続き
【ネム・アルレット】 四番(活躍:第16話)
小柄な体にゆったりした肩掛け、大きな編み籠。淡い色のふわりとした髪に、年齢のよく分からない童顔。表の顔は家庭教師と乳母。裏の顔は眠らせ屋にして、癒し手。
編み籠と子守唄で現場に現れ、城門より高い患者を七節で眠らせる。信条は「眠りは、一番古いお薬」。決め口上は「王都最強の乳母、本日の患者は――」。
【ラウル・ベルカント】 十番(登場:第17話)
長身痩躯、白髪まじりの長い髪を結んだ、喪服のような黒をまとう葬送楽士。棺のような黒い楽器箱を背負い、南方の弔いの旅から先ごろ帰還した。
その演奏は、送る者の一番良かった日を、その場に呼び戻す。歌劇場の地下には、名前と日付の付いた木箱が、壁一面に眠っている。
袖の中には、いつも飴が入っている。
【シェラ・リュート】 六番(活躍:第5話・第13〜14話)
深い葡萄色の髪を結い上げた、扇子の似合う長身の歌劇団座長。糸繰りの舞台屋。夜会編では歌姫と演出係と師匠を一人で兼ね、「余興の演出でございます」の一言で会場をまるごと救った。
弟子の給仕の所作は、今や本職に「劇場の方?」と聞かれる仕上がりである。
【七番】
――まだ、本編に登場していない。
錠前と、時計と、それからもう少し厄介なものを扱う人らしい。開かない扉でお困りの際は、続報を待たれたい。
◇ 獣たち
【ラーゴ】(活躍:第10話)
苔色の甲羅も立派な、六十年もののエルダートル。ルーメル本邸の池に引っ越した。毎朝、委員長の手から飯を食べている。
威嚇の水鉄砲は健在。被弾記録は、父・執事・娘・覆面の給仕。祖母だけが、生涯無被弾だった。
【ガルフ】(活躍:第11話)
灰色の毛並みの牙狼。ダリオの相棒。薬の艶ではなく、飯と眠りの艶を取り戻した。人と獣が同じ拍で走る、あの走りも戻っている。
【ミストフォックス】(登場:第15話)
実習林の縄張り主。夜霧をまとう銀灰色の狐。罠四つ分の借りを、山の台所で返した律儀な主である。
【ジュエルバード】(登場:第13〜14話)
宝石を砕いて散らしたような七色の羽の、興行の花形。夜会の一件のあと、無事に舞台へ復帰した。
あの夜、自分を止めた給仕のことは、たぶん覚えている。
◇ 夜会で見かけた、あの人たち
ところで、あの仮面の夜会である。
【エルム・シラード】(登場:第13〜14話)
シラード商会の若当主。歳のころ二十半ば、仕立ての良い礼服と、柔らかな物腰。落ちた燭台を、礼服の膝をついて一緒に拾う人である。
南方交易で五年に王都三店。寄付に気前がよく、悪い噂を、誰も一つも知らない。
……本当に、それだけの人なのかどうかは、まだ誰も知らない。
【塀の外の大男】(登場:第14話)
岩のような体の発掘屋。名前は、名乗らなかった。
豪快に笑い、豪快に逃げ、背負い袋だけを置いていった。何者なのかは――まだ、誰も知らない。
◇ 恒例・怒らせてはいけない番付(新顔の部)
第三位、マーゴ・レンフィールド。元隊長の号令は、五十年経っても老兵を整列させる。
第二位、クラリス・ルーメル。説教は正しく、長く、そして逃げ道を先回りして塞いでくる。
第一位、西の霧山の主。理由は、体格である。あれを怒らせて何とかなる者は、王都にいない。
なお審査員特別枠として「ラーゴの水鉄砲」が殿堂入りした。怒っていなくても飛んでくるためである。
以上、第二回のご紹介でした。
王都の日常は、今日も眠たく、窓口は今夜も開いている。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回から本編を再開します。
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