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パーフェクト・ナンバー  作者: なつ
第五章 そしてこの事件は収束する
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 2

 甲斐雪人と神田隆志は祭りの間中ずっと人ごみの中を掻き分けるように歩き続けていた。時折見かけるピンクの振袖は、残念ながら篠塚桃花のものではなかった。途中、神田珠と坂井寧々に出会ったが、二人とも篠塚の姿は見ていないと言った。御堂聖子は一緒にいなかったが、先ほどはぐれてしまったらしい。これだけ人が集まっているなら、仕方がないのかもしれない。

 その御堂聖子とも何度目か鳥居の近くに来たときに出会うことができた。ちょうど家政婦の木林さゆりと一緒に話しているところだった。隆志か駆け寄って声をかける。

「さゆりさん、こんばんは」

「隆志様、こんばんはです」

 さゆりはラフな格好をしていて、隣に立っている聖子の帯を直しているところだった。聞くと、聖子は二人とはぐれてから一度盛大に転んでしまったらしい。

「もう、若い子が気をつけないといけませんわ」

「さゆりさんもまだ若いですよね」

「学生と比べるとわたしなんて」

 ふるふると顔を振る。働いているときとは、少し印象が違う。二人に篠塚を見なかったかと聞くが、二人とも首を捻るだけだ。

「迷子でしたら、もっと奥に本部がありますから、そこで呼び出してもらえばいいんじゃないかしら」

 顎に指を当てながらさゆりが提案する。甲斐は隆志と目を合わせてから、ありがとうと会釈をして神社の奥へと向かった。

 左右には屋台ではないテントが張られていて、四十代ほどの男たちが酒を片手に何かをしゃべりあっている。どこのテントも同じようなものだ。最も奥はコの字型にテントが配置されていて、なにやら機材が置かれている。けれど、この祭り中に響き渡るような放送ができるのだろうか。見ると、確かに小さな子が数名テントの下に立っていたり、座っていたりする。もしかしたら篠塚がそこにいるのではないか、と期待したがそれはなかった。ちょうどそこにいた男性に話をすると、やはり残念ながら呼び出す方法はないらしい。ただ毎年ここが迷子の集まる場所と認知されているので、親も自然とここに来るらしい。

 ため息をつきながら、何気にもう一度不安そうな表情の子供たちをみる。

 立ったり、

 座ったり。

 それから甲斐は自分の手を見つめる。

 組み合わせを考えてみれば、簡単なことではないか。

 立ったり、

 座ったり。

 右手をグーにする。これがゼロだ。

 親指を立てて、一。

 親指をしまい、人差し指を立てて、二。

 そのまま親指を立てて、三。

 親指と人差し指をしまい、中指を立てて、四。

 薬指は八。

 小指は十六。

 左手に移って、

 三十二、六十四、百二十八、二百五十六、五百十二。

 すべてを足し合わせれば、千二十三だ。

 つまり、二進数で考えればいいのだ。

 それをあの歌に合わせて考えれば、最後に掛け合わせる数が求まる。

 それから篠塚の言葉を思い出す。もしお互いにはぐれたら、神田の家に集まろうと話したではないか。篠塚なら、もしかして。

 甲斐は隆志に断ると、先に神田の家に戻ることにする。歩いて三十分くらいの距離だ。走れば程なく家までつける。

 体は疲れているけれど、甲斐の足は止まらない。

 門を抜けてアプローチを走る。

 小さな橋を越えて、玄関に。

 篠塚桃花は座っていた。

 甲斐に気がつくと立ち上がる。そして、甲斐に向かって走ってくる。

「ばかもの!」

 の声と同時に、篠塚は甲斐に抱きついた。

「遅いぞ。どれだけ待たせるつもりだ!」

「ごめんね」

 それから子供のように、篠塚は泣き続けた。


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