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123 ベルン宮殿の1室 その7

宮殿の1室で公爵と側近達が、深刻な顔で話し込んでいる。

「ショータがベルンを出ようとしている、と言うのは誠か?」

「今の段階では民衆の噂に過ぎないと思われますが、ショータは皇帝陛下への拝謁すら断った少年。 思わぬことで他所に移る事も有り得ます。」

「先日、ショータは出来上がった剣を受け取りにカジシ工房迄行きましたが、前回同様に宮殿には入らずに遠回り致しました。」

「やはり余が嫌われておるということか?」

「今回に関しては、恐らく譜代貴族達の襲撃の件があったので、貴族が大勢出入りしている宮殿を避けたものと思われます。」

「・・・そうか。 家臣どものショータ襲撃の件があったな。 大勢の貴族が出入りする宮殿を避けるのは当然か。」



「・・・何とも面目次第も御座いません。」

「その方達が謝る事ではない。 その方達も譜代ではあるが、暴走した4人とは関わりが無い。」

「4人はそれぞれの御館様によって処刑されましたが、貴族家の恥となりますので処刑は内密に行われ、民衆やショータはその事を知りません。 騒動当日に警備隊の出動を差し止めた警備長官も既に処刑されたとはいえベルンの警備長官は公爵直属の役職。 そのせいで、巷では今回の貴族達によるショータ襲撃は公爵閣下の命令という事になっております。」

「処刑を公表できぬ以上、やむおえぬな。」 

「申し訳ございませぬ。」



「カジシ工房への材料納入を止めさせた件は解決したか?」

「取引先である錬金工房に圧力を掛けた貴族は我々の通知を受けた御館様によって処分されました。 錬金街には公爵家はカジシ工房の腕を高く評価しているという噂を流しております。」

「カジシ工房を貴族達が襲ったと言うのも事実であったか?」

「カジシ工房の外壁が穴だらけになっていた事は事実でしたが、現在は新築同様になっております。」

「新築同様とな?」

「壊れた工房を見たショータが、剣を打ってくれた礼にと外壁を修繕致しました。」

「ショータは大工仕事も出来るのか?」

「どうやら回復魔法によって修復したようで御座います。」

「回復魔法で建物が直せるなど、聞いた事も無いぞ。」

「回復魔法については、文献も無く殆ど判っておりませんが、ごく短時間で新築同様になった事は確かで御座います。」

「そうか。」



「さらに、今後襲われる事の無いようにと”竜滅のショータ閣下御用達“という大きな看板を掲げさせたようで御座います。」

「大きな看板を掲げたというのは、どのような訳じゃ?」

「定かではありませんが、閣下の依頼を断った事で失った顧客を、竜滅の剣を打った事を喧伝して取り戻そうという考えと思われます。」

「・・・、余への当てつけという事か?」

「と、思われます。」

「花咲き祭りへの招待も断られた。 余はだいぶ嫌われておるようじゃな。」



「新たな情報として、ショータが奇妙奇天烈な服を買い求めたという知らせが届いております。」

「奇妙奇天烈な服とは何じゃ?」

「芝居の衣装として使うのもはばかれる程恥ずかしい、大層派手な服のようで御座います。 更にその派手な服に金貨数十枚もするダイヤの飾りボタンを数十個取り付けさせ、見るのもおぞましい程趣味の悪い、突然成り上がった下品な金持ちですら着ない程派手な服となったそうで御座います。」

「ショータがそのような服を着ているというのか?」

「そうではなく、知り合いに贈る服のようで御座います。」

「知り合いに贈るのであれば問題無かろう。」



「その贈る相手というのが、身長が193㎝、大層立派なマントを所有しておるそうで、そのマントに合わせた豪華な服を、という注文だったそうで御座います。 調べました所、ショータの周辺にはその身長とマントの所有に該当する者は居りません。」

「・・・・、儂か。」

「閣下の身長が193㎝という事は広く知られておりますし、閣下の着用される王家のマントは先祖伝来の逸品として有名で御座います故、恐らくは・・・。」

「贈った服を着用すれば公爵家の品位が疑われ、着用しなければ竜滅が贈った高価な服を捨てたという噂が広まる事になると思われます。」

「それ程に酷い服なのか?」

「販売した古着屋の店主ですら目を背ける程であった、と聞いております。」

「貴族達が行って来た様々な嫌がらせに対する、ショータの意趣返しということか。」

「貴族の行いは領主である公爵閣下の責任と考えておるようです。」

「・・・・。」

「恐らく次に何かあった時には、閣下の下にその服が届くのではないかと思われます。」

部屋の中に沈黙が訪れた。

「・・・その服が余のもとに届けば、どう対処しても、余の立場は悪くなるであろうな。」

「・・・・。」



「更に、花咲き祭りで披露された画期的な魔導具についてで御座いますが、調べた所この大陸初である光属性の魔法陣を使って居るそうで御座います。」

「光属性の魔法陣だと。 とすれば、開発者はショータということか?」

「商業ギルドも魔道具ギルドも開発者の名を秘匿しており、更に開発者との1切の接触を禁じておりますが、両ギルド共開発者を匿名希望の某少年閣下と呼んでおります。」

「閣下と呼ばれる少年など、帝国にはショータ1人しかおらんではないか。」

「本人が匿名を希望しているのでそう呼んではおりますが、関係者全員がショータの魔法陣と承知しておる事は間違いありません。」

「ショータは今現在も新しい魔法陣作成に取り組んでおるとの事で、無理に接触を計れば新しい魔法陣が出来上がった時に取引から外されると考えて、全ての工房が匿名を守ったまま状況を見守っているようで御座います。」

「ショータは、Aランク冒険者であるだけでなく、光属性の魔法陣開発者でもあるということか。」

「御意。」



「早急に対処しなければならぬ問題は、閣下とショータの仲が悪いという噂を抑える事で御座います。」

「噂は噂であろう。」

「庶民についてはさておき、その噂を信じた貴族共が暴発する恐れが御座います。」

「うむ。」 

「万が1、貴族共が暴発してショータに何かを仕掛けた場合には、ショータが閣下の監督責任を問う為に、例の派手な衣装を閣下に贈る可能性が有ります。

「・・・・、それは拙いな。」

「今は1刻も早く、閣下とショータの仲が悪い訳では無い、という事を貴族達に周知させる事が必要と思われます。」

「これ以上貴族が問題を起こせば、派手な衣装を送りつけられ、その対応いかんではショータがベルンを出る可能性が高まるということじゃな。」

「御意。 Aランク冒険者を不当に虐げた為に拠点を他へ移されたとなれば、公爵家の統治能力が疑われます。」



「・・・・、そうであろうな。 何か良き手段はあるか?」

「まずは例の派手な衣装を贈られぬよう、先手を打って関係改善を図るのが宜しいかと思われます。」

「どうすれば良いのじゃ?」

「直接会って話すのが宜しいかと思います。」

「皇帝陛下への拝謁すら断った男ですぞ。 閣下の呼び出しに応じるとは思えませぬ。」

「何か良い理由を付けて呼び出せば良いのではないか。」

「良い理由とはどのような理由だ?」

「それは、・・・。」

「今は時間が無い。 先手を打たねば手遅れになる。 派手な服を贈られてからでは遅いのだ。」

「・・・・。」

側近達が無言になった。



「呼び出しに応じないのであれば、余が会いに行けば良い。」

「公爵閣下が平民の冒険者に会いに行くなど、有ってはならない事で御座います。」

「では、どうするのじゃ。」

「・・・・・。」

「余がショータと会って話をする。 余が友人としてショータに話せば、ショータの誤解も解けよう。」

「しかしながら、閣下の御威光を前にして気安く話せる者などおりませぬ。」

「余が冒険者の言葉で話せば、ショータも話しやすい筈じゃ。 余とショータが親しく話す様子を見れば、仲が悪いと言う噂も消えるであろう。」

「冒険者のような下品な言葉を使われるのは、公爵家の権威に関わるかと思われます。」

「もはや我が公爵家の権威は地に落ちておる。 今更権威などと申して時を逸すれば、取り返しの付かぬ事となる。」

「・・・、御意。」

「ならば、余に冒険者の言葉を教えよ。」 

「早速、冒険者言葉に詳しい者を手配致します。」


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