あなたの思う幸せ
「来年の春?」
「うん」
「結婚しよ」
聖司がにんまり笑う。
「でも学生で結婚なんて、大丈夫なの?」
遥は心配そうに言った。
『二十代のうちに結婚したいから、あなたとは付き合えない』
何度か遥が言った台詞だった。それで諦めてくれたらいいと思っていた。
だが、聖司は諦めなかった。
『好きなんです。おれ、本当に、遥さんじゃないと嫌なんです』
まだあどけなさが残る高校生が、何度も自分の元へ足を運んでくれた。進路のためだけじゃないとわかってからも、遥は歳の差を理由に、拒絶した。
それでも聖司は諦めなかった。
『遥さんの優しさが、好きです。一緒にいてくれるだけで、おれは頑張れるから』
年上への憧憬と恋心の区別が付かなくなっているだけ、と思っていた頑なな気持ちも、いつしか聖司の隣で堂々と胸を張って立てるようになりたいと変化していった。
遥は聖司の若さと熱意に、溺れたくはなかった、六つも年下の、ましてや高校生と。
それなのに、感情は真逆へと向かっていったのは、遥が聖司を可愛いと思うからだ。
「わたしも聖司の奥さんになりたいな」
「うん、なってよ。なってください」
「それプロポーズ? 夢がないなあ。わたし初めてなんだよ、プロポーズされるの」
「え、じゃあ仕切り直すから、明日まで待ってて」
「冗談よ」
遥はふわりと笑って、聖司の頭を撫でた。愛しいと思った。
「遥?」
「結婚しよう」
遥の言葉に破顔した。
「式くらいしかできないかも」
「いいよ、そんなの。わたし、親族いないしさ、式に友達が参列してくれたらそれでいいかなあって」
「そっか」
「ありがとう、聖司。わたしが聖司を幸せにしてあげる」
「うん、おれも頑張る。それで幸せになろう」
遥の笑顔を見てるだけで、聖司は幸せだった。遥がいてくれれば、自分はどうなっても大丈夫な気がした。




