137 ピーマン、お前は存在自体がダメだ!!!
PCが壊れた。
再開、またご案内致しますので御辛抱願います。
本日4回目の入浴。
体がふやけそうな気がして来た。
3着目の服を着せられたが、やっぱり違いが判らない。
新しい服を着て、宮殿の奥らしい方向に向かい、外に出た。
表の庭園とは少し趣の違う、優しい色の花に囲まれた遊歩道のような道を歩いて庭園の奥に向かった。
案内されたのは庭園の中にある、ガゼボ?、まあ西洋風の東屋みたいな所。
色とりどりの花に囲まれたガゼボには既に8人の貴婦人がいた。
「お待たせいたしました。 こちらが竜滅のショータ閣下で御座います。」
側近さんが俺を紹介してくれた。
「ショータです。」
一応俺も挨拶する。
探知に映る8人のうち、4人の白い点がゆっくりと瞬いている。
「こちらは××侯爵家の△△様。 そちらが、・・・。」
側近さんが紹介してくれるが、どうせ覚えられないので上の空。
それよりも、俺に向かってバンバンと鑑定や威圧が飛んで来た事の方が気になった。
良く見ると、貴婦人達は皆古代遺物らしいアクセサリーを身に着けている。
鑑定されたら鑑定し返す、目には目薬と思ったが思い止まった。
貴族女性に鑑定を掛けると、延々と命を狙われるとレイが言っていたのを思い出したから。
女性の体を鑑定しないように注意しながら、アクセサリーの1つ1つに対象を絞って精密鑑定を掛けた。
”鑑定“ “古代遺物 隠蔽の指輪 発動中”
”鑑定“ “古代遺物 結界の指輪 待機中”
”鑑定“ “古代遺物 解毒の指輪 待機中”
”鑑定“ “古代遺物 魔法反射のネックレス 待機中”
この貴婦人は、見えているだけで4つの古代遺物を身に着けていた。
恐らく見えていない所にも何らかの古代遺物を隠しているのだろう。
連続して鑑定を掛けたからか、ジロっと睨まれた。
「鑑定の結果は如何でしたか?」
アクセサリーを鑑定されたおば・・貴婦人に聞かれた。
「御免なさい。 危険な魔導具かもしれないから鑑定した。 魔道具以外は鑑定してないから許して下さい。」
「・・・宜しくてよ。 何の魔道具か判りましたか?」
「ここで話してもいいの?」
他の御館様に鑑定結果を話していいのかを確認する。
「宜しくてよ。」
どうやら俺の鑑定を見くびっているらしい。
「隠蔽の指輪が発動中。 結界の指輪・解毒の指輪・魔法反射のネックレスは待機中だった。」
「・・・、流石はショータ殿ですね。 これだけ離れた所で、しかも僅かな時間で4つの古代遺物を鑑定出来ましたか。」
沢山の指輪を付けていた貴婦人は俺から一番離れた席に座っていたが、探知に映る瞬きが強かったので念の為に鑑定しただけ。
俺を嫌っている人間に注意を払うのは当たり前。
他のおば・・貴婦人方が驚いた顔で俺を見る。
「ショータ殿は古代遺物も鑑定出来るのですか?」
俺の隣にいる女性が声を掛けて来た。
「俺の鑑定レベルはかなり高いそうです。 御婦人を鑑定してはダメだと言われてるから、皆さんについては鑑定してません。」
「魔道具に絞って鑑定したという事ですの?」
「うん。 俺は鑑定の範囲を自在に変えられるから。」
「それ程の鑑定が出来るという事は、ショータ殿は勇者なのですね。」
勇者とは、異世界からの転移・転生者。
レイの話では勇者は国が保護して祭り上げる存在。
保護と言えば聞こえは良いが、国の戦力や新製品開発に利用する為閉じ込められる。
目立つのは嫌、俺はこっそりひっそり生きるのだ。
「図書館の本で勇者の事は読んだけど、俺が異世界から来た勇者かどうかは判んない。 10歳の時ベルンの近くで迷子になっている所を助けられたんだけど、それ以前の事は全く覚えてないし、本で読んだ勇者とは微妙に違うんだよね。」
ベルンの灯と出会った時の記憶喪失設定を使わせて貰う。
何と言っても目の前にいるのはベルン最強と言われる、海千山千蛸煎の御館様達。
蛸煎ってこの世界にもあるのかな?
関西にはタコヤキ煎餅もあったな。
今はたこ焼き味の煎餅が主流だけど、昔のタコヤキ煎餅は違ってた。
大きなエビ煎餅にたこ焼きを2つ挟んであって、学校帰りに歩きながら食べる生徒が多かった大阪庶民のおやつ。
今はタコ焼きの値段が上がったから、子供のお小遣いで買うには高すぎるらしい。
その代わり冷凍たこ焼きで作るレシピが広がって、家庭で作るおやつになっている。
って、それはどうでもいい。
ともかく、御館様達に俺の情報を渡す気は無い。
今の所、俺が勇者だと知っているのはレイとベロだけ。
勇者であるばかりか、最高神であるハテナ様の加護を頂いているなんてバレたら大騒ぎになってしまう。
「違うとは?」
「勇者は皆、光属性を含めた幾つかの属性を持っているんだよね。 有名な勇者は全属性の魔法が使えたみたいだし。 でも、俺は光属性だけしか持ってないんだ。 色々な本で調べたんだけど、火・土・風・水の4大属性を全く使えない勇者って、一人もいなかった。」
「そう言えばそうですね。」
「だから、俺は異世界ではなく、この世界の何処かから来たんじゃないかって事になって、ギルドが手を尽くして調べてくれてるんだけどまだ判らないんだ。 今の所は、どこかに光属性だけを持つ人達が住む隠れ里みたいのがあって、俺は大きな鳥に攫われたとか、魔法の暴走か何かで吹き飛ばされてベルンに来たのかも知れないっていうのが有力らしいよ。」
「ショータ殿は勇者では無いという事ですか?」
「ベルンに来るまでの記憶が無いから、違うとも言えないんだ。 でも、異世界の知識が無いのに勇者ですとも言えないしね。」
探りを入れて来る御館様達の質問を子供っぽく振る舞ってはぐらかす。
俺の力を恐れられたら、暗殺者がやって来るか国家権力によって潰される。
軽く見られたら貴族のパシリとして使い潰される。
恐れられず軽く見られない微妙な線での攻防戦。
助けてレイ先生!
いつも収納からアドバイスをくれるレイ先生がいないのが痛い。
難しい事は苦手。
でも、いつもレイに頼ってばかりではダメ。
俺はもう12歳の男の子。
頑張るぞい!
ひたすら子供の振りをして誤魔化した。
いや、見た目は子供だから振りをしなくてもいいのか。
ベルンが荒れていたのは旧貴族院のせいと聞いている。
今は貴族議会となって少しはましになったらしいけど、公爵との仲はあまり良く無いらしく、色々と公爵の邪魔をしているのは変わらないらしい。
ちょっとは親しくなったけど、偉い人は生理的に嫌いなので公爵が嫌いなのは変わらない。
だけど、旧貴族院のお館様達は公爵よりもめっちゃ嫌い!
公爵はネギ。
嫌いだけど食べられない事は無い、基本的に避けるけど。
旧貴族院の御館様達はピーマン。
かけらが入っているだけで料理全体が食べられなくなる。
ピーマン、お前は存在自体がダメだ!!!
えっ、それはお前の舌がおこちゃま舌だから?
煩いわい!
嵐の様なお茶会を何とか乗り切って、ようやく読書の時間。
待ちに待った書庫へとやって来た。
現在時刻は5時20分。
閉館時間は午後6時。
朝からギルドを出て、本を読めるのは僅か40分。
何でやねん!
はぁ。
書庫に入り、探知を最大限にしてレイを探す。
書架の上に寝転んで本を読んでいるレイを発見した。
発見したと言っても、目には見えない。
俺の感度を上げた探知で漸くうっすらと映るレベル。
かなりレベルの高い魔法使いでも、必死になって探さないと見つからないだろう。
“どう? 面白い本はあった?”
”ここには面白い本が沢山ある。 儂はこのまま書庫に残るぞ“
“はぁあ? もうちょっとで閉館時間だよ”
”問題無い。 暗闇でも本は読める。 帰りたくなったら転移で戻る“
“・・・、判った”
レイは言い出したら聞かない。
レイは寝る必要も無いし、食事も不要。
召喚中は俺と繋がっているから、離れていてもエネルギー源の魔力が切れる事も無い。
何かの用事が出来て呼び出すまで、ずっと書庫に居続けそうな気がした。
数冊の本の目次などを眺めただけで、閉館時間。
ぐぬぬ。
本に夢中になっているレイを残して書庫を出た。
夕食を勧められたが、宮殿での食事は真っ平ごめんなので断った。
側近さんが馬車の中で食べられるようにとサンドイッチを渡してくれたのは助かった。
うん、出来る側近さんは好き。
ギルドに戻ると、いつもベッドに入る時間。
俺史上最大の作戦、The Longest Day が終わった。
本当に長く、めっちゃ疲れた1日だった。




