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134 何処からかドナドナの音色が聞こえて来る

「昼食会の後、宮殿書庫に参りまして、書庫全体の御案内と利用法の説明をさせて頂きます。 書庫の説明が終わりましたら衣装替え、その後貴族会議の皆様とのお茶会となっております。」

待て待て、せっかく書庫に行くのに説明を聞くだけで、本を読んじゃダメなのか?

「本はいつ読めるの?」

「お茶会が終わりましたら、書庫で暫しの閲覧時間が御座います。」

暫し?

今、暫しって言ったよね。

暫しって、ちょっとの間とか、わずかの時間って意味だぞ。

「書庫は何時まで利用できるの?」

「午後6時までで御座います。」

「お茶会が終わるのは何時?」

「終わりの時間は決まっておりません。」

「お茶会が始まるのは何時?」

「3時で御座います。」

お茶会が1時間で終わったとしても、本を読めるのは2時間。

なんじゃそれ。

「本を借りる事は出来る?」

「書庫の本は全て持ち出し禁止で御座います。」

「はぁ。」

溜息しか出ない。



気が滅入りそうなので、宮殿に着いてからの事を考えるのは止めた。

馬車の外を眺めたら、監視員の兄ちゃん達が馬車の周りを走ってるのが見えた。

辻馬車と違って、露払いの騎士4人が馬車の前方で道を開けさせているから、馬車は結構な速さで走っている。

監視員の兄ちゃん達は平然と馬車の近くを走っている。

流石はエリート監視員、チラチラと馬車を伺いながらも道行く人を避ける余裕がある。

探知で馬車の前後を確かめると、いつものメンバーが全員揃っていた。

ギルドで半数しかいなかったのは、行き先が判っているから先行していたようだ。

20人程の監視員と8騎の騎士に囲まれて馬車で運ばれる俺。

何処からかドナドナの音色が聞こえて来る。

んな訳有るかい!

音色は聞こえないが、気分は完全にドナドナだった。



「ショータ閣下のご到着であ~る!」

「ショータ閣下のご到着ぅ~!」

馬車がベルン宮殿の敷地に入った。

探知で確認したら、監視員達は門前で止まっている。

流石に宮殿の中までは付いて来れないので、門前で待機するらしい。

「ショータ閣下のご到着であ~る!」

「ショータ閣下のご到着ぅ~!」

宮殿の門を入ってからも宮殿までは遠い。

広い庭をグネグネと曲がりながら馬車が走る。

色とりどりの花に目を奪われ・・るよりも、あちこちに立っている騎士に目を奪われる。

物々しい警戒ぶりに驚いた。

「前に来た時は、騎士さんはあまりいなかったよ。 今日は何かあるの?」

「本日は貴族会議の御館様方が揃って宮殿に参りますので、警戒が厳重になっております。」

「そうなんだ。」

前の時は貴族ばかりで御館様達が居なかったから、警備が普通通りだったらしい。

「本日は、ベルンの中枢を担う方々がお揃いになります。 万が一の事があればベルンは大混乱となります。」

「この宮殿を襲うような国があるの?」

「国の中枢が集まった所に大規模魔法を撃ち込まれて滅びた国もあります。 逆に、中枢を皆殺しにした為に、降伏交渉をする者が誰なのかが判らなくなり、何年も戦争が続いた場合も有ります。 最後は攻撃を始めた国が大軍の派遣費用に耐え切れずに兵を引き、双方の国に大きな損害をもたらしただけで終わりましたが。」

ミサイルや空爆は無いけど、この世界には大規模魔法があるんだった。

「そうなんだ。」

先制攻撃で指導者を殺した場合には、上手く行く時と却ってこじれる時があるらしい。

難しい事は判らん。

「騎士達がいるのは、本日はベルンの中枢を担う方々がお集まりなので、念の為の警備でございます。」

「今日は大事な会議がある日なの?」

「ショータ閣下とのお茶会が御座います。」

俺、俺とのお茶会のせい?

そう言えばさっき貴族会議の御館様達とお茶会をするって言ってた。

そんなに偉い人とお茶会なんて嫌なんだけど、今から帰るなんて言ってもダメだよね。

レイが書庫を見たいと言ったから軽い気持ちで本を読みに来ただけなのに、・・・。



正面のエントランスで馬車を降りると、ずらっと並んだ使用人達が頭を下げている。

何となく居心地が悪い。

最初ここに来た時は、出迎えなんていなかった。

2回目は1斉に頭を下げられた。

今回は最初から頭を下げている。

「何で頭を下げてるの?」

小声で側近さんに聞いてみた。

今回はササヤキお熊がいないので側近さんに聞くしかない。

「ショータ閣下は侯爵家当主待遇でございます。 ここに並ぶ使用人達は、尊いお方の御尊顔を拝せる身分では無いので、顔を上げる事は許されておりません。」

「・・・そうなんだ。」

大勢に頭を下げられるのは、ハミゴにされてるみたいで、何となく気分が悪い。

出迎えの無い最初の方が良かった。



宮殿の廊下は殆ど迷路に近い。

何処をどう歩いたのはまるで判らないけど、案内されたのは浴室。

ギルドを出る前にお風呂に入ったし、浄化もしたんだけど、言っても無駄なんだろうな。

諦めの境地になった俺は、メイドさん達に裸に剥かれて、風呂に入れられた。

お籠りの儀で、貴族屋敷のメイドさん達に6回も風呂に入れられたから、ちょっとは慣れた。

「ベロ様をお風呂に入れてもよろしいでしょうか?」

「うん。 お願いします。」

ベロは毎晩俺と一緒にお風呂に入っている。

それにベロは俺と違ってすけべえ。

えっ、違ってない?

すんません、ちょっとええカッコしました。

訂正。

ベロは俺と一緒ですけべえ。

尻尾の蛇さんはもっとすけべえ。

女性と一緒にお風呂に入るのを喜ばない筈が無い。



風呂から上がったらお着替え。

って、何で服が3着もあるんだ?

今日着て来た1張羅の七五三服も公爵家から貰った上等な物だが、目の前にある服はどう見ても2段階位格が違う程豪華。

豪華さだけで言えばレイの服には及ばないけど、あれは豪華というよりケバイと言った方がいい。

最近は少し慣れたけど、未だに直視すると目がチカチカする。

というよりも、レイの側にいるだけで俺も同類に見られる様な気がして恥ずかしくなる。

レイが人前に出る事は無いからいいけど。

いや、今はレイの服ではなく俺の服が問題だ。

「どうして3着もあるの?」

「こちらは謁見用。 これは昼食会用。 そしてこちらはお茶会用で御座います。」

「な、なんだってぇ~!」

泡を吹いて引っ繰り返りたくなった。

結婚式でもないのに衣装替えが有るのか?

しかも2回。

テンションが駄々下がりになった。

どうやって調べたのかは判らないけど、用意された新七五三服は俺にぴったりだった。



「ショータ閣下のご到着であ~る!」

「ショータ閣下のご到着ぅ~!」

目の前にある大きな扉が開き、謁見の間に入った。

褒賞を貰った時と違うのは、ササヤキお熊がいない事。

こんな事になるなら付いて来て貰えば良かったと思ったが、時すでにおスシ。

前回の事を思い出しながら、胸を張って赤いじゅうたんを進んだ。

両脇に並ぶ貴族達が前回とは全く違う。

前の方には着飾った女性達が並び、俺を見定めるような鋭い目で見ている。

男達は女性の後ろに並んでいる。

日頃は屋敷から出ない筈の御館様達が大勢いるという事は、この後何か大切な行事があるのだろう。

俺は公爵1族との昼食会だから関係無い、と思う。



正面を見ると1段高い壇の中央にある立派な椅子に公爵が座っていた。

前回同様に正面にある壇の手前で立ち止まり、跪く。

「面を上げよ。」

司会らしい側近さんの声で顔を上げる。

「ショータは我が友人である。 立ち上がるが良い。」

公爵が壇上から声を掛けて来た。

前回とはずいぶん違うけど良いのか?

少し戸惑ったが、とりあえず言われた通りに立ち上がった。

「こちらが公爵閣下の御友人、Aランク冒険者であらせられる竜滅のショータ閣下であります。 皆様ご存じでありましょうが、ワーバーン12頭の単独討伐だけでなく、暗殺ギルド闇のナーベ殲滅、悪霊の住み着いた屋敷の浄化など数々の功績を上げた英雄殿で御座います。 また、孤児院や教会へ多額の寄付をしておられる篤志家でも御座います。」

司会のおっさんが説明するが、褒められた事なんて無いから尻がこそばゆい。



「本日は、ベルン1の名工カジシ殿がショータ閣下の為に打たれた名剣”ドラキラ“のお披露目をショータ閣下にお願いして御座います。」

司会のおっさんが声を張り上げると、騎士達が試し切り用の鎧が立てられた台を運んで来た。

「ベロは余の傍で見るが良い。」

“いいの?”

ベロが俺から離れてもいいかを念話で聞いて来た。

ベロは俺の護衛なので、周りに大勢がいる場で俺の傍を離れても良いのかを確認したのだ。

“うん。 ベロを撫ぜたいらしいから、行っといで”

”判った“

ベロは撫ぜられるのが好き。

ベロが壇上に上がると、列席していた貴族達がビクッと動く。

「問題無い。 ベロもわが友である。」

“友達なんだ、全然知らなかったよ”

ベロに念話を送る。

”我も友になった事は知らなかったが、撫ぜられるのは好きだぞ“

俺が知らない間に公爵と友達になったのかと思ったけど、ベロも友になった事を知らなかったらしい。

それって友なのか?

まあいいか。

ベロが公爵の横に座ると、公爵が椅子から手を伸ばしてベロの頭を撫ぜ始めた。



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