表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霞の記憶  作者: 七瀬愁
PR
7/25

きみはいつも急ぐ

大学の図書館で司書をしていた遥に出会ったのは、高校三年生の春だった。進学予定の図書室に出入りしているうちに、顔馴染みになり、いつしか親しく言葉を交わすようになった。


「なんていうか、優しい人なんだ」

「ふうん、聖司以上に優しい人がいるのか」


理人は不思議そうな目の色をした。

どこを好きになったのか、どんな人なのか、理人が聞くままに聖司は答えていく。


「わかった。聖司は優しい人が好きなんだな」

「人を単純みたいに言うなよ」

「そんなつもりはない、基準なんて人それぞれだ」


涼しい顔をした理人を、聖司は睨め付ける。この綺麗な顔をした友人は、最早、親友と呼べるほど聖司と同じ時間を過ごしている。


「で? 付き合うのか?」


視線だけ寄越して、理人が聞いた。


「うん、了承はもらってる」

「へえ、それは良かったな。なんて言ったんだ? 好きだって?」

「いや…ベタだけどさ、結婚を前提にお付き合いしてくださいって言った」

「は、おまえまだ高校生だろ」

「彼女、26なんだ。結婚とかそういうの考えてる人と付き合いたいって聞いてたから」


大学卒業まで待ってたら、相手は三十歳になってしまう。遥がそこまで待ってくれるとは、聖司にはとても思えなかった。


「学生結婚するってこと?」

「うん、おれはそのつもり。できるだけ早く一緒になりたい」

「一緒に住むだけじゃあ駄目なのか?」

「それってただの同棲じゃん、それは相手が望んでない」

「望んでないって…年下の男なんだからそれは仕方ないだろ」

「いや、そうじゃなくて」


久しぶりに人を好きになった。

愛想を尽かして離れていかれるのは嫌だった。

もう辛い思いはしたく無かった。

聖司の肩に力が入ったのが分かったのか、理人はそれ以上何も言わなかった

しかしその沈黙が、責められてるように思えて、聖司は視線を落とした。


何も今すぐというつもりはなかったが、大学卒業まで考えると丸々四年と少しある。そこまで引き伸ばすのなら、遥はあっさりと自分の元を去るだろう。


「変かな」


つい伺うように聞いてしまい、なんでおれが理人に許可を取らなくちゃいけないんだ、とも思った。


理人はゆっくりと息を吐く。


「在学中の結婚が上手くいくとは思えないけど」

「でもさあ」

「でもとか、違うんだとかいう言い出しは、たいてい自分が非を感じてる時だよ、聖司」

「なんでそんな冷たく言うんだよ」

「おまえが心配だからだ」

「でもさあ」

「繰り返すな」


聖司が顔を上げた時、理人はもう聖司を見ていなかった。しばらくの間、沈黙が降りた。


「今日泊まりに行っていい?」


小さい声で聖司が聞いた。

理人は口角だけを上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ